▽ 嘘吐きでごめんね。
「ほんと…何やってんだボク……」
晴れで気持ちのいい天気に反して、ここにドヨーンとしてる奴が1人。
「カナちゃんは妖怪嫌いなのに、どんな嫌がらせしてんだボクは〜!?」
『りっくんやーい。路上でそんな一人大声出して…悪目立ちしすぎだよ〜。』
「もっと違うやり方あるってー!!どうしてボクは夜になると冷たくなっちゃうかなー!!」
『そしてそこがまた痺れる!!女子にとって!!』
「どうしよ〜姉ちゃん!!」
『どうしようって言われても…
ねぇ?カナちゃん?』
「は、はぁ…おはようございます?
リクオくんも、おはよう。」
急に現れたカナちゃんに後ずさるリクオ。かなり挙動不審だ。
「かか…カナちゃん!?昨日はごめ、あ、いや…」
危なっかしいなぁ。よく今ストップしたね。もう少しで同一人物ってバレるところだったよ。
慌てて口を押さえるリクオを横目に見ながら、自分の鞄の中からある物を取り出す私。
『あ、そうだカナちゃん。これあげる。』
「えっ…何ですか?これ…」
『鏡とお菓子。昨日割っちゃったでしょ?
だから責めてものお詫び。お菓子は誕生日プレゼント。カナちゃんが前行きたいって言ってたお店のところの…。』
え、昨日の今日でいつ買ったのかって?
ふっふっふ…実を言うと化猫屋には雑貨が少し売っていてね。昨日帰る前に見てたら、可愛い鏡を見つけたもんで、即買いッスよ!!
お菓子はお店が朝早くから開店するから、今朝ダッシュで行ってきた。
「わぁ!可愛いっ!!和風な柄だ〜!お姉さん、ありがとうございます!!お菓子までくれて…ホント嬉しいです!!」
良かった〜喜んでくれて。相手が喜んでくれたら、こっちも嬉しくなるよね。あぁ、癒される。朝頑張ってよかった…。
「あっ、リクオくん…はい。
これ、捩眼山で拾ったの。」
そう言ってカナちゃんが渡したのはリクオの眼鏡。お前…何故気付かなかったんだ。いくら伊達メガネとはいえ、普通気付くだろ。毎日学校にかけて行ってるんだから。
「リクオくん。あなたに聞きたいことがあるの。今までの行動とか思い返してみて…私思ったんだけど。リクオくんがいると…あの人がいるの…」
リクオ…大丈夫かな、汗が滝のように流れてるけど。脱水症状起こすんじゃね?後でポカリを買ってあげよう。…何て親切な姉なんだ私は。
「もしかして…リクオくん……
あなたと…あの人…」
次の瞬間、ガシイっとリクオの手を掴むカナちゃん。
「お友達なんでしょ!?」
その言葉に、そうきたかー!!と衝撃を受けるリクオっち。にしても恋する乙女は凄いな…カナちゃんが必死に、彼に会わせろ!!って詰め寄ってるよ。リクオ、モテモテだなぁ。
『リクオはカナちゃんのことどう思ってんだろう。好きじゃないのかな……?』
大切な人とは思ってるみたいだけど、そこに恋愛感情はまだないように見える。漫画じゃ番外編でつららとキスしようとしてたよね…。
そこでチラッと、電柱からリクオを観察してるつららに視線をやる。あぁ、せっかく可愛いのに…それじゃあストーカーだよ。
『…そんな遠くから見なくてもいいのに。』
「ふええええ!?お、お嬢!?いつからそこに!?」
ポンとつららの肩に手を置けば、凄い勢いで驚かれました。ちなみについさっき来たところです。
「こ、これは、望遠鏡じゃありませんよ!?万華鏡を楽しく見てただけです!!勘違いしないで下さい!!」
その嘘は無理があるんじゃね?
そう言おうと口を開くが、既にそこにはつららはいなかった。どうやらほっぺを膨らまして逃げたらしい。
『…あれ、もしや私怒らしちゃった?』
「いや…放っておいて構いやせんでしょう。」
倉田こと青田坊に一応確認してみる。アンタら何気に仲いいからな…青がそう言うなら大丈夫か。
そんなこんなで、
今日は1日何事もなく学校が終わり、無事に家に帰る。
「おかえり、鯉菜。丁度いい所に来た」
『ただいまお父さん。何?』
手招きするお父さんに黙って着いていく。
着いた先はお父さんの部屋。ちょっと待ってなと言って部屋に何かを取りに行ったんだけど…長くなりそうなら先に鞄を部屋に置きに行きたいな。
そんなことを内心思っていれば、あったあったと言いながら戻ってくるお父さん。
「ホラよ。
新しいのをカラス天狗に頼んで取り寄せたぞ」
『…護身刀!? え、カラス天狗仕事はやっ!』
「いや、結構使い込んだし替え時じゃねぇかって既に取り寄せてたらしいぞ。」
『そーなんだ。ありがとう、お父さん!』
「おう。…祢々切丸みてぇな妖刀があればいいンだがなぁ。なかなか見つからねぇんだよこれが。」
『あぁ、祢々切丸は斬られちゃたまんないけど、斬る分にはいい刀だよね。斬ったら相手の妖気がスポーンて抜けるんでしょ?』
「スポーンて程じゃねぇがズバーっと抜ける。」
「いや、ドバっと抜けるんじゃよ。ドバっと。」
あっ、じいちゃんだ。
ついでにカラスもいるじゃあないか。
「そこはどうでもいいでしょう…」
『最もだ。あ、そうそう…護身刀ありがとうね、カラス天狗。助かるわ。』
「いえいえ。当たり前の事をしたまでです。また何かあったら言ってくだされ。」
小うるさいけど、カラス天狗はやっぱ頼りになる。
「そうじゃ、鯉菜。
今晩の総会にリクオと一緒に出なさい。」
「リクオが牛鬼を裁くんだってよ。そんで、三代目候補になることを告げるそうだ。
お前さんも見てぇだろ?」
ニヤッと笑うお父さんに、私もニヤッと仕返す。ニヤニヤ親子だ。や、待てよ…じいちゃんもよくニヤッとするから、これはもうアレだ。ニヤニヤ一族ですな。ニヤニヤ血統族だ。気持ち悪っ。
『もちろん!
弟の成長を見たいからね、喜んで出るわ。
じゃあ私着替えるから…また総会の時に。』
貰った護身刀を持って自室に行き、部屋の隅に立てかけておいた傘、兼、鞘を取る。
『…入るといいけど。』
雲外鏡の時に吸い込まれたのは刀だけだから、これは無事だったのだ。
『おっおっおっ?
お〜!ジャストフィット!!』
同じものを頼んだのだろうか、綺麗に入ったぞ。
にしても、これ本当に便利なんだよねー。雨の日は傘として普通に使えるし、一見傘だからどこにでも持っていけれる。仕込み傘考えた人マジで天才。
『さてと…』
制服から部屋着に着替える。そして、鉄扇と妖銃とある物を持っていることを確認し、おニューの番傘を手に部屋をコッソリと出る。ここ大切だからもう一度言うぞ。コッソリと!!……出〜る。
『朧車…』
「へっ!?お、お嬢!?何して…
あっ、隠れんぼですかい?」
誰もいないことを確認し、ダッシュで朧車に乗り込む私。そんな私にドヤ顔でそんな事を言ってくる朧車だが、残念ハズレだ。
つーか私中3ですから!!
流石に小さい頃みたいに鬼ごっこなんてしませんから。でも面倒だから否定はしない。
『あー、まー、うん、そんな感じ。
ってわけで、今から出てくれる?』
「なっ、それは流石にダメですよ〜総大将に許可を取らな……」
『出ないっつーなら……燃やすわよ。』
悪どい顔で、カチっとライターに火を付ける。
「んなぁー!?やめてくだされ!!」
『バッ…何大きい声出してんのよっ!!
いいからさっさと出ろ!!』
それとも本当に燃やされたいの?とライターの火を床に近付けて脅せば、渋々了解してくれた朧車が動き出す。
周りの者は、私が朧車ん中にいることを知らない。そのため、総会の為に朧車が幹部の者を迎えに行くとしか思ってないようで、全く不審がることはない。
そしてついに、家を出て空を飛ぶ。
『…ごめんねリクオ、お父さん、じいちゃん。』
ポソっと、嘘をついたことに対して謝る。
リクオと共に総会に出たかったのは事実だ。でも出るつもりなかったのも、事実だ。
「どこに行けばいいんですか〜?」
後で怒られても知りませんよ、という声を無視して行き先を告げる。
『狒々様の所に行ってちょうだい。』
朧車を除き、鯉菜が家を出た事を知る者は…まだ誰もいない。
(「ただいまー!」)
(「おぅ、お帰りリクオ。今日の総会、鯉菜も出るってよ。」)
(「本当?良かった〜・・・姉ちゃんがいれば心強いや!」)
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