この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ デキてませんから!

「奴良、お前…成績は優秀なのにどうしてそんななんだ?」

『先生、そんなって…酷くありません?』


学校に昼過ぎに着き、担任の坂本先生とトークなぅ。酒の臭いを取るのに大分時間とボディソープを浪費してしまった。


「君の弟くんのおかげで3年になってからは遅刻がなかったのになぁ…何で今日はまた?」

『父と池で酒浴びしてました。』

「何それ楽しそう。ちなみに何酒?日本酒?」

『さぁ…妖銘酒だった気がします。』

「養命酒?お父さん、健康を気にしてんのか。」

『いえ、その養命酒じゃありません。
つーか健康を気にする人が朝っぱらから酒浴びする筈ないですよね。』

「そーだな。今度そのお酒少し分けてくれよ」

『イイっすよ。
その代わり…今日の遅刻はノーカンで。』

「カーッ!教師に条件付けるたァ…やるなぁ!奴良は!!はっはっはっ」

『こういうのは持ちつ持たれつですからね』

「お前がそれを言うか?」


坂本先生ははっきり言って超適当だ。
私がサボっても、特に何も言ってこない。というのも…実を言うと私がある意味真面目なことを坂本先生は知ってるからだ。私はどの授業もサボってるわけではない。私が得意な英語と日本史、あと理科の暗記部分だけ基本サボるんだ。授業を面白くやるなら出るけど、つまんなくて時間の無駄だからね。それだったら家でやるわ!みたいな?
逆に、苦手な社会、数学、非暗記の理科、古典はちゃんと授業に出ている。


『先生、私…真面目だと思いません?』

「世間はそれを真面目だとは認めないんだよ」

『辛いですね…』

「あぁ、辛い。テストの採点辛い。
奴良、手伝ってくれねぇか?」

『…報酬は?』

「お菓子。」

『頑張ってください。先生。』

「奴良ぁぁあ!!俺を見捨てないでくれぇえ!!」


廊下に膝をついてこちらに手を伸ばすが…知らん!!菓子ぐらいで私がそんなめんどくさい事するかぁ!!てか生徒に採点させんなや!!
ちなみに、この日常茶飯事な光景が鯉菜の〈教師を操る〉という噂の元だったりする。


『あ、カナちゃんだ』


嘆く坂本先生を捨て置いてブラブラと歩いていれば、カナちゃんに遭遇。にしても偉い人気者だな、カナちゃん。めっちゃ人に囲まれてんじゃん。


「誕生日おめでとー!カナちゃん」

「おめでとう!!はい、これプレゼント!!」

「みんなありがとう!!」


oh......ナントイウコトデショウ。
まさか今日が誕生日だとは…。プレゼント用意してないぞぅ。


「あ、お姉さん!こんにちは〜」

『こんにちは、今日誕生日だったのね。
おめでとう!…ごめんね、知ってたら何か用意してたんだけど。』

「ありがとうございます、その気持ちだけで充分ですよ」


まぁ、なんていい子なのでしょう…!
でもそんないい子にはプレゼントしたくなっちゃうから、今度何か贈ろう。
それにしても…


『…大丈夫?顔色があまり良くないわ』

「え、あ、最近夢見が悪くて…」


…夢見が悪い?何か引っかかるな。


『そう…何か思い当たる事でもある?
相談に乗るわよ?』

「思い当たること…ってワケじゃないんですけど…。小さい頃からよく見る夢なんです。お化けみたいなのが、大きくなったら遊ぼうって…」


あっ、思い出した。
鏡のやつだ…そんでリクオと一緒に呑みに行く的な話だったはず。


『…そうだ!
今日一緒に帰らない?せっかくの誕生日なんだもの、何か美味しい物食べに行きましょう!もちろん、私の奢りで!』

「え…ええ!?そそそそんな…悪いです!!」

『気にしないでって! 甘い物、好きだったよね?リクオの大切な友達は、私の大切な友達でもあるんだから。家まで護衛してってあげる!!』


私、こう見えて強いんだから!!
って言えば、じゃあお言葉に甘えて…って照れながら了承してくれました。
可愛いのぅ。癒されるのぅ。
じゃぁ放課後そっちに行くねーと別れて、自分の教室に向かう。


「あれ?噂に聞いていたイメージとは違う…」 

「本当にあれが鯉菜先輩…?」


というカナちゃんの周りにいた子達の言葉が気になるけど、ひとまずここはスルーだ。


『次は…大大大嫌いな数学だ。』


ちゃんと授業に出とかないと、着いていけない。サボってても成績良いならOK。成績悪いのにサボるのは私のポリシーに反するのだ。前世はどの授業にも出てたけどね、親も学校も厳しかったし。


『はぁ…何か学生を満喫してますなぁ私。』


サボリとか憧れてたんだよね!うん!楽しい!


「あれ?奴良、次は数学だろ…サボるのか?」

『サボりませんよ、坂本先生。数学は嫌いだからちゃんと出席します。』

「だよな。
…普通、逆なんだけどな。嫌いだからサボるんだけどな。」

『先生も昔サボってたんですか?』

「おぅ。俺はなぁ…得意不得意関係なく、全部均等にサボってたぞ!!」

『そこ、親指立てて話す内容じゃありませんよね』

「博愛主義だ。偉いじゃないか。」

『嫌全主義の間違いでしょ。』

「え?なに?けんぜん?」

『全て嫌いで嫌全主義。あれ?全嫌主義?』

「どっちでもええわ!
つーか早く行け。授業始まるぞ。」


はーい、と返事をして教室に向かう。今日は授業が終わったら忙しくなるなぁ…だなんて思いながら席に座る。…廊下で新たな噂が作られているのに気付かずに。


ーーーーーーーーーー
(「ねぇ!今の聞いた!?」)
(「聞いた聞いた!坂本先生が博愛主義だって言ってた!!」)
(「それに奴良さんは健全主義だって!!」)
(「朝は坂本先生が見捨てないでって言ってたらしいし・・・」)
(「しかも奴良さんはそれを無視したって言うし・・・」)
(「「あの二人・・・出来てるんじゃ!?」」)




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