この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 総会(リクオside)

今日は総会だ。
三代目を継ぐと決めて、初めての総会。牛鬼を裁かなきゃいけないし…正直緊張している。
姉ちゃんがいたらまだ心強かったのに…。


「リクオ様…判決を。」

「うん。……無罪!!」


ボクの出した無罪判決に有り得ないと皆ギャーギャー批判する。姉ちゃんがいたら今頃、『うるせぇ!!鼓膜ぶち破れるだろーが!!』とか言ってそうだな。そんで父さんが姉ちゃんに「お前のがうるせぇわ!!」ってきっと突っ込むんだ。なんだかんだ言ってあの二人仲いいよね。漫才みたい。


「いーの! ボクを鍛え直すためにやってくれたんだから! ねー牛鬼!!」


ボクがいいと言っているのに反対し続けてる一ッ目。怒りで我を失い、周りが見えてないようだ…暴走して孤立しているのに全く気付いていない。


「俺はねぇ、組の為を思って言ってんだよぉ!
お前らも皆そう思うだろ!?
…………っ!?」 


振り返って漸く自分が孤立していることに一ッ目は気づいたようだ。…ボクだってやる時はやるんだよ。


「一ッ目よぉ…そこまで言うなら、てめぇも牛鬼みたいにぶつかってみるか?」


普段のボクからじゃ想像もつかないような、ドスの低い声で脅す。…姉ちゃんを見て育ったおかげだね、うん!


「…なーんてね! さっ、席に戻ろうか!!」


さっきまでの雰囲気が嘘のように、にっこり笑って一ッ目の肩をポンッと叩く。何とか場を丸く納め、総会が終わる…そう思った時だった。


「ぜ、鴆様ーーー!!」


何人かの妖怪が雪崩込むように入ってきた。


「何だァ?」

「狒々様が…何者かに襲撃されました!!
庭にいますので、早く治療を!!」

「分かった、今行く!」


狒々が襲撃された事に、場が一気にざわめく。一体どこの誰なんだろう…どうして狒々を?


「それと! 治療が終わり次第、狒々様の屋敷に来て欲しいとのことです! なんでも怪我人が沢山いると…鯉菜様が…!」

「何ぃ!? 鯉菜じゃと!?」

「…おい、狒々と朧車は外にいんのか?」


じいちゃんとお父さんに続き、ボクも席を立って庭に出る。そこには朧車と、横たわる狒々を診る鴆くんがいた。朧車と狒々に事情を聞けば、風を操る妖怪が来たとのこと。


「鴆…ワシぁ、鯉菜嬢がほとんど治療してくれたから大丈夫じゃ。だから早く嬢ン所に行ってやってくれ…。」

「確かに…ほとんど治ってるな…。」 

「三羽烏、俺も狒々の屋敷に連れてってくれ」


鴆と父さんを背に乗せ、三羽烏が狒々の屋敷へと飛び立つ。てっきりサボタージュしたのかと思ってたけど…狒々の所にいたのか。
あれ?何しに行ってたんだ。やっぱサボタージュ?


「総大将…今回は助かったぜ、偶然とはいえアンタの指示のおかげでなぁ…」


キャハハっと力なく笑いながら言う狒々に、じいちゃんは何言ってんのコイツ的な目を向ける。可哀相だからやめてあげて!!


「…ワシは何もしとらんぞ?」

「照れんなよ。総大将がワシの元に鯉菜嬢を遣わしたんじゃろ?」

「えっ、そうだったの? じいちゃん」


なんだ…バックれたのかと思ってた。


「そんな事しとらんぞ。アイツぁ総会に出るって言って、そのまま姿を消したんじゃ。」


あれ…なんかオカシイことになってるぞ。両者の話がかみ合わないことで沈黙が訪れる。


「じゃあ、鯉菜様は何故このタイミングで狒々の所に…?」


沈黙を破ったカラス天狗の疑問に、答えるものは誰もいない。誰もいないが…考えることは皆一緒だろう。




(「狒々が襲われる事を・・・知っていた・・・?」)
(「でも、どうやって・・・」)
(「偶然か…否か…」)




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