この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ 新たな扉(首無side)

奴良組本家にてー


二代目が若菜様と夫婦になり、長女鯉菜様、長男リクオ様がお生まれになった。
そしてこれはお2人がそれぞれ5歳と3歳の時のことだ。


『首無ー!!洗濯物手伝うーー!!』

「ありがとうございます、鯉菜様」


まだ遊び盛りなお年にも関わらず、お嬢は家のお手伝いをよくして下さる。


『首無ー!!あやとり教えてー!?』

「もちろん! じゃあ、今日は箒を作りましょうね」


だがやはり子供。暇な時にはこうやってあやとりを教えてとお願いしてくる。


『首無ー!!リクオが氷麗を吊るしちゃったんだけど…』

「…ハハハ…相変わらず元気がいいですね。オレが降ろして来ますね。」


そして、リクオ様の犠牲になった者を救うよう、しばしばオレに助けを求めるお嬢は本当に心優しい。


『首無ー!! リクオが呼んでるよー♪』

「え、あ、はい!今参りま…っすぅぅうううう!?? ちょっ、誰ですか落とし穴作ったのぉぉぉ!!」


まぁ…時々このようにリクオ様とグルになって悪戯をすることもございますが…。


『首無ー!!これあげるぅーー!!』

「これは…焼き菓子ですか?」

『うん! いつものお礼にと思って!』


それでもやはり…オレなんかの為にこんな事までしてくれるなんて…


「…お嬢……ありがとうございますっ。」 

『ま、不味かったら…ごめんね…?』


本当に心優しい娘だと思う。


「クスッ…心配しなくとも、オレはその気持ちだけで嬉しいですから…!」


しかし、この娘にはかなり面倒くさいボディガードがいる。


「おいおいおい…
まぁーーーーーた首無とイチャついてんのか?鯉菜さんやぃ。」 

『お父さん…?』


そう、二代目であり、鯉菜様の父親だ。
最近、オレと鯉菜様の仲の良さを面白く思ってないようで…オレが鯉菜様と話していれば必ず割って入ってくるのだ。


「鯉菜はオレよりも首無の方が好きなのかぃ」


何を聞いてるんだコイツは。


『ぇ…お父さんも首無も、同じくらい好きだよ?』


しかし、質問の意図に気付いてないお嬢は…やはり優しい答えをする。だがその優しさがかえって二代目を不機嫌にさせる。


「へぇ…同じくらい、ねぇ。オレぁお前の父親なのに…同じ…か。」 

『…お父さん?』

「ちょっと…二代目…!」

「オメェは黙ってろ首無。」


止めようとするも、バッサリと強い口調で切り捨てられる。その態度に、これまたムッとするお嬢…そして事態は段々と不穏な方向に向かう。


『…お父さん、そんな言い方ないんじゃない?』

「なんだィ、オレよりも首無の方を味方するってのか?」

「おい、鯉伴…。」

「…あん? さっきからなんだ。」

「それはこっちの台詞だ。てめぇ…鯉菜様に何八つ当たりしてんだ。」 

「…へぇ…立派なナイト様だねぇこりゃぁ。」


鯉伴の言葉と態度に、流石にオレも堪忍袋の尾が切れる。


「てんめぇ…!! いい加減にしろよ!!? 鯉伴!!」

「んだよ……やるってぇのか?」

「上等だ! テメェが目ェ覚ま……」

『いい加減にしなさいっっ!!!!!!』

「「!?」」


今にも殴り合わんとするその空気が、一瞬にして掻き消える。


「おねぇちゃ…っ…」


いつの間に来ていたのか、リクオ様が目に涙を浮かべながらお嬢の後ろに隠れている。どうやらオレと鯉伴の重い空気にあてられてしまったようだ。


『大丈夫よ…リクオ。』


そんなリクオ様の頭を撫で、安心するようにニッコリと微笑む。


『…何で喧嘩してんのか分からないけど、でも取り敢えず、リクオが泣かないうちにやめてくれるかしら。』


さっきまでの優しさは嘘のように消え、オレ達を見るその目は氷のように冷たい。


『私は2人のこととても好きだけど、でももし喧嘩をしてリクオを泣かせるなら…2人のことを大嫌いになるわ。』

「「なっ…/えっ…」」

『さぁ…どうする? リクオももうほぼ泣いてる状態だし、私のあなたたちに対する感情ももうマイナスになってるけど?
リクオを安心させて笑わせないとねぇ…?』


その言葉に、オレと鯉伴の目が合う。
…考えてる事は同じだ。


「く、首無ぃ!! 悪かったなぁつい八つ当たりしちゃってよぉ!!」

「い、いえ! オレの方こそ…胸倉なんか掴んでしまい…申し訳ございませんでした!」

「き、気にすんなよ!!ハハハっ…ハハっ!!」

「あああ、ありがとうございます!ハハハハハ!」


微妙な仲直りに、リクオ様が不意に呟く。


「おねぇちゃん…あの2人、嫌いあってるの?」


その言葉にお嬢はこちらをにやりと見て言う。


『…まさかぁ。あの2人…仲がいい筈よ』


これはもう…やるしかないっ!!
どちらからでもなく、オレ達はお互いに抱き締める。
 

「だ、大好きぜっ!!首無!!」

「お、オレも一生ついていきます!二代目!!」


そして…


『リクオ、しっかりとその目に焼き付けなさい。あれが世間一般でいう…BLよ!!』

「BL…? なぁに、それ。」

『Boys'Love…つまり、男同士の恋愛よ!!』

「ボーイズラブ……!すごい…!すごいよねぇちゃん…!!カッコイイ!!」←分かってない


何故かオレと鯉伴という謎のカップリングが作られた。



(「…鯉菜様ぁぁぁぁ!!??」)
(「ちょっ、リクオ!!ちげぇからな!?オレ達そんなんじゃねぇからな!!?」)
(「お父さんも首無もすごいねぇ!!」)
(『そうねぇ…愛が深いわねぇ。』)




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