この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ 閉じ込められました(イタク)

『あらすじ!
何か分からんがイタクと一緒に閉じ込められました。』

「……お前はもう少し緊張感もてねーのか。」


はーい、どもども皆さんこんにちは。
現在イタクと一緒に、部屋なのか箱なのかよく分かんないところに閉じ込められてます。

きっかけはね、ぬりかべ。
ぬりかべが毎夜悪戯していると噂があり、偶々こちらに来ていたイタクと一緒に調査してたのだ。


『それがなーんで引っ掛かるかなぁ…』

「おめぇが勝手に捕まったんだろ。」

『私が捕まった後にイタクまでこっち来たら意味ないじゃん。しかも普通のぬりかべとは違って、通せんぼどころか空間に閉じ込めるタイプっぽいし。』


そう、閉じ込められたのだ、文字通り。
立方体の中に閉じ込められ、しかも中からはいくら足掻こうと出られない。外からの救助を待つしかないようなのだ。


「はぁー…ったく、だからオメェは甘えんだよ。常に畏れ解くなって前から言ってたべ。」

『はいはいスンマセンネー』

「チッ」


ブツブツと小言を言うイタク。
あーうるさいと適当な返しをしたら舌打ちされた。
ぴえん。
それにしても…


「…おい、この空間段々狭まってるぞ。」

『やっぱり?
これ最後どうなんの?よくあるバトルロワイヤル的な映画みたいにペチャンコにされるの?』

「お前どんな映画見てんだよ…」


当初7畳くらいあった筈なのに。今は互いに壁に背をつける形で向かい合わせで座っている状態なのだが、徐々に2人の距離が近づいている。
にしても今日もイタクはカッコいいです。
…なんて悠長に考えてた自分を殴りたい。


『っぅわ!?』

「…っ」

『…………』

「…………」


また空間が狭まったのだろう。
突如グンッと強い引力が私達を襲う。勿論予測していなかった私は、身体を前に引っ張られるようにして前に倒れるのだが…


『ごめん、重たいよね』

「…別に…」


狭まったことでイタクとの距離もゼロ距離。
膝を立てて座るイタクの脚の間に、私がうつ伏せに乗っかっている状態になってしまったのだ。
流石に悪いと思い、身動きを取ろうとすれば…


「動くな」


ぴしゃりと言い放たれた言葉に、私の身体が止まる。
何でだと言わんばかりに顔を上げたら、
なんとまぁまぁ…


『……イタク…顔赤くしすぎ…』

「バッ…! こっち見んでねぇ!」


イタクが赤面してそっぽ向いている。
イタクも男だ、確かにこの体勢は不味いだろう。
男性の股に、女性の上半身…というか最早胸がある状態なのだから。私も自分が逆の立場だったら、変に身動き取って欲しくない。

というわけで、大人しくじっとしていたのだが…

世の中そんな甘くないらしい。
畳み掛けるようにして再度空間が狭くなる。
当初は一部屋くらいあった空間が、今では横に長い長方形になっていて、縦は座高の高さもない。
必然的に、座っていたイタクも今は仰向けになり、
私は仰向けのイタクに乗っている体勢になってしまったのだがー


ゴリッ

「……ッ!!」

『…あ。』


遂にやってしまった。
固いものが私のお腹に当たると同時に、ビクッと身体が跳ねるイタク。
これは仕方ない。
なんて私は理解してても、相手からしたら羞恥と罪悪感に駆られてしまうのか、「悪ぃ…」と小さく弱々しい声が漏れた。


『生理現象だから、仕方ないって。』

「………」


全く気にしてない風を装って言うものの、やっぱり意識しないのは無理がある。布越しでも伝わる固いものが、いくら布越しとはいえど当たっているのだから。
そんな状況を少しでも改善しようとしたのか、
イタクが動く。


「……場所変わるぞ」

『え?』

「お前とオレ。
お前が下に行け、オレが上の方がいい。」

『あ、重かった? スミマセンネェ!』

「…バッ…!
オレが上の方が、ぁ、当たらねぇってんだよ、」

『あ、そゆこと。別に気にしないのに。』


なんてー
顔を真っ赤にしたイタクを気を遣って言ったことなのに。それを馬鹿真面目に受け取ったイタクは、それはそれで面白くないのだろう。少し口を尖らせ、聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で言う。


「……少しは気にしろよ」

『…んっ…!』


一瞬のことだった。
私の下腹部に、イタクが、意図的にソレを当ててきたのだ。ただそれだけなのに、子宮が疼くような感覚に襲われつい声が漏れてしまった。
自分でさえ予想していなかった声だ。
イタクもまさか私がそんな声を出すとは思っていなかったのだろう、驚いた表情を見せるも、直ぐに口角を上げ挑発的な目を浮かべた。


「……へぇ、気にしねぇんじゃなかったのか?」










『…っ!』


下を見れば、顔を真っ赤にさせてオレを見てくるコイツと目があった。
声を聞かれたこと、一瞬感じてしまったことに対しての羞恥に耐えきれなかったのか、小さな声でうるさいと虚勢の言葉を吐き、密着しないよう身体を浮かす。

虚勢を張れないくらいに快楽に溺れたら、
コイツは、鯉菜は、
オレを一心不乱に求めるのだろうか。

そんな事を考えていたら、逃げられないよう、
無意識に鯉菜の腰に手を回している自分がいた。
そしてー


『…ぁっ!? ちょっ…』

「気にしないつってた割に…」
 
『…ンッ…イタ、ク…!」

「反応、良すぎなんじゃねぇの?変態ッ…」

鯉菜の腰を寄せ、コイツの下腹部にグリグリと己のモノを押し付ける。逃げようと身じろぐもオレの腕から逃れられるわけもなく、徐々に余裕のなくなる様に支配欲がより強くなった。


『…巫山戯るのも…ッ、大概に…んんっ』


尚強がるコイツに、それ以上言わせまいと口で塞ぐ。
普段聞いたこともない女の声を聴き、
口内を犯し、口を離せば、銀色の糸と女の顔した鯉菜が目に入って。


「…本気ならいいんだな?」

『…ぇ?…えっ…!?
 ちょ、待ってイタク…!』


狭い空間の中、今度はオレが鯉菜を組み敷くように場所を入れ替わる。一瞬の動作とオレの発言に動揺しているが、それを無視して帯をほどこうと手を伸ばした。
だが、


「……ここまでか」

『え?』

「お嬢ー! ご無事ですかー!?」

「今助太刀しますので! 少々お待ちを!」


三羽鴉が到着したようで、あっという間に空間が破られる。外からは中の様子が見えなかったのだろう。顔が赤い鯉菜に一羽の鴉が不思議そうに確認するも、鯉菜は何もないと平然を装っている。
邪魔が入ったと思ったが、逆に鴉がきて助かったかもしれない。このまま理性を失い最後までいったとしても、コイツとの関係が崩れるのはもっと嫌だしな。


「…隙ありすぎなんだよ、バーカ。」

『…るさい、変態鎌鼬。』

「その鎌鼬に感じてたのは誰だ?変態さん」

『ーっ!』

「いでっ、ちょ、痛ぇって!」


恥ずかしそうに答えるコイツに、自然と口角が上がってしまう。今のオレはたいそう意地悪い笑みを浮かべてるだろう。最後、三羽鴉に聞こえないよう耳元で囁けば、またもや再点火して赤くなる鯉菜。
図星だからかバシバシと叩いてくる鯉菜の攻撃を甘んじて受けていれば、調査が終わったのだろう鴉達が帰るぞと声をかけてきた。

今回みたいに敵意がなく、ただ悪戯するだけの妖怪なら


「偶には引っかかってやってもいいかもな。」

『…何の話?』

「さーな。」




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