この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 温泉タマゴアイス

『あつい…ダルイ…死にそう…』

「姉ちゃんって雪女でもないのに暑さに弱いよね。」


こんにちわんこ。私、鯉菜はただいまクソ暑い中をしぶしぶ歩いております。というのも、妖怪退治のためです。
遡ること数日前…


「姉ちゃん、今度の休みに清継君が…」

『断る』

「まだ何も言ってないじゃん!」


勘弁してくれ。清継って名前が出た時点でもう100%面倒ことじゃねーか。


「妖怪が出て困っている人がいるらしくて、それで皆で行くことになったんだけど」

『私は正式な清十字団のメンバーじゃないし、パス。』


何が面倒って…荷作りだよ。夜に旅行の準備して、朝早くに起きて着替えて出発…何で貴重な休日をそんな辛いことに費やさなくちゃなんないのよ。私はインドア派なの! 休日とか家から出たくないの!!
なかなかOKを出さない私にリクオはため息をつく。やっと諦めたか。


「姉ちゃん…あの言葉は嘘だったの?」

『え…?』

「蛇太夫の件があった日の帰りの時…三代目補佐になるって。」

『………』

「あれ…嘘だったの?」

『……行きます』


ということがございまして、清十字団と仲良く妖怪退治に来ましたよ。


『あいたっ』


リクオは段々恐ろしい子になっていくな、なんてぼーっと考えていたら


「おいコラあ! 何処に目ぇつけとんじゃあ!?」

「ハセベさんの原宿で買ったイケてるTシャツがベチョベチョじゃねーか!」


…出たよ出たよ。痛い奴らが。


『誰だよハセベって。…アンタか。』

「姉ちゃん、大丈夫?」


うんと言ってリクオの手を借りて、立ち上がる。


「温泉タマゴアイスついちゃったじゃねーか!」

『美味しそうね。どこで売ってるの?』

「だろ。これは向こうにある漁船の近くのアイスクリーム屋さんで買えるぞ。」

『漁港ね、分かったわ。ありがとう!』

「おう! …じゃねーよ!! なめてんのかテメエ!! Tシャツどうしてくれるんだよ!」

『いいじゃない洗えば。洗っても汚れが取れなかったら捨てなよ。そのTシャツ全然イケてないから。むしろダサいから丁度よかったんじゃなくって?』


んだとー!と尚更怒っちゃうハセベさん達。こういう奴らって単細胞でからかうの面白いよね。まあ…喧嘩しても勝てる今だから言えるんだけど。


「金払えねえなら、体で弁償してもらうしかねえなあ!?」

「クソ生意気だけどよく見りゃ可愛くねーか?」

「まず俺らで遊んで、その後小遣い稼ぎのエサにでもしましょうよ、ハセベさん!」


そう言って私の手を掴む下っ端A。
…身体で…ねぇ。ホンット、胸糞悪い。


『…アンタらみてぇなゲス野郎が一番大っ嫌いなんだよ。』


容赦不要だ。


「ちょ、姉ちゃん!?」


下っ端Aの股間を蹴り上げ、前屈みになったところを狙う。Aの頭を引っ掴み顔面に膝蹴りすれば…


『はい、一丁上がり。次〜。』

「な…野郎ども! やっちまえ!!」


その言葉を合図に、下っ端B〜Dが襲い掛かってくる。番傘を構え、深呼吸をする。当たり前だが抜刀はしてないぞ! 傘のまんまだからね!


『さてと…行くよ! 小っちゃいモノ倶楽部!!』

「「「お〜!!」」」

「えええええ!!?」


私の掛け声と共に出てくる小妖怪。
リクオが驚くのも無理はない…何故なら私がこっそり、小っさ可愛い妖怪をリクオのリュックに詰め込んでおいたのだから。


「うわ、うわあああああああ!!!」


妖怪におそれ、逃げていくハセベ達。ざまあ!!


「ちょ、何でお前たちがここに!?」

『私がリクオのリュックに入れといた。』

「何で!? てか、だから重たかったの!?」

『訓練よ、訓練。体を鍛えなきゃ。おいで、三の口。』


はいです〜とか言いながらこっちに駆け寄る三の口、まじかわ。実を言うと私は三の口と仲がいい。どっかに行く時はたいてい連れて行く。可愛いから。詮索することも叱ることもない。ただ傍にいて欲しい時は、黙って傍にいてくれるのだ。


『あれ…これじゃ私が悪女みたいじゃないか。』


私にとって都合のいい男子☆みたいな?


「何さっきからぶつぶつ言ってんの。置いてくよ?」

『今いくー。』


リクオの元に小走りで行けば、つららが「妖怪なんて使って…ばれますよ〜」って言って出迎えてくれた。そんなことよりも私は、つららがこの暑い中マフラーしているのが気がかりで仕方がない。暑くないの?


「まあ、いざとなれば私が全部凍らせればいいんですけど。…家長含め」

「つらら…それは違うよ、それは違う」

『つらら…私はあなたのそういうところが大好きよ。』


つららと共に黒い笑みを浮かべながら歩く。にしてもどこまで歩かせるんだよ。


「奴良姉弟!
遅いぞ、目的はもう目の前だというのに!!」

「ごめん、清継くん!」

「許さない! 決して!」

『器のちいせえワカメだな。』


妖怪・邪魅が出る武家屋敷は…もうそこだ。



(「先輩、水着もってきました〜?」)
(『いや、持ってきてない(漁港だし。でも教えない。)』)




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