この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 入れ替え作戦

はい、皆様、こんにちは。鯉菜っちです。
今日は待ちに待った、生徒会選挙候補者演説の日だよ〜、私が司会者をやる日だよ〜。だから今少し緊張してまっす!


『…だいぶ人が集まったな。そろそろか。』


プログラムの最終確認しようとすれば、急に誰かに手を引かれる。


「鯉菜様!! 来てください!!」

『つらら!? ちょ、もうすぐ司会が……』


体育館倉庫にたどり着けば、リクオと護衛全員が集まっていた。遅れてやってきた私のために、首無が簡単に現状を説明してくれる。
どうやら敵の妖怪が1匹体育館に紛れ込んでいるらしい…知っているけど。


「若、お嬢、逃げてください!
ここは我らに任せて!!」

「それは出来ないよ、狙っているのはボクじゃなくて…人間の方かもしれない!」

『私も断るわ。司会者しないといけないし。』

「な…奴らの目的はリクオ様と鯉菜様の命なんです!! 御理解ください! あなた方は今、ただの人間なんです。闇の中では秘めた力を発揮できても今は無力。だからこそ、我らが護衛についているのです。」


やっぱ首無って真面目でお堅いねぇ。
カラス天狗みたいだ。


「我々は奴良組の妖怪。決して逃げ腰になっているわけではないことをご理解いただきたい!!」

『ねぇ、本当私もう行かないとダメだから行くね? そんじゃ!』


本当にやばいんだってこんにゃろー!!


「なっ、オレの話を聞いてま……」

『リクオ、ここは任せたわよ。』


リクオの肩をポンッとたたき、急いで体育館倉庫を出る。どうせ、リクオと首無の入れ替え作戦とかあるんだろうし…私は私の準備をしよう。




『えぇ…お待たせしました。
今から生徒会選挙候補者演説を始めたいと思います。司会は、三年一組の奴良鯉菜が努めさせていただきます。よろしくお願い致します。それではまず最初の候補者として、二年一組のー…』


司会者挨拶を終え、次々と候補者を紹介させていく。二年一組から三組の順に候補者の演説が行われる。はぁ……正直暇だ。
でも、そろそろだ。次は清継の番。
犬神との戦いが……始まる。


『続きまして会長候補、一年三組のー…』


清継のターンの紹介を終え、ひと段落をつく。
問題はここからだ。
リクオと犬神の戦いを邪魔せず、何とか犬神を救いたい。それには多分…隙を見て妖怪変化をしなくてはならなくなるだろう。


「マドモアゼルジュテーム。」


…発音最悪だな。
壇上のスクリーンに映るのは清継。何でバスローブ着て片手にぶどうジュース持ってるんだよ。


「そーです清継です。どうも全校生徒の諸君!
演説は時間内であればどう使っても構わないと言われたのでね。やる気過ぎてこういう演説を思いついてしまったってわけさ。」


前から思ってたけどさ、よくコイツこんなこと恥ずかし気もなくできるよね。私だったら絶対しない。恥ずかしくてできない。


「ーおっと、もうティムリミットだ。
ちょっと心許ないが…応援演説を君に頼んだ!!」


何だよティムリミットって。タイムでいいじゃん。英語にしろよ。何でさっきからフランス語なんだよ。


「あ…ども……」


応援演説はリクオが担当だ…本当ならね。
と言うのも…あれはリクオじゃなくて首無なのだ。


「えー…あっとボク、奴良リクオです。」


うっわ!! 何この歓声。
名前言っただけでスゲェよ。ジャニーズもびっくりな歓声だよ。地響き半端なっ!!
この歓声が起爆剤となり、犬神がついに動き出す。犬神の首が飛び、リクオに扮した首無の首に噛み付く。いや、首無だから首無いけどね?


「奴良のやつ叫んでるぞ!」

「どーなってんのー!?」


仕込みなのかリアルなのか区別がつかず、興奮する生徒達。一般人からしたらこれかなりのホラーだよね。しかもほら、首飛んだし。


「いやぁぁぁぁあ!? 首がないいいいい!?」


その言葉に一層、混乱してざわめく皆。
…どうしよう、仕込みですって言うべきかな。
う〜ん、下手に干渉するよりも放っとくか!!


「やはり、若を狙っていたか。首だけで戦うのは君だけじゃあないんだよ……」


そう言って、首無と犬神が対峙する。
こんな時に何だけど、首無と犬神って首が離れるだけじゃなくて名前も似てるよね。


「な…お前、リクオじゃねぇのか!?」


リクオや奴良組の者に騙された事に怒り、犬神の体が妖気と共に膨らむ。そして、デカくなった身体は飛んだ自身の首を掴み、身体とくっつける。


『…アンパン〇ンかよ。』


さてと、ふざけてないでそろそろ私も動きますかねぇ。夜の姿に変化し、壇上に現れた昼リクオにぬらりくらりと近づく。
一方、首無や河童、毛倡妓は巨体になった犬神に吹き飛ばされる。…次はリクオだ。


「り…リクオ様ぁぁあああああ!!」


吹き飛ばされた上、メキメキと押し潰されるような音に、リクオの名を叫ぶ護衛達。だが、怪我をしたのはリクオではなく、犬神の方だった。


『…大丈夫?』

「あぁ、姉貴こそ…俺を庇って怪我してねぇか?」

『全然。無傷だから大丈夫。』


夜に変化したリクオを支えながら起こせば、全くの無傷なようで平気だと言われた。
ちなみに私は無傷と言ったが…実を言うと背中が少し痛い。吹き飛んだ昼リクオをキャッチしたら、吹き飛ばされた衝撃で、そのまま私の背中が壁にぶち当たったのだ。
そして、
私の言葉に「そうかい、怪我がなくて良かったぜ」と呟き、今度は犬神とリクオが対峙する。



「…陽は閉ざされた。
この闇は幕引きの合図だ。」



いざ、尋常に……勝負!!




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