▽ ストーカー〈中〉
リクオにストーカーのことを打ち明けてちょうど1週間…
相変わらずストーカー行為は改善しない。
「鯉菜様ー!お届け物ですよー!」
『はーい!今行くー!』
毛倡妓の呼ぶ声に返事をし、居間へと向かう。
…宅配なんかした覚えないけどな。誰かからの贈り物?誕生日でもないのに?
なんだろうと思いつつも居間に行けば、そこには大きなダンボール箱。
宛て先:奴良鯉菜様
送り主:
「誰なんでしょうかね? 送り主書いてないから分からないわ。」
「おっちょこちょいな方ですね…よかったら開けましょうか?」
『…いや、いい。部屋で開ける。』
嫌な予感がする。
首無の心遣いを断り、そのダンボール箱を持ち上げる。
『…軽い…』
「ねー! 大きいからデカイのかと思ったんですけど、案外軽いんですよぉ!」
「あ、オレが運びま…」
『大丈夫。軽いから自分で運べるよ。』
ありがとうと二人に言って、自室に戻る。
何が入ってるのだろうか…私の脳を占めるのは山田。あいつが送ってきたのだろうか…。開けてはダメだと私の直感が訴える。しかし、送られた物の中身を確認しないなんてこと…私には無理だ。何が入ってるんだろう…という好奇心が無情にも勝ってしまう。
『……虫だったらアイツ殺す。』
そう決意しながら、ビリビリとガムテープを剥いでいく。ドクドクと心臓が高鳴り過ぎて、破裂しそうだ。
そして、ガムテープが剥げたダンボールの蓋を意を決して開けばー
『……………な…に…これ…』
ダンボールいっぱいに写真がつまっている。
『………全部…私…の…』
何枚か取って見るが、映っているのは全て私。
『……っ』
箱をひっくり返せば…私の映った写真が、部屋の床全体を覆い尽くす。
『…………紙…?』
最後にヒラっと一枚の紙が落ちてくる。
それを拾って見れば…
『ッいやあぁっ!!!!』
あまりのおどろおどろしい絵にそれを投げ捨てる。鉄のような…血の独特のにおい…。自分の血で描いたと思われる私の自画像が、どこか狂気的に描かれてあった。
「姉さん!? 入るよ!? ……なっ、コレ……」
「お嬢!? どうしたんで……、!!??」
「…おぃ。こりゃあどうゆうことだ…?」
ドタバタと私の部屋に来る者全員が、この部屋の有り様に固唾を呑むのが聴こえる。
あぁ…気持ち悪い…。
『…っゲホッ……ぁ?』
急に込み上げてきた咳を手で塞げば、手に何かがつく。
『…ち……?』
手に付いた血を中心に、ぐにゃりと世界が徐々に崩れていくのを感じる。
「鯉菜!?」
「お嬢…っ、鴆様、鴆様を呼べー!!」
力が抜けて、傾く私の体…。
私を呼ぶ声が段々遠のいていくのを感じながら、私は結局ストレスに負けて倒れたのだった。
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