▽ キャンプファイヤー
夜になり、またもや女子だけで寝ている私達。
だが昨日と違う所がただ一つ…それは品子ちゃんがここにいないことだ。
「ねぇ、みんな…やっぱり品子さんをあの部屋で一人にするなんて…おかしいと思うんだけど。」
『そうねぇ、でも…神主さんが言うにはあの護符は強力だって言うし…。』
「でも…変ですよ。決して外は出ないこと・品子ちゃん以外は誰も入らないこと・朝まで戸を開けちゃダメなこと…まるで、品子さんを一人にさせようとしてるみたい。」
『まぁ実際、護符が強力だから一人にさせようとしてるんだけど。』
「そうですけど…でもゆらちゃんも居ないし、皆で一緒にいた方が…ってもう! 皆寝てる…。
お姉さん、一緒に行きま……!」
急に言葉を止めたカナちゃん。
どうしたのだろう、と起き上がってカナちゃんを見れば…
あ、夜リクオだ。
夜リクオの影が障子に映っている。
「ま、待って!!」
もちろん、夜リクオloveなカナちゃんは起き上がって外に出ようとするのだが…
「(呪いの吹雪 雪山殺し!!)」
つららの技でコテーンと布団にリターンバック!!
「危ない危ない。もう! 夜のリクオ様ったら、大胆なんですから…。」
そう悪態を付きつつも、カナちゃんをちゃんと布団に寝かせるつららは実にイイ子である。
『クスッ…私も行ってくるわね、つらら。
ここは頼んだわよ。』
「はい!
お気を付けて、いってらっしゃいませ〜」
あぁ、癒しだ。ミニ旗をパタパタと振って…つららマジ可愛い。個人的に私はつららとリクオがくっついて欲しいな。
『……さてと、行きますか。』
品子ちゃんの所に向かえば、夜リクオと邪魅が話しているところだった。
「オレは敵じゃねぇよ。詳しいことは道々話してやる…。この邪魅騒動のカラクリ、あばいてやるから…ついてきな!!」
「え? ど、どういうこと?」
リクオの言葉に混乱なうな品子ちゃん…
そんな彼女の元に向かえば、驚いた顔をされる。
「! 鯉菜さん!? これは一体…」
『品子ちゃん、取り敢えず今は行こう。
歩きながら説明してくれるから…リクオが。』
そう言ってリクオを指させば、驚愕する品子ちゃん。ちなみにリクオには「お前が説明しろよ」と半目で見られています。
「え…ええええ!? リクオ君!? この人が!?」
『私達、妖怪の血が混じってるからさ…変化できるんだよね、こんな風に。』
そう言って私も夜の姿にイメチェンする。
…うん。自分で言うのもなんだけど、ナイスバディだ。昼の姿とは違って胸が大きくなりましたぜイエーイ。…毛倡妓程ではないけど。
そんなアホな事を一人呟きながらも、取り敢えず移動を始める私達。
そして、
向かった先は秀島神社でー
「がはは…迷信を利用してまた上手く行ったなぁ。これで遂に菅沼家の土地も手に入るぞ。」
「くくく…昔ちょっと京都で習った式神がこんなふうに上手く大金を生むとはねぇ〜」
建設会社やハセベ、そして例の神主がニヤニヤと汚い笑みを浮かべて話しをしている……
「神主さん…何で、その人達と一緒にいるの…?」
そうー
品子ちゃんが後ろで聞いているのも知らずに。
「!? 何でここに!!?」
「…知ってしまったか…ならば痛い目を合わせて言う事を聞いてもらう他ないね。」
「おい…やれ!!」
事実を知った品子ちゃんに、事実を知られてしまった彼ら達…。
そして、事実を知ってしまった品子ちゃんを彼らが消そうとするのは当然のこと。彼らは慌てて品子ちゃんに襲いかかろうとするが…
「逃げても無駄だぁ、待てやコラ!」
『逃げても無駄…?』
品子ちゃんを外に出させ、出口に立ち塞がる私。
『それはこっちの台詞だよ…
欲に群がる蝿どもが。』
「なんだテメェ!?」
構える奴等に対して、私も鉄扇を構える。
「外道共が…邪魅はらいとは笑わせる。」
「誰だ!?」
そして今度はリクオの声に警戒する彼等だが…
リクオが明鏡止水で姿を隠しているため、「どこだ」「誰だ」と彼等は混乱に陥っている。
「自分らの言う事きかねぇ人間には式神を飛ばし、やれ邪魅がついたとふれまわる。〈邪魅に呪われた〉〈邪魅を祓え〉と人々を惑わせる。
なんてこたぁねぇ…邪魅騒動ってのは自作自演の猿芝居。
まさに〈悪氣なるべし〉だ……」
「誰だ、どこに居やがる!?
さっさと出てこい!!」
そう叫ぶハセベの首元に、明鏡止水を解いて刀を突き付けるリクオ。
『ふふっ…出てこいって言ったから出てくれたのに。ビビっちゃってやんの〜情けない。』
「こ、こいつら…くそっ!
話を聞かれたぞ!! この二人を殺ってしまえ!!」
襲いかかるヤツらを避け、家の支柱を切るリクオ。そうすると、屋根が崩れてくるのは言うまでもなく…
「「「ぐげぇぇえ!!」」」
『……っぶな! ちょ、私まで潰す気!?』
「避けたんだからいーじゃねーか。」
『まぁね。』
「…アッサリしてんなぁ…ククッ」
何処か楽しそうにしているリクオと背中合わせにして戦う私達。
ハッハッハ、息ぴったりな姉弟であろう!?
やり過ぎない程度で襲ってくる奴を返り討ちにしていれば、あるものが目に入る。
『見てごらんよリクオ。
ちっさいモノ倶楽部が頑張ってるわ…可愛い。』
図が高い! と集団で人間達に突進している小妖怪達。リクオの偉大さをめっちゃ語ってるよ。愛らしい。
『…今の聞いた?
ブライチスト・ホープだってよ、リクオ様♪』
「……分かったから下がれおめーら。」
そんなこんなで
この子達のおかげで、私達が「本物」の妖怪だと知った彼等は全力で逃げていく。
残ったのは…神主だけだ。
「お、おのれぇ〜妖怪だと!?
だったら、花開院陰陽術の式神、受けてみよ!!」
だが、その式神は邪魅によって斬り消される。
「げぇ…も、もう一匹いたのかぁ〜!?」
「神主さんよ。
こいつがこの街に現れる本当の邪魅だよ。」
神主に歩み寄るリクオ…そして待ってくれと焦る神主。ゲームオーバーですなぁ。
「あんたの妖怪騙りのせいで不当に扱われたこいつのお礼だ…受け取れ!!」
明鏡止水〈桜〉で神主ごと建物を燃やすリクオ。
あぁ…神社がめっちゃ燃えている。
『…夏を攻めてるねぇ、私達。』
「はぁ?」
『こんな真夏日にキャンプファイヤー……』
「…アホか! 行くぞ。」
『アイアイ』
リクオに頭を叩かれたが気にしない。むしろ私は炭臭くなりそうなことに対して不安だ。早くここから離れないとコレ…明日臭いぞ〜。
(『あちちち・・・って、うわぁ〜』)
(「どおした?」)
(『火が熱くて出たのにさ・・・』)
(「おぅ」)
(『外も暑くてガッカリしたの』)
(「・・・お、おぅ。残念だったな」)
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