この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 妖銃

「いらっしゃい。
およよ、ジジイの所の孫じゃないかえ。もうこんな所に来る年になったのかい。いいよ、妖怪ならフリーパスだ。」


お婆さんなのかお爺さんなのかよく分からない妖怪の声がする。ちなみに私とカナちゃんはリクオを盾に隠れている。私も今は人間だからね、多分入れないし。


「こっちだぜ、カナちゃん」


そうー
リクオが連れてきたのは、化猫屋だった。うぇーい。お酒飲むぜ〜。前世で最後に飲んだ時以来だ。何年ぶりだろう!!


「いらっしゃいませー!!」


店員がめっちゃ出迎えてくれる…活気がいいな。元気の良さに圧倒されるわ。


「あれ、若じゃあございませんか!
それに、おじょブッ!!」

「わ…若?」


私を呼ぼうとした店員に、リクオが慌てて口を塞ぐ。ありがとうリクオ。


『はじめまして。鯉菜と申しますぅ〜…』


軽く会釈をして、にっこり笑う。
もちろんただの笑みじゃない。お嬢って呼ぶなよコンニャローというメッセージ性を込めた笑みだ。


「い、いらっしゃいませ、鯉菜…様?」


そう言い直す店員に小声でありがとうと告げる。理解が早くて助かるよ。
その後、席に座った私とカナちゃんはマタタビジュースを美味しくいただく。マジウマこれ。


「名前なんてーの?」

「か、カナ…」


そして今日がカナの誕生日だと知り、場が盛り上がる。マタタビジュースを飲み、今度はお座敷で店員と遊びだすカナちゃん。何だか可愛いなぁ、いーなー、青春だなぁ。


「お嬢はどうです?やりませんか、百鬼花札!」


リクオに断られて、今度は私を誘う良太猫。
お嬢って呼ぶなよな、なんて思いながらも…カナちゃんが聞いてないからいいかっと許す。
私の心は広いのだ。


『んー…また今度お願いするわ。
やり方も分からないし。』

「そーですか、残念です…」


ションボリする良太猫可愛いぜ、猫耳最強!!


『それよりさ、ちょっと聞きたいことあるんだけど…』


ここは酒場だ。もしかすれば、情報ゲットできるかもしれない。


「はい、何でしょう!若とお嬢のお役に立てるなら何でもお答えしますよ!!」

『ありがとう!』


そう言って、自身のスカートをめくる私。


「…っ!? お、お嬢っ!?」

「…何してんだ、姉貴。」


顔を赤らめて照れる良太猫と、私の頭をパアンと叩くリクオ。少し痛い。少し。


『これなんだけど…』


何も露出するために捲ったんじゃない。太腿に装備して隠してる銃をとりだすためだ。


『これについて何か知ってることある?』


その言葉に、失礼します…と銃を手に取って見始める良太猫。何でもいい。何でもいいから情報をくれ。


「これ…もしかして……」


ハッとして顔色を変える良太猫に内心キターーーと発狂する。


「曰く付きの妖銃じゃないですか?」

『妖銃?』

「えぇ、弾を入れるところがない銃なんて普通有りませんしね。持ち主の生命力を奪うって話なんですが…」

『あ、確かにそう言ってた。にしてもこれどうやって使うの?弾入れる場所ないのに。』

「俺も人から聞いたんで、詳しくは知りやせんが…どうも妖力を使うらしいですよ。」


妖力…どんな風に使えばいいんだ!
 

『妖力を…込めて撃つ、イメージ?』

「だと思うンすけど…。あと、妖銃は特徴があって、妖怪によって技が違うらしいっスよ。」 


何それ。どういう意味やねん。
もう少し詳しく説明しろという意味を込めて首を傾げれば、「つまりですね…」と口を開く良太猫。


「水妖怪なら水系の…、火の妖怪なら火系の技が出るって事じゃないっスかね?」

『なーる。』

「おい、生命力を奪うってのは…?」


何度も頷きながら納得する私を他所に、今まで黙って聞いていたリクオが口を開く。


「俺もそこまでは…すいません…。」

『謝らないで。
むしろ助かったわ、聞いて良かった!
ありがとね、良太猫。』


感謝の印に頭をナデナデする。
わー、本当に猫耳が生えてるよ。猫みたいで可愛い。いや、猫の妖怪なんだけどね。前世で飼っていた猫を思い出し、ちょっと寂しくなるわ。


『リクオ、そろそろ帰らない?
明日も学校だし、少しでも寝なきゃ。』

「あぁ、そうだな。」 


寝てるカナちゃんを送って帰ると言うリクオに、カナちゃんが人間だと気づく良太猫。
ニブチンだな〜でもそこがまた可愛い。
若干明るくなってきた空を見ながら、リクオと二人並んで化猫屋を去る。リクオの背で眠るカナちゃんを含んだら3人だけどね。


「あの銃、どこで手に入れたんだ?」

『清継に貰ったのよ。皆で清継ん家にお邪魔したでしょ?あの時に頼んで貰ったの。』

「使うのか…」


…生命力の事を踏まえて聞いてるんだろう。


『使うよ。
使い続けるかどうかは分からないけどね。
…それより番傘、どーしよー。お父さん怒るかな…失くしたって知ったら…』

「怒らねーだろ………………多分。」


その微妙に長い間と「多分」という言葉に気が重くなる。



カナちゃんを送って帰宅後、
部屋まで歩いていたらお父さんに遭遇した。


「親父、まだ起きてたのか。」

「あたりめえだろ…子供が二人揃って帰って来やしねぇんだ。心配しねぇはずがねぇだろ。」


あっ、珍しく本気で怒ってる。
激怒って程じゃないけど。おこ〜激おこレベルかな。


『お父さん、ごめん…番傘、なくしちゃった。』

「…番傘?」


下を向いて謝る私に、お父さんが眉をしかめる。そんなお父さんの言葉に、私の代わりにリクオが事情を説明してくれた。なんて優しい弟なんだ。


「あぁ、学校で雲外鏡って言う鏡の妖怪が出てな。そいつに刀を飲まれたらしい。」


その言葉に沈黙が訪れる。何この空気ツライ。泣くぞ、泣いちゃうぞ、いや泣かないけどね。


「鯉菜、よく身を守ったな。」


その言葉と共に、頭に手が置かれるのを感じる。顔を上げれば、お父さんが微笑んでいた。


「刀や武器は…自分や大切な人の身を守るためにあるんだ。今回、お前は自分の身を守ったんだろう?それで刀がなくなったンなら上等じゃねぇか。また新しく用意すりゃいいんだから…そんな小せぇこと気にすんな。」

『…っ、あ、ありがとう…』


何か…恥ずかしい!
あまりの恥ずかしさに、つい目を逸らしてしまう。目を逸らすどころか、顔を背けるレベルだけど。
だがー
この恥ずかしさもすぐに飛ぶこととなる。



(「そんな事よりもよぉ・・・二人してどういう事だい?こーんな遅くまで、連絡もなしに何処ほっつき歩いてたんだ?ん?言ってみ?」)
(「痛てててて!!」)
(『痛いーーー!!』)
ニコニコ黒い笑みを浮かべるお父さんに、姉弟揃ってほっぺを抓られました☆




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