この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ 誰が好き?

『…ねぇ、おじいちゃん』


どーもー、奴良組の自称看板アイドル、鯉菜ちゃんです。時刻は10時!…と言っても朝じゃなくて夜の10時です!!ただ今皆で柿ピーをつまみながらお酒をちびちび呑んでます。
え?お酒は20歳から?
大丈夫よ、私達は13歳で20歳だから。


『お父さんの小さい頃の話、聴かせて。』


…おっと、メンバー紹介がまだでしたね。
夜リクオ、おじいちゃん、お父さん、そして私…だ。ちなみに柿ピーは定番味だけでなく、わさび味と梅味も準備してある。


「小さい頃の話〜?」

「何でぃ、オレの小さい頃の話なんか聞いて何を企んでるんだ?」

『…酷くない?純粋に聞きたくなっただけなのに。どんだけ信用ないんだ私は。心外だよ。』

「冗談だよ。」


間に受けるなよと半目で見てくるお父さん。
取り敢えずお父さんにはピーナッツの刑に処そう。


「…おい、何でオレの方にピーナッツを寄せるんだ。そして何でオレの方にある柿ピーばっかり食うんだ。」

「わさび味辛ぇな…」

『!』

「なぁ鯉菜…オメェ今、わさび味を大量にオレに食わせようだなんて考えてないよな」

『!!』


何でバレたし…


「…お前は鯉伴の小さい頃の話を聴きたいのか聴きたくねーのか、どっちじゃ。」

『聴きたい!!是非聞きたい!!特に鯉伴の可愛い話を聴きたい!!』

「何でそこ呼び捨て?」


おっと…つい〈お父さん〉としてじゃなく〈鯉伴〉として見てしまった!!


「可愛い話のぅ〜ふーむ…」

「何悩んでんだよ親父ィ…オレのガキの頃なんか可愛過ぎて、腐る程話すことがあるだろ?」


ニヤッとして言うお父さんに、おじいちゃんが押し黙る。馬鹿ー!!そんなこと言ったらおじいちゃんが話さなくなるじゃん!!


『おじいちゃん!お父さんのナルシストは今に始まった事じゃないでしょ!!話して!!』

「もがっ!?………バリボリバリボリ」


これ以上お父さんが余計なことを言わないように、口の中に大量の柿ピーを突っ込む。…少し散らばったが、仕方ない。


「……そういやぁ、鯉伴は昔よく雪麗のことを口説いておったのぅ」

『えぇー!?まじで!?雪麗って氷麗のお母さんよね!!』

「…へぇー、氷麗の母さんか…会ってみてぇな」

「…バリボリ…」

『ちょっ、お父さんバリボリうるさい。』


おじいちゃん曰く、
子供の頃のお父さんは、雪麗さんのことが大好きだったらしく、「オレが大きくなったら夫婦になろう」とよく言っていたらしい…。


「確か…〈雪麗の目は綺麗で吸い込まれそう〉だとか〈雪麗ほど良い女はいない〉とか言っていたなぁ…」

「…そうだっけ?」

「〈雪麗の心が綺麗だから、氷もこんなに綺麗なんだ〉とかも言ってたなぁ…」

『流石ぬらりひょんの子供…言う事がキザったいわ。』

「へぇー…親父は雪麗さんを本気で好きだったのか?」

『だけどフラれたと…ふむふむ。』

「なに勝手に人を失恋させてんだよ」

『んむぅっ……!?』


先程お父さんの方に寄せたピーナッツを口の中に突っ込まれる。うぇー…こんなにピーナッツ要らんー!


「まぁ…なんだ、本気で好きだったっていうか…お前のガキの頃と同じだよ、リクオ。」

「…は?オレ?」


お父さんの言葉に、ポカーンとするリクオ。


「お前さんも小さい頃、〈おねーちゃんと結婚する〉っていつも言ってただろ?」

「おぉ…懐かしいのぅ!」


2人の言葉にこちらを見るリクオ。覚えていないのかな?


『モグモグ…ゴクッ…
プロポーズされちゃいました☆』

「覚えてねぇぞ…」 

『あら、罪深い男ねぇ〜。姉の心を弄んだの?』

「子供の頃の話だろ?」

『まぁねー』


ケラケラと笑いながらお茶を飲めば、お父さんが不意に口を開く。


「〈結婚して〉ってリクオに言われる度に鯉菜のやつ困ってたなぁ…」
 

顎に手を添えて懐かしむお父さんに、私も何だか懐かしくなる。


『〈姉弟だから結婚はできないよ〉って言ったらリクオ、いっつも泣くんだもん〜!』

「…もういいじゃねぇかオレのガキの頃の話は。」

「オレと鯉菜がくっ付いてたらいっつも嫉妬してたもんなぁリクオ?」

「だから俺の話はいいって!」

『首無とか黒とか青…牛鬼にまで嫉妬してたもんねぇリクオ?』 

「姉貴も昔の事は忘れろ!!」

「そういやぁ…牛鬼が昔リクオに牽制されたって笑ってたのぅ…」

「オメェらしつけぇぞ!!!」


段々と顔が真っ赤になっていくリクオを皆でからかう。お父さんの小さい頃から、いつの間にやらリクオの小さい頃に話が脱線したけど…
たまには思い出話に花を咲かせるのもいいかもしれない。




(「姉貴の小さい頃はどーなんだよ」)
(「…鯉菜は………ねぇな」)
(「誰かと結婚するとか言ったことねぇよな」)
(『ないね。クールだから。』)
(「「「クールではないけどな」」」)
(『ええ!??』)




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