この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ


▽ もし夢主が妊娠したら…

『ご飯、できたよー』


夕飯ができ、毛倡妓や氷麗などの女妖怪やお母さんと皆でそれを運ぶ。
少ししか食べない者もいれば、たくさん食べる者もいる。そんなバラバラな量の食事を用意するのは大変だから、実を言うと私もよく手伝う。マジ偉い。


『来た人から並んでねー』


炊飯器の前で、しゃもじ片手に構える私。
そしてお茶碗を持って並ぶ皆……全員ではないけど、誰がどのくらいの量を食べるかは大体覚えている。


「今日は少なめにしてくだせぇ…さっき少し間食しちまったんで!」

『了解。…このくらい?』

「へい!そのくらいで!ありがとうございます」


…こんな感じでついでいき、私の仕事が1つ終わる。


「あれ…こっちの醤油がきれたぞーーー!!」

『あっ、じゃあ足してくるね!!』

「お嬢っ!あ、ありがとうございます!」


醤油入れをプラプラさせる小妖怪から、空のそれを受け取る。そして、醤油を足しに行こうと立った時…


『……ッ…』


突如、視界がぐにゃりと曲がり出す。


「鯉菜? どおした?」

『だ…大丈……ッ』


急に立ち止まった私に、お父さんが不思議そうに尋ねる。どうせ直ぐになおるだろうと思いきや、なかなかそれは治まらなく…


「!! 鯉菜!?」

「え……お嬢!?」

「姉さん!?…鴆君…誰か鴆君呼んで!!」


吐き気や頭痛に襲われながら、そのまま気を失ってしまった。


暫くしてー


『……?』


ザワザワとうるさい音の中、意識を取り戻す。


「誰なんだ…?相手は…」

「人間じゃないか…? 狐の呪いもあるし」

「いや、狐の呪いは解けたんじゃねぇのか」

「てことは妖の可能性もあると…」


何の話だ……
不思議に思いながらも身体を起こせば、皆がコチラを向く。


『………何この微妙な空気。怒ってんのか喜んでんのか分かんないんだけど。』


そうー、嬉しそうな顔をしている者もいれば、神妙な顔をしている者もいるのだ。
どっちかに統一しろよ。


「鯉菜……お前、誰と付き合ってるんだ?」

『…………ええっ!? 何で知ってんの!?』


家族にも友達にも…付き合ってること隠してんのに!!何故に鴆が知っている!?


「お前よぉ…何で倒れたか分からないのか?」

『……過労死?』

「姉さん、それ死んでるから。」

『あ、本当だ。』

「鯉菜…お前適当過ぎんだろ…」


呆れながらそう呟く鴆に、何故付き合ってることを知ってるのか問う。


「……知ってたんじゃねぇよ、今知ったんだよ。お前ぇ…妊娠してんぞ。」

『え………』


あぁ…なるほど…だから生理が来なかったのか。


「相手は誰だ、鯉菜」

『ちょっ、近い近い近い。』


私の肩をガッと掴み、私を問い詰めるお父さん。顔が近いです。無駄に。


「人間? 妖怪?」


首をかしげながら聞いてくるリクオ……ちなみに高校生になったので可愛くはない。むしろもうカッコイイ。ジャニーズに入れるレベル。


「姉さん、馬鹿な事考えないで答えて。」


リクオ…人の心を読むべからず、だよ。
取り敢えず、心当たりある相手を思い出す。


『…人間…?』

「相手は人間…なの? てか何で疑問系?」

『いや、待って。やっぱり妖かも……』

「「「二股!!!??」」」

『……あの時どっちとヤったっけ…』

「ヤっ…………オレの鯉菜がぁぁぁあ!!」


そう泣き叫ぶお父さんの両手には、私の小さい頃の写真が握られている。


『いつの頃の写真だよ!!つうか常にそれ持ち歩いてんの!?やめてくんない!?お願いだからやめてくんない!??』


恥ずかし過ぎるわ……何だこの親バカ。


「てゆうか姉さん…浮気はダメでしょ!!」

「そうだよ…おまっ、どーすんだよ」

「オレの愛しの鯉菜がぁぁぁあぁぁあ」


取り敢えず最後のやつは無視するとして…


『さっきから何を勘違いしてんの?
私はそんな浮気するようなビッチじゃありません。殴るわよ。』

「「殴った後に言うな…」」

「オレの愛しの鯉菜がぁぁぐふっ…!!!」

『…………ふぅ、私ちゃんと一筋だけど?』

「…………。じゃあ、さっきのどういうこと?」

「人間か妖かで悩んでただろーが。」


2人のその言葉に、ようやく何を勘違いしているのか理解する。


『相手は半妖ってことよ。』

「「半妖…!?」」

『そっ。ヤッた時はどっちとしたっけって意味で言ったのよ。だってリクオみたいに、急に変わるんだも〜ん!!ヤってる最中でも急に変わっちゃうから…こっちもドキドキよ〜』

「……鯉菜が普通に女の子やってる」

『鴆? 今のどういう意味かな。』

「だって姉さんがそんな…!
両頬を押さえながらキャーキャー言うなんて…!
そんな女の子っぽいことするとは思えないじゃん!!」

『リクオ…私、腐っても女だからね?』

「…はっ!!
鯉菜!! オレの鯉菜は………ぐはっ!?」

『………やれやれ…。』

「「……………。」」

『……鴆、記憶を消す薬とか持ってないの?』

「ねぇよ、そんなの!!何あぶねぇ事考えてんだ!!」


そんなこんなで…
お父さんを除き、皆で私の妊娠祝いが急に行われ…
そして後日…


『お母さん、お父さん、
私この人と結婚するね?』

「ご挨拶遅れて、誠に申し訳御座いません…
鯉菜さんとお付き合いさせて貰ってます、
四神組玄武一派 若頭のー………」


彼氏が挨拶をしに来て、結婚することが決まる。一部…というか1人だけウジウジと鬱陶しいヤツがいたけど、周りの者は喜んでお祝いしてくれた。
そして、数日間にわたる披露宴が行われるのだ。



(「………鯉菜を泣かしたら、奴良組全員で貴様らの組を潰しに行くからな」)
(「はい、絶対に幸せにします!お義父さん。」)
(「お義父さんって呼ぶなぁぁぁあ!!」)

(「鯉菜、幸せにね!」)
(「姉さん…おめでとう!」)
(「もうすぐひ孫の顔が見れるんじゃな〜」)
(『お母さん…リクオ…ありがとう!
おじいちゃんは気が早いよ…まだ何ヶ月も先だよ。』)




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