この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ 悪戯

『ふんふふーん♪』 


どうも皆さんこんにちは!!
ただいま超絶ご機嫌な鯉菜様です!!


『赤だけじゃなくて青りんごも作ろう!!』


私は今、親切にもりんご飴を作っている最中なのだ。普通は赤いりんご飴しかないけど、たまには青りんご飴も素敵じゃないかい?


『ってわけで、青りんご飴も作ってるなーう』


傍にはいくつもの完成したりんご飴…
形もよく、ルビーのようにピカピカと輝いている。
 

『よっしゃ! 完成だ!!』


私の目の前には5本のりんご飴と5本の青りんご飴、計10人分のキュートなりんご飴が立ち並んでいる。


『さてと…持っていきますかねぇ♪』



ドォォォン!!



『おっと…花火始まっちゃった』


そうー
今日は花火大会が近場でやっているのだ。そしてこの花火大会はちょうど奴良組本家から見える。少し距離は離れているものの、音も振動も結構伝わり、風情がある。


『わぁーっ、花火綺麗だねー!!』

「おう、相変わらずここからは見晴らしがいいねぇ」

「あれ? 姉ちゃんのそれ…りんご飴?」

「何をしとるのかと思っとったら…それを作ってたのか」


お父さんやリクオ、おじいちゃんの視線が私の作ったりんご飴に向けられる。


『うん! 全員の分は流石に作れなかったからね…10人分しかないけど。牛鬼と狒々親子、それから…青と黒田坊、首無、河童も来てー!! りんご飴作ったから、好きなの取って…花火見ながら食べて♪』


そう言えば、各自お礼を言いながら1本ずつりんご飴を取っていく。周りの妖怪達はいいなぁなんて言いながらそれを見ている。


『大丈夫、君達には来年作ってあげるよ』


そんな事を言っていれば、りんご飴はいつの間にか皆の手に渡っていたようで…


「それじゃ、いただきます」

「ありがとうごぜぇます、お嬢!!」

「美味そうだな…いただきます!」


ガブリっと各自りんご飴を口にする。
そしてー


「「「………ぶふっ!!…ゲホッ、ゴホッ…!!」」」


一斉に吐き出したり、咳き込み始める面々。


「か、かっら!!」

「何だこれ…鼻が…!!」

「涙が出てくる…!!」


鼻や目元を押さえるという謎の光景に、周りの者は状況について行けてないようで困惑している。
仕方ないなぁ、ネタばらしとするか…!


『…どう?
中身は玉ねぎだけど見た目美味しいりんご飴の味は♪』


馬鹿どもめ…!!私が何も仕掛けないとでも思ったか!!


『リッ君、美味しい?♪』

「……姉貴ィ〜…?」

昼リクオから夜リクオに変化するリクオ。

「鯉菜…覚悟は出来てんだろうなぁ…?」

涙目ですごむお父さん。

「…ククッ…余程ワシと遊びたいらしいのう…」

目が据わってるおじいちゃん。

「鯉菜様…」

長髪で顔は見えないけど、背後に鬼を従えている牛鬼。

「ギャババ……」

可愛い笑い声が下品な笑い声になる狒々に、

「……お嬢…酷いっスよ…」

鼻を涙目になって押さえている猩影くん。

「「お嬢ぉぉぉ〜…」」

ボタボタと口から玉ねぎをこぼしながら、こちらににじり寄る青と黒。

「…フフフ…お嬢も鯉伴に似てきていらっしゃる…!」

どす黒い笑みを浮かべ、紐を持ち構える首無。

「生玉ねぎも案外美味いかもー」

と、シャクシャク食い続ける河童(本当は鴆にあげる予定だったが、病弱なのでやめた)。



『…あっは☆皆ちゃんと花火見なくちゃ!!』

「「「待ちゃーがれ!!!」」」



キャピっとして全力逃走する私を、これまた全力で追い掛けてくる河童を除いた面々。花火が綺麗に打ち上がる中、それを見らずに恐怖の鬼ごっこが始まる。

私だって時には(?)悪戯したいんだい!!




(「は? 鯉菜がのぼせた?」)
(「はい、どうやら追いかける皆から逃げる為にお風呂に入ってたみたいなのですが…そのままのぼせたみたいです」)
(「…バカだろアイツ」)
(「姉貴のやつ…自業自得だな…」)
(「相変わらず、どこかぬけておるのう…」)

(『…キュ〜…』)
(「オメェって…意外とマヌケだよな」)
(『…そんな事…言う、なら…鴆にも、りんご飴…食わす…』)
(「自力で治すか?」)
(『…ごめ、…なさい…』)




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