▽ ハッピーハロウィーン〈中〉
『およ、鴆じゃん…
鴆ー! Trick or treat!!』
「無駄に発音いいなオイ!!
…って、お前まさか…リクオか!?」
「…ち、違います。」
『リクオだにゃ!
遂に女に性転換したリクミちゃんだにゃ!!』
「!?
おまっ、と、取ったのか!?」
「取ってないよ!! ちゃんとあるから!!」
股間を押さえながら「取ってない」とツッコを入れるリクミちゃん。スカート丈が短いからそのポーズがどこかエロカワです。
「そんなやらしい目で見ないでくれる!?」
『おっと…声が出ていたようだ。てかさ、鴆のそのコスプレは何なの? 鳥の妖怪のくせに鳥のコスプレしたの?』
「鳥じゃねぇ! 天使だよ!!」
そう言いながら、鴆は頭の上を指差す。指先にあるのは丸い蛍光灯…きっと天使の輪っかのつもりなのだろう。普通の黄色い輪っかを使えばいいのに…エコのつもりだろうか。
「ちなみに羽根には触れんなよ。毒羽だからな。」
『見覚えある羽だと思ったらアンタのか!!』
「何で天使が毒羽持ってんだよ! 毒もってる時点で最早天使とは言い難いよ!!」
リクオの言う通りだ! どんだけ物騒な天使だよ!!
そんな私達のツッコミに、「そうこまけぇこと言うなよ」と眉を寄せる鴆だが、これは決して細かくないと思う。
「そういやぁ…お菓子貰いに来たんだよな。
確かここに…、ッ!! …ゲホッ、ゲホッ…!!」
『ちょっ…! 大丈夫!?』
「鴆君!?」
私達の当初の目的を思い出した鴆が、お菓子を懐から取り出そうとすれば…急に膝を付いて咳をする。口元を押さえる鴆の手からは血がポタポタと垂れており、もう永くないのだと暗示しているかのようだ。年々酷くなる咳…そして一段と酷い今日の咳に冷や汗が出る私とリクオ。
だがー
「…なぁんてな!
ビビっただろ。安心しな、こりゃあただのトマトジュースだ。」
『「…は…?」』
今日はハロウィンだぜ? と、ニヤリと笑う鴆に、私とリクオは顔を見合わせて肩の力を抜く。
『…もぅ〜、驚かさないでよ〜…』
「本当、いくらハロウィンと言ってもさ…」
『「いい冗談と悪い冗談があるだろうが。」』
「えっ…ちょ、落ち着けってオマエ…
らああああああぁぁぁぁ!!!!」
今度は鴆の叫び声が響き渡る奴良組本家。
トマトジュースではなく、今度は本当の血をいつも通り吐く鴆だったが、いつものように心配してくれる人は誰もいなかったと言う…。
(「…なんかどっと疲れた。」)
(『だね。…八つ当たりという名の悪戯に出掛けるかにゃん。』)
(「…うん。そうしよう。やろう。」)
(『(…リクオの目がガチになってる。)』)
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