▽ 曇り一方晴れ
燃えゆく建物を眺める邪魅。そしてその邪魅に話しかける者が1人…
「邪魅…どうして?
私達一族を恨んでいたんじゃないの?」
答えない邪魅に代わり、リクオが口を開く。
「お前は…殺した妻の子孫でもあるが主君の子孫でもある。こいつはただ〈主君〉に尽くしていただけだ。ずっと…あんたたち一族を守ってたんだ。」
何を思うのか…空を眺めている邪魅に品子ちゃんが歩み寄る。
「あの…誤解しててごめんなさい。
おかげで…助かったわ…。
守ってくれて…ありがとう!」
笑顔でお礼を言う品子ちゃん。
良かったねぇ…邪魅。内心プチ感動して、ウンウンと1人頷いていると…
「見上げた忠誠心だな…」
おお、リクオが肉食獣の目をしているぞ。
つぅかこのタイミングで話し掛けるのかよ…お前も清継と仲間のKYなのか?
「何処の者かは知らぬが、このご恩は…」
「オレは奴良組若頭 奴良リクオだ。オレはいずれ…魑魅魍魎の主となる。その為に、自分の百鬼夜行を集めている。オレはお前のような妖怪が欲しい!!」
…あぁ…なんてこと。
リクオは女たらしどころか、男たらしにもなったようだ。
「魑魅魍魎の…主…?」
「邪魅。オレと盃を交わさねぇか。」
…やっべぇ、私の空気感が半端ないっす。
あ、でも盃を近くで見れるのは嬉しいな。
そんなこんなで、
早速2人はこの場で盃を交わし始めたのだがー
「三の口。お前…ワシと盃を交わさねぇか。」
「もちろんですぅ〜。」
『わぁ〜可愛いっ上手い上手いー!!』
え? 何をやってるかって?
リクオの盃を交わすゴッコだ。リクオと邪魅が盃を交わしている横で繰り広げています。空気ぶち壊しなのは…御愛嬌ということで!
『…あっ、品子ちゃ〜ん。』
「は、はい!」
そんな堅苦しくしなくても…
『あっ、もしかして怖い? 昼の姿に戻ろっか?』
「いや、そんなことないですよ!
そ、それよりどーしました!?」
『あー、もし良かったら…帰ったらお風呂貸してくれないかなーなんて…』
「え?」
『炭臭くなっちゃったし…』
そう、さっきから自分が炭臭くてツライのだ。
だから早く帰りたかったのによぉ〜まさかここで2人が盃を交わすなんてよ〜。
家に帰ってから交わせよ。
「あ…本当だ。私も臭い……」
クンクン臭って、うわぁ…て顔をする品子ちゃんと目が合って笑う。
「じゃあ…帰ったらお風呂入りましょう!」
『うん!ありがとー!!』
所変わって品子ちゃんの家ー
お風呂から上がり、寝室に戻ろうとした時のこと。
「姉貴。」
同じくお風呂上がりであろう夜リクオが声を掛けてきた。
『…お疲れ様。良かったね、百鬼夜行…また1人良い仲間ができて!』
「あぁ…まぁな。」
ニコニコして言えば、リクオもニヤッとして言う。
『…あ、もしかして、独りじゃ寝れないから一緒に寝ようとか!? 寂しがり屋さんめ〜!!』
そうニヤニヤして言えば、んな訳ねぇだろと一刀両断。何だよ照れ屋さんめ。女たらしで男たらしなクセに。
「なぁ…アレは本音か?」
『えっ、まさか。
一緒に寝ないよ? リクオ寝相悪いもん。』
「ちげぇよ!! つぅか、どんだけ昔の話だよ!!」
貴方にとって昔でも…私にとってはついこの間だったのよぉぉおおってのは嘘です、はい。
『なによ〜さっきから。私寝たいんだけど。』
つぅか背が高いな夜リクオ。私も夜の姿なぅだけど…身長差が結構ある。昼の私だったらもっと身長差が開くんだろうなぁ…だなんてどうでもいい事を考えていれば、
「人間が嫌いなのか…姉貴は。」
爆弾を落としてきた夜リクオ。
おかげさまで一気に眠気が吹き飛んだよ。
「昔…姉貴が言ってたンだぞ。人間も妖怪も同じ…良い奴も悪い奴もいるってな。」
『へぇ…覚えてるんだ。』
「当たり前だろ。…何でそれが今は…人間の方が嫌いなんだ?」
こまっちんぐ……どうしましょう。
「何かあったのか? 学校とか…友達と。」
『いや、何もないよ。』
「じゃあどーしてだ。」
『…確かに昔、私はそう言ったよ。
でも、私の人間嫌いは昔からだよ。』
その言葉に眉を寄せるリクオ。
『人間と妖怪は確かに一緒。でも、それでも私は人間の方が嫌い。これは…昔から変わらない。』
そう、前世の時から…何も変わらない。
と言っても、前世の時は霊感0でそういうの見えなかったけどね。だから前世では、〈人間の方が嫌い〉ってよりも〈人間が嫌い〉だったんだよ。
でも今は…
『……妖怪が見える。』
「…?」
『だから、〈人間の方が嫌い〉になった。』
「…どういう事だ? っおい! 姉貴!!」
去ろうとした私の腕を掴むリクオ。言わなきゃ行かせねぇって感じだ…どーしようか。
《……助けてあげる。》
『…! 夜…?』
そこで私は意識を失った。
朝起きれば、普通に布団の中に寝ており、つららや品子ちゃんや皆も異常なし。まっ、品子ちゃんが元気になってたことに皆不思議そうな顔してたけど。
問題あるのはリクオだけだ。
朝起きて挨拶すれば、どこか余所余所しい…。意識がない間に何があったか分からず、それがまたなお不安を掻き立てる。
私の心とは裏腹に、晴れ晴れとしたこの天気が少し憎かった…。
(『リクオ、おはよう!』)
(「え、あっ、お・・・おはよう!」)
(『? ・・・どしたの?』)
(「ななな何でもないよ!!ほら、行こう!みんな待ってるから!朝食食べに!!」)
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