この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ ショッピング

「鯉菜ちゃん」


とある日の昼下がり、
テレビを見ていればお母さんに声をかけられる。


『なーに?』

「今から一緒に買い物に行かない?」

『いいよ、いつものスーパー?』


どうせご飯の買い出しだろうと思って聞けば、返ってきたのは予想外の言葉。


「ううん、モールよ! 今セールやってるみたいだから、久しぶりにお洋服買いに行きましょう!!」


 



ということで…ただいまお母さんと一緒にショッピングに来ております!


「きゃ〜この服可愛いっ!! 鯉菜ちゃんにピッタリよ!!」


欲しい物があったら言いなさい! と言うお母さんだけど、私は聞きたい…

予算はどのくらい!?

だって奴良組の食費やら修理代とか水道代結構するんだよ!? 大丈夫なの!? いくら土地神様のとかで収益があってもさ…本当に大丈夫なの!? さっきからポンポン服をカゴに入れてますけど!? 


「リクオの服も買って帰ろうかしら!」

『そ、そうね…』


でも家計をやりくりしているお母さんがそう言ってるんだから…大丈夫…かな?


『…これ可愛い。』

「あら、本当! あっ、これもどう!? 試着してきてよ〜」

『……う、うん…』


ドサっと服を何着か渡される。え…これ全部試着すんの!?


『………たくさん買ったけど、大丈夫なの?』


お店をまわり、服を試着し、気に入った物を買う。これを何回繰り返しただろうか……両手には買い物袋がたくさんだ。


「大丈夫よ〜! 心配しなくても、うちはそんな貧乏じゃないのよ? 」


ニッコリ笑うお母さんにますます不安になる。いつも笑ってるから…本当は無理してるんじゃないだろうか。


「ふぅ〜でも少しお母さん疲れちゃった! お茶でも飲んで休憩しよっか!!」

『そだね…ずっと歩いてたし、そろそろ足痛くなってきた。』


2人でカフェに入り、ケーキと紅茶を頼む。


「学校はどう? 楽しい?」

『楽しいよ。特に担任の先生が楽しいかな』

「そう! いい先生に当たって良かったわね!!
…好きな子とかいないの?」

『…なに急に。いないけど。』

「ええー本当にー? つららちゃんから聞いてるのよ! よく告白されるって!!」


つららは何をお母さんに告白してんだ。


『まー…でも好きな人はいないんだよね。何か皆子供っぽくてさ…つまんない』 

「まぁまぁ! 鯉菜は大人の人がタイプなのね!?」


何故に食いつく。私一応、精神年齢は30いってるからね!お母さんとむしろほぼ同じ歳だからね!! 同学年の男子が子供に感じるのは当たり前なんだよ。


「将来、どんな男の子を連れてくるのかしら〜楽しみだわ!」


ニコニコと笑いながら紅茶を口にするお母さんに、少し苦笑いする。…このまま恋愛フラグできなかったらどうしよう。


「それじゃ、そろそろ帰りましょうか!」


ケーキや紅茶を食べ終え、席を立ち、出口へと向かう。しかし…


「おー、お姉さんらいっぱい買い物したねー!」

「親子か? それにしてはお母さん若いねぇ」

「お母さん、可愛いなぁオレのタイプ!」

「オレは娘派だな、可愛いっつーか綺麗系じゃん?」

「オレはどっちでもいける!!」


5.6人のチャラ男に囲まれる。チャラチャラしやがって、耳なら分かるけどさ、何で鼻とか唇にまでピアスしてんの!? 邪魔じゃないの!?


「ごめんなさ〜い! 私たち急いでるのでー!!」


笑顔を絶やさず、だがキッパリと断るお母さんは流石極道の嫁と言えよう。


「きゃっ…」


しかし過ぎ去ろうとするお母さんの腕を掴むチャラ男A。


「いいじゃん、オレらと少し遊んでよ〜」

『……なんでアンタらみたいな下等生物のために、私たちの時間を無駄にしなくちゃなんないのよ。』

「…あんだと?…てめぇ…」

「鯉菜…!?」


人間、力を手に入れたら人格変わるって…本当だよね。前世の私ならチキンのごとく逃げていたのに…今は逆に喧嘩腰ッスよ。


『お母さん、ちょっと下がっててね! すぐに終わるから…』


ニコッと言いながら、買い物袋をお母さんに預ける。そしてチャラ男ーズを潰そうと振り向けば…


「おぃ、オメェら…誰をナンパしてっか分かってんのか?」


私の視界を覆うのは、緑と黒の縞模様…


『…お父さん…』

「よぉ、鯉菜、若菜…息災かい?」


何でここにいるんだ、この人は。


「ありがとう、鯉伴さん! つい買い過ぎちゃって…持ち運ぶの大変だったのね〜」


お母さん!? まさか二代目を荷物運びのために召喚したの!? 流石…母は恐るべしと言うか、嫁は恐るべしと言うか…うん。凄いわ。一方、誰だよテメェとお父さんに突っかかるチャラ男ーズ。


「この二人のナイトだよ…オメェらこの二人に手ぇ出すってんなら容赦しねぇぜ?」


ギロっと畏を出しながら睨むお父さんに、チャラ男ズは怯える。そんな怯えた奴らの肩を後ろからポンと叩くのは…


「…さっさと失せろ。」


凄い形相で睨みつける青こと倉田くん。


「!! こいつ…百鬼夜行の倉田だ!!」 

「何ぃ!? おいてめーら、逃げるぞ!?」

「くそっ、何でこいつがここに…!!」


一目散に去っていくチャラ男ーズ。 


「ありがとう! 2人とも」

「いえいえ、当たり前の事をしたまででさぁ!!」

「そーだぜ、じゃあそろそろ帰るか。」


たくさんの買い物袋をいとも簡単に持ち上げる倉田とお父さんに挟まれ、4人並んで帰り道を歩く。


「ショッピング、楽しかったかい?」

「ええ! 娘と買い物できるなんて、嬉しくてついはしゃいじゃったわ!!」

『私も楽しかったよ、お母さん』


最後に少し変なヤツらに絡まれたりしたけど、それでもとても有意義な1日だった。


『またいつか一緒に買い物しようね!』

「そん時はまたボディガード兼荷物持ちとして、オレが迎えに来てやっからな。」


そう不敵に笑うお父さんは、いつもより一段とカッコよく見えた。


「ふふっ! 頼もしいお父さんね!!」

『…頼りにしてるよ、ナイト様』




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