この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ ネギの使い方

『んっ…』


陽の明かりで目が覚める。
明るさからいって、大体9時10時ぐらいだろう…。完璧寝坊した。まぁ、いいか…たまには。
授業をサボったり、途中で無断下校することはあっても、3年になって欠席はしたことない。リクオと一緒に強制登校させられるからだ。だから1日くらい…ね!


『久しぶりのズル休み〜♪』


嬉しくて、ニヤニヤしながら寝返りをうつ。


「ちゃんと欠席の連絡したからズル休みではねぇぞ。」


急に降ってきた声に目を開けば、目の前にお父さんが胡座をかいて座っているではありませんか。


『うっわ!!いつからいたの!?』


ガバッと起き上がり聞くと、おい…と私の胸元を指差すお父さん。下を見れば着崩れて少しセクシーな格好になっている自分。もちろん慌てて布団で隠した。
…つーか、どこ見てんのよ!(青木さやか風)


『なになに。
人の寝顔をジロジロと胡座かいてガン見してたの?趣味悪過ぎて気持ち悪っ!』

「人を変態みたいに言うな。」

『いはいいはい(痛い痛い)!』


頬をギリギリとお父さんに引っ張られるが、涎が垂れそうだからやめて欲しい。


「…具合は?まだ痛むか?」

『めっちゃジンジンしますよ?おかげさまで』 


自由になった頬を摩りながら、嫌味を込めて睨む。自分で痛めておきながら「痛むか?」って…どんなドSだよ。


「ちげえよ。昨日の怪我の具合だ。」

『…あぁ。忘れてた。
そういえば、あんま痛くないな。…お父さんが治してくれたの?』


お腹と頭を散々殴られて蹴られたんだ。あれだけやられて痛みが無いのはおかしい。絶対この親バカが治癒の力をつかったに違いない。


「まぁな。
本っ当、手のかかる娘だねぇ?
あーんだけ口を酸っぱくして言ってたのに…どこの誰だい、護身刀を忘れた馬鹿娘は?」


頭をワシャワシャ撫でだしたと思いきやピタリと止まり、そして徐々にその手に力が入っていく。


『はーい…って痛い痛い痛い痛い!
指先に力が入りすぎ!痛い!米神にジャストフィットで痛いです!ごめんなさい!申し訳ございませんでしたっ!以後気をつけますぅううう!』


叫びに近い謝罪にようやく解放してくれたが…もうアレだね。治療してくれたことへの感謝の言葉は言うまい。


『あー疲れた…ん?』 


あまりの痛さに頭をマッサージしていれば、また人差し指でこっちを指差すお父さん。
…どこ見てんのよ!
何回青木さやかを召喚させる気だ!
無言でお父さんの顔面に枕をぶち当て、支度をしに部屋を出る。支度と言っても洗顔とか着替えだけなんだけどね。


『あれ?リクオは?』


着替えを済ませた後、居間にていつもより遅い朝食を食べながら見かけない姿について聞く。


「リクオなら熱で寝込んでるわよ?
伝染されないように気を付けてね、鯉菜。」

『ほーい。』


馴れない出入りに知恵熱が出ちゃったのね!
…と笑顔で言うお母さんは色んな意味で最強かもしれない。
そんなことを内心思いながら、朝食を簡単に済ます。そして食器を片付けた後、取り敢えずリクオの部屋へと向かうと…


『リっクオ〜…って、また出たか。
いつでもどこでも現れるねぇ。』

「人をゴキブリみたいに言うな。」

『あら、結構熱が高いのねぇ。』


またもや現れるお父さん。
そんなお父さんのツッコミをスルーして、寝ているリクオのオデコを触れば、あまりの熱さに心配になる。かなり熱高いじゃないか。
こんな時はアレですな…


『よっと…』

「…ネギ?」


何処からともなく取り出した長ネギをリクオの口に突っ込む。


「待て、鯉菜。何か違うぞ。これじゃあ…リクオの口に植えられたネギって感じがする。」

『じゃあ何処にさせばいいの?』

「…さすのか?ささないとダメなのか?」

『え…さすんじゃないの?だって他にどうすんのよ。持たせても意味ないでしょう。』

「確かに…持っても効果なんか無さそうだな。
でもさすのは違うんじゃねーか?
だってさす場所なんて…ぶっちゃけ口と肛門しかねえだろ。」

『…大丈夫、私ちゃんと目も耳も塞いでおくから!BLだなんて思ってないから!』

「…びーえるが何か分からねえが、お前がロクな事を想像してないのは分かるぞ。」

『いっ!地味に痛いっ!』


ネギで頭を叩かれたなう。
ちなみに、結局ネギはリクオの手の中におさまることになった。


「あっそうだ…今日総会があるんだが、お前さんも出席しろよ?」

『え、何で。』

「何でってオメー…人質にされてて現場に居たんだぜ?情報提供のためにも絶対に参加しろよ。」

『別に為になるような情報なんかないけどねぇ…
まっ、しょうがないか。』


取り敢えず、牛鬼の策略だってことはバレないようにしなければ…。原作をあまり変えたくないし。


「…なぁ、鯉菜。」


総会について考えていれば、声をかけてくるお父さん。真剣で…なおかつ、探るような顔をしている。嫌な予感がビシビシだぜ!やめておくんなんし。


『…ねぇ、お父さん。』


もしかすると、おじいちゃんが私の事をお父さんに言ったのかもしれない。口止めしたけど、それをお爺ちゃんが了解したかは怪しいし。


「…なんだい?」


もしそうだとしたら、厄介だ。


『やっぱりさ…間違ってるよ。』 


特に、おじいちゃんとお父さんがタッグを組んだら…逃げることはほぼ不可能になるだろう。あの2人はぬらりくらりしてるくせに、頭の回転は早い。


「…何が間違ってるって言うんだ?」


だから、お父さんの前ではもう…ミスはできない。ミスしたら、二人に攻め入られる。


『これ、やっぱり…』


そのためにも出来る限り、シリアスな空気を避けなければならないと思うんだ。


『ささないと!
ネギを手に持たせても意味ないと思うよ?』





(「おま…ハァ〜…もういい。」)
(『よくないよ〜、ささなくちゃ!』)




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