▽ A君は欠席のようです
次の日の朝、例の神主さんと皆で話しをする。
「そう…また出たのですか。
邪魅には本当…手をやかされる。」
私達は今、秀島神社に来ている。と言うのも、昨夜出たお化けについて話をするためだ。
「昔この町が秀島藩と呼ばれていた頃、大名屋敷があってね。そこにまつわる忌々しい伝説が…」
そう言って邪魅という妖怪について説明し始める神主。要約すれば、そこの君主に凄い忠実だったある男の人の霊が邪魅の正体であるということだ。君主の奥さんにヤキモチ妬かれたため、地下牢に閉じ込められてそのまま死んじゃったとのこと。
「邪魅というのは、恨みをかった人間を襲う妖怪…この地にはまだ恨みをかった大名家の血筋が残っている!
そう…品子ちゃんはその大名家の…秀島藩主、菅沼定盛の血筋。その直系にあたるんだよ!」
長々と説明をした後…力が及ばず申し訳ないと言う神主の言葉を最後に神社を去る私達。せっかくここまで足を運んだにも関わらず、無駄足だったために皆の空気は重い。
しかし、
空気を読めないKY坊主がここにいることを忘れてはならない。
「よし!海に行こう!!」
もちろんその男は清継であり、珍しくも良い提案をする。
本当、色んな意味で良い案だ。
清継の提案に元気を取り戻してきた清十字団はワクワクと海に向うのだが…
「ぎょせん…?」
「泳げねーし…」
知らなかったと嘆く清継を、島と巻が容赦なく絞める。本ッ当、清継もたまにはイイ事するね!!
そんなバイオレンス的な光景を見て…
「くすっ…ありがとう、元気でたよ。」
「え、こんなバカに付き合わされたのに!?」
突然、お礼を言う品子ちゃん。勿論お礼を言われた巻ちゃんや鳥居達はビックリしている。
つぅか…清継が本当にワカメみたいな色に変色していくんですけど、大丈夫か?
「皆が来てくれただけで、心強いの…。邪魅のでる家は…町の人からもよく思われないから…皆みたいな仲間がいる事が本当に…私は嬉しいの!!」
涙をぽろぽろと零しながらそう言う品子ちゃんに、今夜こそ邪魅を捕まえると自信満々に言う清継。霊感ないのにどうしてそんなに自信満々なんだろう。
そして周りも清継の頼りなさを知っているため、清継を白い目で見ているが…当の本人はKYなのでその事に気付いていない。
そんなワイワイと騒ぐ私達の元に、ガラの悪い連中達がやってくる。
……おや、あれは……
「おいおい〜化けもん憑きのその娘にゃ関わんねー方がいいぜ?」
「菅沼のお嬢さんここにいたのかい?
家に誰もいないから探したぞ。」
「ひひひ、やばいことになっちゃう前に早く出た方がいいぜぇ〜!?」
『本当…やばいことになっちゃう前に、去った方がいんじゃな〜い!?』
「ぐふぉっ!!!!」
助走をつけて飛び蹴りをかます。
え? 知り合いかって?
昨日の温泉卵アイスの連中ですよ。
「な、何だてめっ…!? 昨日の!?」
『やぁ、また会ったね…?
あら、下っ端Aが今日はいないのね。
じゃあ、君でいいや。』
「ぐぬおっっっ!!!!」
下っ端A同様、Bの股間を蹴り顔を踏み付ける。
『…もっかい見たいなら…見せてあげるけど?』
ニヤッとして言えば走り去っていく陰毛頭たち。…ふん、皆が見てるのに妖怪を出すわけ無いじゃん。
去って行くヤツラの後ろ姿を見ていれば、リクオが隣に立った。
え、私怒られる?
やり過ぎだって怒られちゃうの?
「つらら、姉ちゃん…」
『ん?』
「今晩あいつまた出るぞ」
おぉ……どうやらこのカラクリに気付いたようだ。
「邪魅の正体…暴くぞ!!」
(「姉ちゃんは今日、ボクと一緒に護衛に回ってね!」)
(『・・・え、寝てちゃダメ?』)
(「ダメ。一緒に今夜行くよ。」)
(『あらま、デートのお誘い?』)
(「つららはカナちゃん達を見張ってて!」)
(『(スルーされた・・・)』)
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