この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ


▽ 報復戦報告書(リクオside)

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《鯉伴報復戦報告書》

拝啓
奴良組三代目 奴良リクオ様

鵺を倒し、約十年が経ちました。
ますますご発展のこととお慶び申し上げます。

これは、二代目奴良鯉伴による度重なる日頃の嫌がらせに、報復を決意した奴良組三代目補佐奴良鯉菜の報復戦の結果報告です。
なお、詳しいことは付随してあるDVDのご閲覧をお願い致します。

三代目補佐 奴良鯉菜



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「何これ…。あの人何やってんだよ。」


学校から帰り部屋に戻れば、机の上にある紙とDVD…。紙には上記の事が書いてあった。取り敢えずパソコンを立ち上げ、DVDを差し込めば…


『はい、じゃあ撮影よろしくね!三の口!!』


奴良組本家の庭を背景に、三の口が映し出される。どうやら撮影するのは三の口のようだ。


『それじゃ、今から報復戦を開始致します!』




作戦1:茶


『皆、お茶はいったんだけど、いる?』

「おぅ、気が効くねぇ。」

「ワシも貰おうかのう…」

「では、私も…」


父さん、じいちゃん、鴉天狗、そして自分の分のお茶を注ぐ姉さん。


「「『ズズズ……』」」


熱いお茶を啜りながら飲む中、1人だけ…


「ズズ…………ブフーッ!! ゲホッ!! ゴホッ!!」

『あら、大丈夫?』


お茶を噴き出し、苦しそうに咳き込む父さん。一方姉さんはけろりとしてお茶を美味しそうに飲んでいる。


「おまっ!! ゲホ……何入れやがった!?」

『……あれっ…コップの中にタバスコが入っちゃったから、ちゃんと洗ったつもりなんだけどなぁ。 ごめん! 洗い足りなかったみたい!!』


物凄くいい笑顔でごめん!と言う姉さんに、じいちゃんと鴉天狗は父さんをジト目で見る。


「鯉伴様も…こりませんなぁ…」

「まーた何かやったんじゃろ…」

「今日はまだ何もしてねぇよ!!てか辛っ!!」


今日は…って、父さん…
アンタいい加減大人になれよ。



作戦2: パンツ


『明鏡止水というのは便利ですなぁー』


場面が変わり、カメラ目線でニヤニヤする姉さん。どうやら脱衣場にいるようだ。


『オーレー、オレのパンツー♪』


鼻歌を唄いながら、ゴソゴソと何かをあさくる姉さん…そして、


『よし、じゃぁ三の口。私は一旦戻るけど、撮影よろしくね!』


またもやいい笑顔で去る…いったい何をしたんだ。


「ふぅ…いい湯だったねぇー」


しばらくして、お風呂場から出てきた父さんがこちらに真っ直ぐ向かってくる。…何で男の着替えを見なくちゃなんないんだと思いながらも、取り敢えずDVDを見続ける。
何かを仕掛けられたことに気付く事もなく、父さんは普通にパンツを履いて、そのまま着替えを続ける。何も起こらないけど…姉さん、何をしたんだ?
だが次の瞬間、父さんの動きがピタリと止まる。


「……痛ぇ…やっぱ痛ぇぞ…?
…………ッッ!! いってぇぇえええ!!?」


突如着ていた服を脱ぎ始め、またお風呂へと引き返す。そこにぬらりと現れる姉…


『……クスッ…
からしを塗りたくったパンツ、効果アリ!』


ニッコーと笑う姉はもはや鬼にしか見えない。
パンツにからしだなんて…


「か、考えただけで痛い…………!!」



作戦3:痺れ薬


『はいはーい!
最後の嫌がら…復讐は、痺れ薬にします!!』


カメラ目線に怪しげな草を向けて、ニコニコと楽しそうにはしゃぐ姉。痺れさせてツンツンと突っ付きまくるようだ……さっきから思ってたけど、やる事が低レベルだな! ガキかよ!!


『じゃあ早速、薬を作っ………? 何アレ。』


部屋に入った姉さんが不思議そうに首を傾げる。そこには《開けるな》と書かれた箱があった。


『開けるな、か……』


だが、人間というのは禁止されれば逆にやりたくなるもので…


『開けたらいけないものを人の部屋に置くなよ』


……ええええ!!? そこは開けるんじゃないのォ!?
箱を持ち上げ、部屋の外に置こうとする姉さんにギョッとする。そういえば…姉さんってこういうのはちゃんと昔から守るんだよね…ボクが小さい頃、立ち入り禁止区域に入ろうとした時も全力で止めてきたもんな。
懐かしい思い出に浸っていれば、映像に第三者が急に映る。そうか、この箱は…



「あらよっと!」

『むおっっ!?』



…父さんの仕業だ。
突如現れたと思いきや、箱を手に歩く姉さんの足を引っ掛ける父さん。もちろん父さんの存在に気付いていなかった姉さんはそれにつまずく…
そして


『きゃ…きゃぁぁあああああ!!!!』


つまずいたことで、宙に浮いた箱が開く。


『虫ぃぃぃいい!!!!』


中には姉さんの大嫌いな虫が大量に入っており、それが無情にも降りかかる。


『いやー!キモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイーーーーーー!!!!ギャァァアア!!』


叫びながら画面から消えたと思いきや…直ぐにドボォォォンという音が聴こえる。…きっと池に飛び込んだのだろう。どんだけ嫌いなんだ。
一方、


「クククッ…鯉菜にはやっぱり虫が効くなぁ」


ニヤニヤと顎を押さえながら笑う父の姿はどこか腹立たしい…。ボクが被害にあってるわけじゃないのに、イラっとする笑顔だ。



父の憎たらしい笑みで映像は終わったため、取り敢えずDVDをパソコンから取り出す。


「てかこれを見せて何をしたかったんだろう…」

『報復を手伝えってことよ…』

「うわぁぁあ!!? 無言で入って来ないでよ!」

『リクオ〜!!お姉ちゃん悔しいよぉ〜!!
何でぇー!!いっつもあの人に私やられてばっかりじゃん!!偶にはやり返したいーー!!もうっ腹立つよー!!』

「ちょっ!! 苦しいっ…!!」


ギュウギュウとボクに抱き着いて来る…というかコレ絞め殺そうとしてない? 息止まりそうなんですけど…!!


「…分かったから! 落ち、着いて…!!」

『!! 今、分かったって言ったね!? ね!?』


キランと目が光る姉に、誘導された感が半端ないのだが…ここは致し方ない。


「い、言ったから…だから離して! 苦しい!!」


そんなこんなで…
今度はボクと姉さん2人で、父さんに報復することになるのだが、それはまた別の話…。




(「てゆうか…姉さんも懲りないよね」)
(『ギャフンと言わせたいのよぉっ!!』)
(「姉さんもやる事やってると思うけどな…」)
(『やる事やっても、またやり返されるもん』)
(「エンドレスじゃん!!諦めなよ!!」)




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