この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 読めない奴(鯉伴side)

時は夕暮れ。
リクオと鯉菜が学校から帰り、昨夜のことについて話し合う。親父の部屋でプチ会議だ。メンバーは俺、親父、カラス天狗、鯉菜、リクオ、狒々、牛鬼、木魚達磨だ。
ちなみに実況はこの俺、鯉伴だ。


「さてと…本題に早速入るが、何故狒々の所にいたんじゃ? 狒々には、ワシの指示だと伝えたそうじゃが…ワシはそんな指示だした覚えはねぇぞ。」


目を鋭く…てか、ぶっちゃけ睨んで鯉菜を問いただす親父。


『うん……あの総会ってさ、リクオが初めて仕切るものだったじゃない? 牛鬼の判決もしなくちゃいけなかったし。』


その言葉にうん…と頷くリクオ。


『緊張…してるんじゃないかなーと思ってさ、その、…場を和ませようと…。』


歯切れが悪い鯉菜に、何じゃ早う言え、と促す親父。


『…ば、場を和ませようと思って、狒々様の所に行ったの。』

「? 何でそこで狒々になるんだ?」


皆もやはり合点が行かないようで不思議そうな顔をしている……約一名を除いて。


「…まさか、それで、アレか?」


思い当たる節があるのか、冷や汗を垂らして聞く狒々。つーか…こそあど代名詞で話すなよ。


『うん…ごめんなさい、狒々様。
悪気はないのよ!? ただ、いつも同じ面をしてる狒々様がね? 急にプリキュ〇の面をして来たら…ね? 場が和むかなって……。』


和むどころか場が凍り付くだろ…と誰かがポソっと呟いたが全くの同意見だ。


『それなのに、狒々様来ないんだもの!! なかなか来ないからっ、しょうがないと思って…狒々様の家にプリキ〇アのお面を被るよう頼みに行ったのよ!! わざわざ!!』


逆ギレーーーーーーーー!!!??
皆の心が一つになるのを俺は感じた。


「ね、姉ちゃ…本当にそれで場が和むと…?」

『えっ、和むでしょ? ほら……』


そう言って鯉菜が狒々に手渡したのは…


「プ…プ〇キュア……」


そう、〇リキュアの面だ。


「か、被らんぞ!? ワシャ被らんぞ!?」

『ほら! ね!? こーやってモタモタしたから、総会に間に合わなかったどころか襲われちゃったのよ!!』


何とも言えない空気だ…。
もはや皆どこから突っ込めばいいのか分からないでいる。牛鬼なんか見てみろ。あんなに眉を寄せて…深刻な顔で押し黙ってるぞ! 何とコメントすればいいのやらって頭を悩ましてるぞ!! 俺の娘がごめんな!?


「取り敢えず、姉ちゃん…気持ちだけありがたく受け取るよ。」


苦笑いしながらお礼を言うリクオ…お前スゲェな。偉いよ。


「ゲフン! …まぁ、狒々の所におった理由は分かりましたが、何故嘘を?」

『嘘??』


話を切り替えて質問するカラス天狗に、きょとんとする鯉菜。


「えぇ、総大将の指示で来たって…」

『あぁ、それ私が言ったんじゃないよ。
狒々が深読みして、そう聞いてきたの。んで、否定するのも面倒だからしなかっただけ。…あわよくば、じいちゃんの名前でプリ〇ュアの面を被ってもらえればいいなって思ったし…チャハ☆』

「チャハ☆じゃないわい! このバカ孫め!
もし狒々がそれを被ってきとったら、逆に場が凍りついとったわい!!」

「「「「「「それな」」」」」」


親父と鯉菜を除き、皆の本音がきれいにハモった瞬間だった。理由も分かったところで話を終え、リクオと鯉菜にだけ席を外してもらう。


「……狒々の所にいて襲撃にあったのは、偶然だったということですね。」
 

二人が居なくなったところで、先程の話を簡潔にまとめる木魚達磨。


「どうかのぅ〜…」

「どうなさったのです? 総大将。」

「あいつはぬらりくらりと…掴みどころがないからのぅ。確かに変な所がどこにもない、誰もが納得する説明じゃったが…」

「完璧過ぎて、逆に違和感ってところかぃ?」

「うむ。まるで…可笑しい所がないように、答えを前準備してるような気がするんじゃよ」


どうやら、俺が感じていた違和感を親父も感じていたようだ。


「確かにな…。アイツぁいつも巫山戯ていて、そんでもっていつも真面目だからねぇ。」

「つまり…どこからが本気なのか分からない、ということですかな?」

「キャハハ! ぬらりひょんらしいじゃねぇかよぉ!! 2人の血ぃ継いでんじゃねぇか!」

「まぁのう…。だが、鯉菜が一体どこを見てんのか…ワシには分からんのじゃ。」


親父の言葉に、俺はどうなのかと牛鬼が聞いてくる。残念だが……


「俺も親父と同意見だ。アイツは…見てるところが全然違ぇ。何も考えてないように見せて、水面下では色々やってるんじゃねーか?」

「疑問系ですか…」

「……父親の俺にも分からねぇんだよ。」


しばし沈黙が訪れる。


「しかし、いくら風邪をひいていたとは言え、お主がやられるとは…これからどうするんだ?」

「まぁなぁ…ワシももう年じゃからなぁ。息子の猩影にでもそろそろ組を譲るとするか。」 

「いんじゃねーか? 猩影もずっと組を引き継ぎたがってんだろ? 丁度いいじゃねぇか。
にしても…親父、今回はどうするんだい?」

「あん? そんなもん…リクオに指揮を取らせるに決まっておろうが。三代目を継ぐ事を決めたんじゃからな。」


だよな。…三代目を継ぐって決めて初の指揮か。
夜の方は心配ねぇが、昼のリクオが妖怪を仕切れるのかが不安だねぇ。リクオのためにもあんまり干渉しねぇようにするが……まぁ、何かあったら手伝ってやるか。




(「俺も甘いよなぁ・・・」)
(「甘々じゃわい!!」)
(「・・・うるせぇ。」)




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