この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ 替え歌(鯉伴side)

奴良組本家にてー
(鯉菜4歳、リクオ2歳)


「ここをこうやって…その後にこうします。
どうですか、簡単でしょう?」

『わーっ、すごーい! 意外と簡単なんだね!!
これ、私が残りやってもいい!?』

「へっ!?これはオレたちの仕事なんで…お嬢がやらなくとも…!」

『いいの!やりたいんだから、やらせて!』


ポカポカと天気が良い中…
外で元気に遊ぶでもなく、洗濯物のたたみ方を教えてもらって喜ぶ娘が1人。


『これを…こうして…』

「そうです! さすがお嬢!!覚えるのが早いですねぇ…」


その娘、鯉菜に、和服のたたみ方を教えるのは首無。つい先程…鯉菜は洗濯物をたたむ首無の元へ来て、和服のたたみ方を教えるよう言ってきたのだ。
そして、現在に至る。
ちなみに2人は居間の前の縁側でたたんでおり、一方の居間には…


「まだ幼いのにお手伝いとは…偉いですなぁ」

感心する鴉天狗

「キャハハ! 鯉の坊のガキん頃とは大違いだな!」

ひと言多い狒々 

「男より女性の方が大人だとよく聞きますが…あながち間違いではありませんね」

一人納得する牛鬼

「そうじゃのぅ…リクオに比べても鯉菜は大人しいしな」

牛鬼に同意する親父
…以上、オレを含み5人がお茶を飲みながら、鯉菜を見守っている。


『首無、こういう服は…?』

「これはですね……」


和服をたたむのが苦手らしい鯉菜。確かに、衣類の数だけ、形も服の作りも違う。まだ幼い娘には難しいのだろう。それでも、一生懸命に習いながらたたむその姿はとても健気で可愛い。


『……あっ、ちょうちょ。』


その言葉に鯉菜の視線の先を見れば…確かに、モンシロチョウが飛んでいる。


『ちょうちょー♪ちょうちょー♪菜の葉にとーまーれー♪』


不意にそう唄いだした鯉菜…何あれ! どんだけ可愛いんだ!!犯罪的に可愛いぞっ!!隣で親父が「鯉伴…にやけ過ぎじゃ気持ち悪い」と言ってるがそんなの関係ねぇ!!

だが…


『菜の花に飽いたら…………この唄のリズムまじダリぃわ。やめよう。(ボソッ)』


えっ………?
今なんか…聞こえなかったか?


「キャハハ…何か今、聞こえなかったか?」

「…いや、まさか、気のせいだろう。」

「うむ、幻聴だ。」


……うんうんとお互いに頷き合う親父達。
そう…だよな。あんなに可愛く唄ってたのが、急にそんな…ダリぃわなんて言わねぇよな!!


『てれれれってってってってれてー♪
鯉菜の洗濯レベルが3にアップしました〜!!
わーい、ひゅーひゅー!!』

「クスッ…おめでとうございます、お嬢!」


レベルが上がったとはしゃぐ傍ら、衣類をたたむ手は休むことがない。本当…楽しそうにたたむなぁ。再びほのぼのと鯉菜に癒されておれば、遠くから猪のような足音が聴こえてくる。
これは…


「「リクオだな/じゃな」」


オレと親父が不本意にもハモる。
そして予想通りに…


「おねえちゃぁぁぁぁぁん!!!!」


ドドドドっと猛突進するリクオ。ジャンプして鯉菜に飛び付くかと思いきや…


『あら、リク……oh〜…………!
それ今さっきたたんだばかりの洗濯物デース』


鯉菜がたたんだばかりの服にきれいに突っ込んだリクオ。当然それらはグッチャグチャになった。


「…それでも怒らないアイツは良い姉じゃなぁ」

「本当…心優しいものですね」

「それ故に、リクオ様もまた鯉菜様に懐いておられるのでしょう…」


散らばった洗濯物に怒るでもなく、リクオの頭をガシガシと弄ぶ鯉菜…その姿は正に姉である。


「おねえちゃん! 遊ぼう!!」

『いいよ、でもお姉ちゃんこれたたまなくちゃいけないから、一緒に何か唄いましょう!』


首無が遊んできていいと言うが、鯉菜は断固としてたたむのをやめない。それは首無を手伝おうとしてなのか…それとも本当にたたむのが楽しいからか…その真意は定かではない。


「いーよー!! じゃああの替え歌ね!!」


リクオの言葉に少し戸惑う鯉菜…だが、拒否する暇も与えずリクオは「せーの!!」と言う。
いったい何の唄なのだろうか…。



『ある日んけつ♪』

「森の中んちょう♪」


……ん? これは森のくまさん…?


『熊さんにんにく♪』

「出会ったんこぶ♪」


よくそんな替え歌思い付いたな…。


『「花咲くもっこりチ〇チンぶらぶらソーセージー♪」』


待てぇええええ!!!??
お前ら…何を言ってんだ!! 特に鯉菜!!
お前は女の子だろーが!!


「キャハハハハ!! いい唄じゃねぇか!!」

腹を抱えて大爆笑する狒々に、

「………。」

頭を押さえて首を振る牛鬼。

「鯉菜様ぁぁぁ!? リクオ様ぁぁぁ!?」

と泣き叫ぶ鴉天狗。
そして…

「てんめぇ…鯉伴!!
何お二人に下品な替え歌を覚えさせてんだこの野郎!!」

「はっ!? ちょ、待てよ!! オレじゃねーって!!
落ち着けよ首無!!」

「てめぇ以外に誰がこんな唄を教えるんだ!!」

ぎりぎりと紐で体を縛られるオレ。本当にオレじゃねえのに…!!


「全く…何やっとんじゃいこの馬鹿息子!」

「…てめぇかこのクソ親父ぃぃぃ!!!!」

「ぬっ!? ワシじゃねぇぞ!? 失礼な!!」


首無がオレを、オレが親父を…そして親父はただ逃げるという謎の追いかけごっこが始まる中、


『「ジャングルもじゃもじゃ♪ジャングルもじゃもじゃ♪ヤシの木1本実が2つー♪」』

「キャハハハハ!!!!」

「…はぁ………」 

「誰ですかお二人にこんな唄教えたのはー!!」


今度は別の唄を歌い、狒々や牛鬼、鴉天狗がそれぞれ反応見せる。
そしてやっぱりこちらでは…


「鯉伴ーー!!
アンタいったいいくつ変な唄覚えさせやがったー!?」

「だからオレじゃねーって!!親父だろ!!?」

「バカもん!!ワシじゃぁないわい!!」

「じゃあ何で逃げんだよ!!」

「お前が追ってくるからじゃろうが!!」



奴良組も、天気も、本日は晴天なり。



(『…? あの3人何やってんだろうね』)
(「アハハ!!追いかけっこだー!!ぼくたちもやろう!?」)
(『!? あのハイレベルの鬼ごっこに参加するの!?』)




prev / next

[ back to top ]


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
×
- ナノ -