この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 一難去ってまた一難(鯉伴side)

「おぅ、お帰り」


ただいまと元気に帰ってくる子供達を迎える。リクオと鯉菜、そして護衛のつららは清十字団の活動で妖怪退治に行っていた。1人はすっげぇ〜嫌々行っていたけどな。


「どうだったんだい? 妖怪退治は」

『妖怪退治ってよりも人間退治してきた。』

「なんだそりゃ…ん? 新顔か?」


お土産の温泉卵クッキーを食べていれば、顔に札を貼りまくった奴が出てきた。


『邪魅っていうの!
リクオと盃交わしたんだよ! ねー!』


そう笑顔で邪魅に言う鯉菜。何だかえらいご機嫌だねぇ。一方の邪魅はコクっと頷くとどこかに行ってしまった。


『照れ屋さんであまり喋らない人だけど、凄く忠誠心がある人よ!』

「お前…なんか今日、偉くご機嫌じゃねぇか?」


まさかっ…邪魅に恋して……!?


『…無理してテンションあげてんのー』


だが、オレの勘違いだったようだ。急に不貞腐れるように鯉菜は話し出す。
…やっぱこっちのがコイツっぽいねぇ。
にしても恋とかじゃなくて良かったぜ。まだ嫁には出さん!


「何かあったのかい?」


机に突っ伏す鯉菜の頭を撫でながら聞く。いつもとは違い、オレの手を払わないことから、こりゃ結構落ち込んでんなぁと感じる。


「…そういやぁ、リクオはどーした?
部屋に行ったっきり…なかなか戻ってこねぇな。何してんだアイツ。」

『…たぶん、私がいるから来ないんだよ』

「…リクオが原因かい。にしても珍しいな、お前らが喧嘩なんて。」


そう言えば、喧嘩じゃないと返事が来る。
じゃあ何だ?


『喧嘩じゃないけど…何か、避けられてる…』

「リクオが…お前を? 
それもしやアレじゃねぇか? 反抗期。」

『何で私に来んのよ〜! しかも朝起きたら急によ!? そりゃ違うでしょ! もう!!』

「ちょっ、おま……落ち着けって! なぁ!?」


さっきからバシバシ叩いてくるんだが、地味に痛てぇ! これ思っきし八つ当たりだよな!


「まぁ、何だその…お前は思い当たることねぇのか?」


そう聞けばピタッと動きが止まり、ボソボソと話し出す鯉菜。


『昨日、夜リクオと少し話してたんだけど…途中で、私…意識なくしたんだよね。だからその後に何かあったのかなって……』

「…意識をなくした? 治癒の力を使ったのか?」

『そんなんじゃない。力を使い果たしたとかじゃなくて…その、夜の私が出たんじゃないかって…思う。』

「夜のお前が?
…いつも出たくねぇんじゃなかったのか?」

『そうだけど…昨日急に声がして、多分入れ替わったんだと思う。でも夜の私が出てる間のこと、記憶にないから…分かんない。』


リクオを傷付けるようなことでも言ったのかも…と不安そうに嘆くその姿は少し不憫である。しかも姉馬鹿だから尚更可哀相だ。


「その事リクオに言ったのかい?」

『言ったよ! 様子が変だったから…嫌な予感がして。直ぐに覚えてないこと伝えて謝っといた!
でも! …まだ、避けられてる。リクオも夜の私も何があったのか…教えてくれないし。』


うーん……どうしたもんかねぇ。
取り敢えず、


「まぁ…心配すんな。あいつも心の整理がつかねぇんだろ。少し経てば、きっといつも通りに接してくれるさ。」


そう言ってポンポン頭を撫でてやるも、まだ不満そうな顔をする鯉菜。
そうだ……


「そういやぁ洗濯物出してって母さんが言ってたぜ?」

『え、そーなの? 先にそれ言ってよね。』


自分の部屋に行った鯉菜の後ろ姿を見ながら、気晴らしになればいいが…と思う。
実は若菜がそんなこと言ってたってのは嘘だ。ただ、旅行で溜まった洗濯物とかを洗って鯉菜の気が紛れればいいと思っただけだ。鯉菜のことだ、若菜を手伝って一緒に洗うだろうしな。


「さてと…リクオに話を聞きに行くかねぇ。」


リクオの元へ行こうと廊下を歩いていれば、反対側からナイスタイミングでリクオが来る。


「おぅ、リク……んぐっ!?」


声をかけようとすれば、ダッシュでリクオが俺の口を塞ぎに来やがった。ちょっ、鼻も押さえてるから息できねぇぞ!!


「お父さん!
後でじいちゃんの部屋にこっそり来て!」


そう小声で言って、何もなかったかのように直ぐに去っていったリクオの後ろ姿を見る。


「…親父の部屋? 聞かれちゃマズイ話か?」


不思議に思いながらも、のんびりしながら親父の部屋に向かう。その道中、鯉菜と若菜の笑い声が庭から聞こえてきて少しホッとした。やっぱり若菜は人を笑顔にするのが上手いねぇ…さすがオレが選んだ嫁!!
そして、ウンウンと頷きながらも歩いていれば、あっという間に着いた親父の部屋。スッと襖を静かに引くと、親父とリクオは既に座って温泉卵カスタードを食べていた。


「何ニヤニヤしとんじゃい。気持ち悪いのぅ…」

「いや、流石若菜だなって思っててよ。
つーか何先にお茶会始めてんだよ。」

「お前が遅いからじゃ。」


グダグダと話すオレたちをよそに、オレの分のカスタードと茶を出してくれるリクオ。ありがとな。流石オレの息子なだけあって、気が効くわ。


「んで、なんだ? 何の話をするんだ?」

「…姉ちゃんについて、聞きたいことがある」


モグモグと食べながら聞けば、そう真剣な顔をして切り返してきたリクオ。表情からして真剣なのが伝わってくる。


「(どうやらお前さん、何かやらかしたみたいだぜ。…つぅか何したんだよ…。)」


ここにはいない娘に問い掛けつつ、オレと親父はリクオの次の言葉を待った。
一難去ってまた一難…なかなか平穏は来ない。




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