この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ アルバム

『ねぇ牛鬼。どれがいいと思う?』


はい、皆さんこんにちは。
ただ今私…なんとあの牛鬼とデパートに来ています!!
 

「…鯉菜様が差し上げる物なら何でも喜ぶと思いますが…」

『えー…それは分かってるけどぉ…どうせなら喜ぶ物あげたいじゃん。』


そう、実を言うともうすぐ敬老の日なのだ。もはや年齢が分からないが…一応おじいちゃんであるぬらりひょんに贈り物をしようと頭を悩ましているのだ。
しかし、いかんせん…おじいちゃんが今何を欲しがっているか分からないため、こうやって牛鬼を召喚しているのだ。


『最近おじいちゃんさ、何かボヤいてなかった? これがあったらなぁ…とか、アレがこうだったらなぁ…とか。』

「…特に……………ない、ですね…」

『……そっかぁーーー…うーーーん……』

「…それより鯉菜様、気付いておられでしょうか?」

『…うん、気付いてるよ…本当ゴメン…』

「…いえ…」


私と牛鬼の後ろをコッソリつけてくる者が1人…察しのいい者はもう誰か分かっているだろう。


『何がしたいんだ…お父さんは。』

「…鯉菜様を余程心配してのことでしょう…」

『いや、どうだろう…あの人の考えている事がよく分かんないわ。常軌を逸し過ぎて。』

「…………(否定できない)」


呆れ半分、引き半分、お父さんの存在で何となく気まずい雰囲気になった中…おじいちゃんへの贈り物を2人で考える。


「! これなどいかがでしょう。」

『…アルバム…?』


牛鬼の指差す先には、可愛い物から上品な物まで…多種多様なアルバムが並んであった。


『写真…か。なるほどね…それ良いかも…!』

「えぇ、きっと総大将もお喜びになるでしょう」

『うん! ありがとう牛鬼っ!!』

「いえ…お役に立てて光栄です」


この後、おじいちゃんにピッタリな色や形を考え、牛鬼と一緒にアルバム冊子を買う。
そして今日1日付き合ってくれたお礼として、牛鬼と一緒にお茶を飲んでいればー


「ねぇ…あの人カッコ良くない?」

「うん、髪長いけど似合ってるし…着物も着こなしてるよね」 

「渋いけどそこが良いわぁ…」

「一緒にいる人は娘さんかな…」

「あんな人が父親だなんて…いいなぁ〜」


きゃいきゃい騒ぐ女子達の言葉が嫌でも耳に入る。妖怪は視力だけでなく聴力も普通より良い。だからそういう話をコソコソしてても、こちらには筒抜けであり…


『…ここのお茶菓子、甘過ぎなくて美味しいね。パパ♪』


ニッコリと言えば、若干だが頬を赤らめて「鯉菜様っ…」と咎める牛鬼。
しかし、それもたった一瞬のことであり…


「おっ、鯉菜と牛鬼! 偶然だなぁ〜!!」


気持ち悪いくらいニコニコして現れるモノホンのお父さんに、私と牛鬼は頬を引き攣らせる。
なんてわざとらしいんだ…。
そして、またもや現れたイケメンに先程の女子達はきゃあきゃあと騒ぎ…


「…フッ」

『なに黄色い声にドヤ顔してんのよ、気持ち悪い』

「…………(またもや否定できない)」


なんやかんやで3人でお茶を飲むことになる。


「2人で何してたんだ?」

『…おじいちゃんへの贈り物、選んでたの。』

「あぁ…敬老の日のか。」

『アルバムにしたから、お父さんも協力してね』

「アルバム?」

「リクオ様や鯉菜様、鯉伴様や若菜様の写真をアルバムにするのがよいと…鯉菜様がご提案されました。」

『牛鬼がヒントくれたんだけどね。
今の写真だけじゃなくてさ、小さい頃からの写真をどんどん貼っていったら懐かしくない?』

「なるほどな。そりゃ親父も喜ぶんじゃねぇか?」


ニイッと笑うお父さんに、こちらもニイッとし返す。
 

『協力してね、お父さん♪』
「おぅ! 感動させて泣かせてやろーぜ」


結局、リクオやお父さん、お母さん、その他皆で協力して完成したアルバム。
おばあちゃんやお父さんの幼少期の肖像画から、私達の小さい頃や今現在の写真。そして笑ってる顔から泣いてる顔まで、多種多様な写真がつまったアルバムを皆で渡す。

結果を先に言えば、おじいちゃんを泣かせることはできなかった。
ーけど、今まで見た中で1番暖かい笑顔のように感じた。




(「リクオ、鯉菜、鯉伴、若菜さん…ありがとうな」)
(「おぅ。」)
(「ふふ!これからもよろしくお願いします、お義父さん」)
(『健康に気を付けてね』)
(「無銭飲食はダメだよ」)
(「…う、うむ。気を付けよう…多分。」)




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