この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ


▽ 女子力

「鯉菜様は人質として捕らわれていた身…
故に、何か分かったことでもあるのでは?」


木魚達磨に話しをするように促される私。


『いや…特にないっスね』


何か言ったらボロが出そうだし、ここは何も意見しないのが賢明かな?


「特に…と言うことは、実はあるのでしょう?
どんな小さな事でも構いませんので、考えを聞かせてください。」


おっふ…もう既にボロが出たーーーー!
牛鬼は私が何か言うのを待っているようで、こちらから視線をずらさない。人と視線をあわすのすっごい苦手だから早く目を逸らして欲しい。
…いやこれ私が逸らさないと無理じゃね?
頭の中でさっきからずっと「見つめあーうとー♪」って歌が離れないんだが…。
 

『はぁ…』


もうギブアップです、はい。
牛鬼のおじ様の眼光に負けました。ダンディーなのに怖い!でもそこが痺れるぜっ!!


『これは…奴良組に売られた喧嘩じゃない。』


その言葉に何人かは眉を寄せ、また何人かは無表情で私の次の言葉を待つ。


『リクオに売られた喧嘩よ。
だからさ……もう放ってていいんじゃない?』


…シーン。


えっ、何この空気、辛いからやめて!
だから私に意見を求めるのは間違いだったんだって!


「「「「はあーーーーー!?」」」」

『うわっ、びっくりしたぁ…!』


何ィー!?とざわざわ騒ぎ出す皆に、内心物凄く焦る。 え、私のコメント駄目だったの!?


「何を言ってるんですか鯉菜様!」

『何って…リクオが喧嘩売られてるんだから、リクオ本人が片付けるべきでしょ…。違うの?』


どうでもいいけど木魚達磨のヒゲってナマズみたいだよね。


「酷ぇ姉貴だねぇ…まるでリクオ様を気に入らないかのような口ぶりじゃねぇか」

『…? どうしてそうなるの、一ッ目。』

「あぁ?リクオ様を狙ってる奴を野放しにしとけって鯉菜様は言うんでしょう?」

「それじゃあまるでリクオ様の三代目失脚を狙ってるみたいですねぇ…」

「本当ですなぁ…もしや、三代目の座を鯉菜様は狙ってるのでは?」

「じゃあ、今回の首謀者にも関わっている可能性が…恐ろしい娘ですなぁ。」


た、確かに…私の発言はそう取られてもおかしくはない。つーかお前らのタッグすげぇな。息ピッタリだ。でも残念ながら私は3代目の座に興味はないし、むしろ絶対に座りたくない。だって痛いの嫌だもん!…なんてこと口には出せないけど。


『確かに貴方達の言う通り、そう思われても仕方ないわね。でも私の考えは貴方達のものとは逆よ。リクオに早く三代目を継いで欲しいからこそ、放っとけって言ってんのよ。』

「…と言いますと?」

『リクオが今までに覚醒したのは3回。
いずれも友達や仲間が危ない目にあっている。そして…昼のリクオと夜のリクオは近付きつつある。』

「…近付いてる?どういうことだ?」

『鴆、さっきのリクオの反応を見て何も思わなかったの?どうせ覚醒した時のことを覚えてないんだろって言った時、リクオは肯定しなかったわ。』

「! だが、否定もしてねぇぞ…」

『誰だって戸惑うでしょう?知らない存在や力が、自分の中に眠っていたら。』


唸る鴆に、私を怪しむ一ッ目パーティ、そして何を考えてるのか全く分からない牛鬼…。
ここは少し…踏み出してみるか。


『私は…むしろ今回動き出してくれた人に感謝しているわ。彼は奴良組を大切に思っているからこそ、全身全霊をかけてリクオにぶつかってくれている。』

「…〈彼〉、じゃと?」

「お前…知ってんのか?
誰が裏で糸を引いているのか…」


今まで口を開かなかったじいちゃんとお父さんが、ここで初めて会話に入ってくる。


『…そうね、知ってるわ。』

「誰なんですか!?」

『言うわけないじゃない。』

「何ですとーーーーっ!!??」


クスッと笑いながら、私は続ける。


『言ったでしょう?
三代目をリクオに継いで欲しいなら、放っておきなさいって。』

「しかし…
もし仮に、リクオ様の力が及ばなかったら…!」


それは確かに少し不安に思っている。原作では大丈夫だったが、私やお父さんの存在でもしかするとズレが生じるかもしれない…。
でもその時には、後ろからちょちょっとフォローしようかなぁなんて…アバウトに考えているわけですわ。


『…なめないでくれる?
あの子には4分の1も妖怪の血が流れている。そう簡単にやられないわ。』

「もし、若が殺られてしまったら…?」


おい…それをアンタが聞くか、牛鬼。
いや違うか…私が全て知っているのだという提で、敢えてそれを聞いているのだろう。「お前はどう動くのだ」「何を考えているのだ」と牛鬼は裏で問うているんだ。
でもそれは実際に自分の目で見ればいい。
今はせめてもの忠告をしておこう。


『そうね、その時は…』


牛鬼、あなたを…


『私の手で、殺してあげるわ。』


自害なんかさせてやるもんですか!…そう意味を込めて、ゆっくりと言う。
話の内容に、部屋の空気が重くなる。これ以上ここにいるのは危険だ…いつボロがでるか分かったもんじゃない。でも早く出たいのに誰も口を開かないから出られない!
だが次の瞬間…



「「えええええええええ!!!!!」」


屋敷中に響き渡る声。
何だ何だ何だ!?
ナイスタイミングだけど…何今の、誰!?
屋敷中に響いたぞ!重い空気が一気にパーンて弾けとんだぞ!誰か知らんがグッジョブ!


「奴良のお姉さんって…あの鯉菜先輩!?」

「あの例の噂の!?」


ちょい待て。何だそれ。グッドジョブじゃなくてバッドジョブだったかもしれない。
さっきとは別の嫌な予感が一気に湧いて来たぞ。
つーかお前ら騒ぎ過ぎだろ。リクオの部屋からここまで声が筒抜けだぞ。そしてお父さんがさっきからニヤニヤしてこっち見てくるのが無性に腹立つ!


「成績優秀なのに素行不良なあの先輩!?」


否定はしない。ずる休みしまくりだもの。


「教師を2人手懐けたあの先輩!?」


…否定は、できない。でも事情があるんだよ!


「何人もの男子生徒をSMプレイでパシるあの先輩!?」


なんだそれえええええ!!!
ちょっ…止めて、思い当たる節があるけど!
でも微妙にそれ違うから!止めて!広間の皆もその視線やめて!お前何してんの?って視線向けないで!


「告白してきた男子生徒を全員〈興味ない〉の一言で片付ける…あの、鯉菜先輩!??」


席を立ち、メロスもびっくりなスピードでリクオの部屋へダッシュする。


『はぃぃそこまでぇぇええええええ!!』


勢い良くすぱーんと戸を開けたら、興奮気味な女子生徒二人を発見。あの二人は確か…うん、名前忘れた。
お邪魔してますと挨拶をしてくるカナちゃんや清継コンビをよそに、初対面な二人は慌てふためく。


「えっ、あ!初めまして鯉菜先輩!
私、巻紗織と言います!」

「私、鳥居夏実です!」

『あ、よろしくぅー。
リクオの姉の奴良鯉菜と言いますぅー。』


って何穏便に自己紹介してるんだ私!


『ね、ねぇ、さっきの噂…あれ、何?』


恐る恐る聞けば、恐れていた返事が来る。


「え、鯉菜先輩の噂ですけど。」

「有名だから、大抵の人は知ってますよ〜」


パンナコッタ!
慌てて噂について弁解しようとすれば、清継がゴールデンウイークの予定について話し始める。結局噂についての誤解は解けず、私もゴールデンウイークの旅行に参加することで話が終わった。
そして賑わうこと数時間…
清十字団が去り、リクオの部屋に静寂がかえる。
それにしても…あぁ、牛鬼編に私も強制参加でっか!うへぇ〜だなんて思いながらも、噂の誤解はその時に伝えようと計画立てる。


『…取り敢えずリクオ、その重たそうな氷を退けてやろうか。』

「…うん、そうしてくれると嬉しい。」


ゴールデンウイークまで後少し。ちゃんと心の準備をしていかないと…。





(『お前、バランス能力いいな・・・』)
(「・・・それ褒めてるの?」)

ーーーーーーーーーーーー
広間にて
(「あいつ・・・学校で何してんだ?」)
(「教師や生徒を操るのか・・・」)
(「ある意味、妖怪の素質はありますなぁ」)
(「にしても・・・SMプレイとは・・・」)
(「女子がそのようなこと・・・」)
(「鯉菜様は女子力というものを教えた方がよいのでは・・・?」)
(「「「「確かに・・・」」」」)




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