この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ うん何とか鏡。

『お待たせー…って、あらら。』


掃除を終え、駆け足でカナちゃんの教室に行ったけど急がなくても良かったようだ。机に突っ伏して寝てる。しかも爆睡。


「う…ん…」


起きたのかと思い、顔を覗いてみるが寝ている。いや、正確にはうなされている。起こした方がいいのかな…それとも寝かすのが親切!?
…よし、話し掛けて起きなかったら放置しよう!


『…カナちゃん。おーい、カーナちゃーん…起きてー…ってうおぉい!!?』


びっくりしたーーーー!!
急にがたーんって勢い良く立つんだもの!!あともう少しで私の顔面とカナちゃんの頭が激しい出会いをするところだったよ!!


「…っお姉、さん…!」

『カナちゃん、待たせてごめんね?
…今日は寄り道しないで、やっぱり早く帰ろう。家まで送るから。』

「あ…は、い…ありがとう、ございます」


よっぽど例の夢が怖かったのだろう。顔面蒼白で震えている。やっぱ一緒に帰る約束してよかったかも。


『じゃ、帰ろうか!!』


少しでも安心するように、ニッコリ笑ってカナちゃんの手を引く。さてと…リクオが助けに来るまでは私がカナちゃんを守ってやりますか!!





そして、時は夕暮れ…逢魔が時。
カナちゃんと並んで帰っているのだが…どうやら奴さんのお出ましのようだ。


「…駅までって、こんなに遠かったっけ…」


ボソッと呟いたカナちゃんの顔色はどんどん悪くなる。うん…さっきから同じ道歩いてるもんね、流石に気付いちゃうよね。


『…カナちゃん、引き返すよ。』


そう言ってカナちゃんの手を引き、階段を駆け下りる。…たった今登ったのにコンチクショーめ。これなら登るんじゃなかったぜ、無駄な体力を消耗した。


「な、何あれ!夢でみた…っ」

『ん?』


後ろを振り返りながら叫ぶカナちゃんにつられ、私も後ろを見る。…なんじゃありゃ。
いやまぁ、漫画で知ってたけれども。知ってたけど…実際に見るとめっちゃシュールやないかい。


「カナちゃぁぁあん誕生日おめでとうぅぅ」


遊びに来たよぉ〜と言う鏡の妖怪に、カナちゃんは悲鳴を上げる。


『…何で鏡が自転車に乗ってんだよ。
しかもサイズが合ってなくね?』

「ちょっ、お姉さん…!!
そんなことより早く逃げなきゃっ!!」


うおっ…今度は私がカナちゃんに引っ張られる。速くて階段を転び落ちそうです。


『!!
カナちゃん、待って!!』


そっちには鏡が…!!
だが、私の注意は間に合うことなくー


「逃げ…られないよ」


鏡の妖怪の能力のせいで、一瞬にして出た筈の学校に戻る私達。


「えっ…」

『っカナちゃん!!』


つぅか出す場所が階段とか、最悪だ。
カナちゃんを引き寄せて、頭を抱き寄せる。頭を打ったら大変だ。そしてそのまま成すべくなくゴロゴロと階段を2人で転がり落ちた。


『いってぇ…カナちゃん、怪我ない?』

「…足をくじいたぐらいで、後は特に…。お姉さんこそ大丈夫ですか!?私を庇って…」

『大丈夫。あちこち痛むけど、大したことないし。それより、走れる?また、おいでなさったようだけど…』

「ぅう…カナちゃん、鏡の中…鬼ごっこぉ」


鏡の中から現れる妖怪に、またもや泣き叫ぶカナちゃん。彼女の手を引っ張り、校内を走りまわる。地獄の校内鬼ごっこの始まりだ。


「!!
お姉さん、こっち!!」


バタバタとあちこち走り回っていると、カナちゃんが理科室を指さした。考える暇もなくそのまま理科室に入り、息を整える。


『あ、カナちゃん。
悪いけど、その手鏡割らせてもらうよ。』


視界に入ったカナちゃんの手鏡を勝手に取り出し、番傘を構える。


「えっ…どーして…」

『相手は鏡の妖怪。
鏡を利用してこちらに来るわ。』


だからゴメンと言いながら、手鏡を割る。
これで時間稼ぎになったのではないか? カナちゃんのこれからの恐怖を半減出来るかもしれない…


「カナちゃん…この部屋、鏡ないよ…」

「ひぃっ!」

『な…そんな! どこから…!?
…あっ。』


人の鏡を割っておいて自分のを割ってなかったわ…。すんまっせんでした!!
慌てて番傘を振り落としたが間に合わず、カナちゃんと2人でどっかの男子便所に瞬間移動させられた。これじゃあ原作通りじゃん、ガチで。
にしても…


『この能力があったらさ、一瞬で学校に行けて便利だよねぇ。満員電車とお別れだ。』

「そ、そんな悠長な事言ってる場合じゃないですよぉおお!!!早く…逃げなきゃっ…!?」


再び走り出そうとするカナちゃんだが、バッグの中から出てきた変ちくりんな人形に体が強ばる。
え、何それ。趣味ワル…。
すると、途端にその人形がブルブルと震え出した。


「いやぁあぁぁあ!!これも妖怪ぃー!?」


それは妖怪じゃないだろうなんて思いながらも、冷静に状況判断をする私の脳。震えるカナちゃんに、そしてまたもや出現する鏡の妖怪、か。
そういえば何だっけ…コイツの名前。うんが・・・鏡?なんか違う。


「カナちゃん…そこにいるのぉ…」

『さっきから思ってたんだけどさ、アイツ私の存在をガン無視してるよね。どう思う?カナちゃん。』

「お姉さん…もう私達…」


どうやらの私の疑問に答える余裕もないようだ。
諦めて絶望的な顔をしだしたカナちゃんの前に、さっきのブルブル震える人形を持っていく。


「な…!? お姉ぇさ…!!」

『落ち着いてカナちゃん。これ、多分電話だよ』

「えっ…?」

「ガーガーズピー…家長さん、きこえるかい?
驚いたかね?実はこれ清十字団の通信機になってるんだよーん」


通信機か。
つか…だよーん、じゃねっつの。


「清継くん!?助けて、今鏡の妖怪に襲われてるのー!!学校の…どこかの男子トイレにいるから…!!」


助けを求めるカナちゃんに、電話越しにゆらちゃんや清継達が慌てているのを聞き耳立てる。きっと原作通り…ゆらちゃん達には見つからないだろうなぁ、私が時間稼ぎして何とかするっきゃないよなぁなんて思いながら、私は番傘から刀を引いた。


『さてと、時間稼ぎくらいはさせてもらうよ…』


刀の切っ先は、変態ストーカー鏡野郎だ。




(「お姉さ・・・」)
(『危ないから後ろに下がってなちゃい。』)
(「…………(不安だわ…)。」)




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