この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 想いは力に

『敵の頭は、ここで畏れを多く取るって言ってたわ。もし奴が奴良組の畏れの基盤を知っていたら…きっとそこを崩しにかかるでしょうね。』

「土地神か…」

『えぇ。さっきの奴は守り神殺し専門…つまり、やつの狙いは土地神。』

「そうか…では今すぐこの辺りの土地神を!」

『うん、という訳で……いってらっしゃい!』


笑顔で手を振る私に、黒田坊は「え?」とフリーズする。私は行きましぇーん。


「お嬢は行かないのですか!? 二代目も!」

「…俺は鯉菜の護衛だからな。
こいつと一緒にいる。」

「お嬢! 土地神はたくさんあるんですよ、俺一人じゃ…! あの娘を助けたくないのですか!?」

『…………』

「…もういいです、俺が一人で探します。」

『……ありがとう(ボソッ)』


怒ったのか、呆れたのか、はたまた両方か…溜め息をついて黒田坊は去る。
あーあ、私の株が下がったな…別にいいけど。


「…いいのかい?」

『…さぁ、私にも分からない。』


そう言えば、キョトン顔のお父さん。
え…何その反応。私もキョトンだよ。


『でもまぁ…大丈夫なんじゃない?』


原作通りに行けば、リクオ達が奴を倒して何とかなった筈。あとは…鳥居のおばあさんがここに来ればいいだけ。例えリクオ達がアイツを倒しても、鳥居のお婆さんがここに来なければ、鳥居は助からない。私はそれを確認したいのだ。


「…誰か来たな。」


その言葉に顔を上げれば、車椅子に乗ったお婆さんが来た。鳥居のお婆さんだ。
よかった、ちゃんと来て…。


「あの人は…」

「知り合いかい?」

「えぇ、ヒバリ殿です。彼女は昔から…ここに来てくれてました。最近見かけてなかったのですが…そうか、病気だったのか。」


おそらく鳥居達が作ったのであろう千羽鶴を供え、雨の中傘もささずにお祈りしている。時折、「夏実をお助けください」という言葉が耳に入る。
私も一緒に祈ろうかと思っていたが…懸命に心からお祈りしているおばあさんの後ろ姿を見て、『私には無理だ』と何となく分かってしまった。お父さんが怪我したときは本当に心からお祈りできたけど、今回の私は鳥居が助かることを原作で知っている。もしかしたら原作がズレてしまうかもしれないが…それでも心の奥底で『まぁ助かるだろう』と思ってしまうのだ。
だから、せめて…



『…お婆ちゃん、風邪ひきますよ。』



お婆さんの隣に立って、彼女が濡れないように傘を差した。そうすることしか、今の私には何もできることがないような気かしたんだ。


「…孫が…急に倒れたんです。…私には、こうやって千羽様に縋るしか、できません。」

『…千羽様は大変小さくなられました。
神様は人の想いで出来るもの。逆に言えば、人が神様を忘れれば、その神様は消えてしまうのです。』

「……千羽様はお怒りでしょうか。私は、ここ何年も…お祈りに来ていませんでした故…」


手を合わせながら目に涙を溜めて話すお婆さんに、慌てて弁解する。彼が怒っているわけないじゃないか…。


『まさか! お怒りになるどころか、千羽様は今大変喜んでおられますよ。自分の事を覚えていてくれる人がいたんだと…。』


そう言えば、「だといいのですが…」とこぼすお婆さん。そんなお婆さんの肩に手を添え、私はゆっくりと話しかけた…
 

『でも千羽様もまだ、お孫さんを助けるのに力が足りないようです。どうか、千羽様を助けてあげてやって下さいな…ヒバリ様。』


にっこりとそう言えば、驚いた様に顔を上げるお婆さん。当たり前だ。自己紹介もしてないのに、私がその名を知っている筈はないのだから。


「!
どうして、私の名を……?」

『…千羽様に教えていただきました故。』


そう言って視線を千羽様に向ける。もちろん、お婆さんには見えないけれど。


「千羽様は…そこに、おられるのですか?」


暗に、見えるのかと聞いてるのだろう。


『えぇ。顔を隠しておられるので分かりませんが、あまりの嬉しさに少し涙ぐんでおられるようですよ。』


クスッと笑いながら言えば、図星だったのかコチラに背を向ける千羽様。



『一緒に…千羽様に願いましょう?』











夜明け頃…
ようやくチカラが溜まったのか、小さかった千羽様が大きくなる。


『…!』


千羽様を見れば、こくんと頷きそのまま姿を消した。おそらく鳥居を助けに行ったのだろう。


『ヒバリ様…
どうやら千羽様はお力を取り戻したようですよ。』

「…え?」

『あそこをご覧下さいな。』


指を差した先には、鳥居が寝ている病室。さっきまで暗かったのに、今は窓から神々しい光が溢れ出ている。


「……もしや……?」


こちらを見るヒバリ様に、よかったですねと笑いかける。
早くお孫さんの元へ行ってあげてくださいー
そう言って病院の入り口まで車椅子を押してやり、お婆さんの後ろ姿を見送った。


「良かったな…友達が何とか助かって。」


ポンッと私の頭に手を置くお父さんを見上げ、本当に良かったと頷く。


『…護衛、ありがとね。』

「どう致しまして。」


  
(「! 親父と・・・姉貴か!?鳥居は・・・」)
(『リクオ・・・鳥居さんは無事よ。千羽様が助けてくださったから。』)
(「そうか・・・!よかった。」)




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