この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 友達

手をつき、頭を下げる隠神刑部狸。


「一つだけ…条件がある…。犠牲になったものを…絶対に弔って欲しいんだ。」


リクオのその発言に、隠神刑部狸は顔をあげる。


「それ…だけで、いいんですか…?」

「うん…でも、絶対に、弔って欲しい。」


必ず弔わせますと誓う隠神刑部狸に、リクオはひと安心したようだ。ホッとして膝から崩れ落ちる。


「今日はオレがリクオの治療する。」


お前も銃の力で疲れてるだろ?と言って、リクオの元に向かうお父さん。隠してた訳じゃないけど…お父さんには何でもお見通しだな。


「……鯉菜(ボソッ)」


背後から聞こえた声に振り向けば、そこには犬神の姿があった。…来てたのか。


『…いってらっしゃい。』


ニコッと笑い、犬神の背中を押す。ここからは本人達次第だ。



「…生きていたのか、カス犬。」
「…玉章…」


現れた犬神に玉章が眉を顰める。


「ハッ…何だ。裏切ってお前を殺そうとしたボクを…殺しにでも来たか?」

「っ…そうじゃないぜよ……」

「じゃあ何だ! ボクを笑いに来たのか!?」

「…オレは! オレはお前が大ッ嫌いぜよ、玉章!
でも…お前はオレを変えてくれたっ! 恨みはあるが感謝も…してる!! それに…言ってくれただろ…?」

「……?」

「新しい世界へ連れてってくれるって…。今からでも遅くはねぇ! でも今度は…! ただついて行くだけじゃなくて…玉章! お前と一緒に…切り開いて行きたいぜよ!!」


犬神の言葉に何も返さない玉章。
…しばらくの間沈黙が続く。


「…はっ…物好きな奴だな…。勝手にしろ。でも…ボクは…甘やかしたりしないよ…」


……良かった良かった。
これで多分何とか大丈夫だろう。


『でも一応、釘を刺しとかないとねー。』


空気が和らいだ中、玉章に向かってまっすぐ歩く私。奴良組や四国のもの、リクオや犬神の間を通り抜けて、玉章の元に辿り着く。
そしてグイッと玉章の襟元を掴み、手を振れば…
パアンと音が響いた。


「なっ…鯉菜!? 何するぜよ!」


玉章にビンタした私に詰め寄る犬神。その犬神の肩に腕を回し、私はゆっくりと口を開く。


『次、また私の友達を裏切ってごらん。
そん時はリクオじゃなくて、私がアンタの首を取りに行くわ。私はリクオ程優しかないわよ。』


リクオ程強くもないけどね…。
ニヤッと笑いながら玉章に念を押す。
そして「とも…だち…」とポカンとしている犬神の肩をぽんと叩く。


『イジメられたらいつでも言いに来なよ、友達…でしょ?』


その言葉に、おうと照れながらも返事をくれる犬神。玉章を倒したことだし、朝になったことだし、そろそろ帰ろうと皆が歩み始めた時…玉章が口を開く。


「奴良鯉菜…」

『……なに?』

「…気をつけた方がいい。
君の治癒の力は、広い範囲に知り渡っている。特に…西には生肝信仰のやつらがいるからね。」

『…忠告ありがとう。』


……西の生肝信仰……羽衣狐、か。






所変わって奴良組本家。


「だめだ!学校は休めないよ!!」


酷い怪我をたくさん負ってるのにも関わらず、学校に行こうとするリクオ。


『やめときなって。
日直って言っても、どうせそれ誰かのでしょ?』

「そうだけど…!!」

「……ききわけなさーい!!!!」


ほーらみろ。引かないリクオにつららがついに怒ったぞ。再び開いたリクオの傷に、包帯を巻き巻きする鴆。


「午後からでもダメ?」

「どんだけ人間でいたいんだテメーは!
大将やるって言ったくせに矛盾しまくりじゃねーか!!」


諦めの悪いリクオに、そうツッコミする鴆。お前…また血ぃ吐くぞ。


「えぇ…でもそれが〈リクオ様〉。
私は……好きですよ♪」


クスッと笑いながら言うつららの言葉に、固まるリクオと牛頭、鴆。……鴆は血を吐いてる、ワロス。
にしても、むぅ〜…面白くない。


『……私も、好きですよ♪』


…………何でだァァ!!!!
何で私が言うと3人共そんな目を向けるのぉぉおお!!??


「てかさ、姉ちゃん」

『なーに? リクオたん♪』

「姉ちゃんは学校行きなよ。」

『いーや♪』


この後私はリクオに叱られ、渋々制服に着替えて家を出ることになる。しかし…学校に行く程真面目でもなく10分で帰宅するのだった。



(『ただいま! リクオ、大丈夫!?』)
(「10分しか経ってないけど!?」)
(『リクオが心配で・・・! つい・・・!』)
(「その手にあるものは?」)
(『・・・キャラメルマキアート。いる?』)
(「ス〇バに行っただけじゃん・・・いる。」)




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