この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ


▽ 彼岸花

晴明との戦いが終わり…はや十年。


『…今日は暑いね、先生。』


残暑の時期…
ミーンミーンと未だ鳴く蝉の声を聞きながら、庭に咲く幾つかの彼岸花を見る。
その手前には先生が大好きだった饅頭とお茶。

ーそう

そこには先生のお墓があるのだ。
だが、お墓と言っても…墓石のような立派なものではない。骨の一部を坂本先生のお母様方から頂戴して庭に土葬し、側に彼岸花を植えたのだ。ちなみに、その一部分以外の先生の遺体は、ちゃんと坂本家のお墓の中で眠っている。


『…坂本母のビンタ…痛かったなぁ…』


事故死でも行方不明にでも隠蔽することができると鴉天狗に言われたのだが、それがなんとなく許せず…結局、一部始終本当のことを坂本家に話した。坂本母に結構責められたが…訴えられることもなく無事に終わったのが最近のことのようだ。…あの親にして子あり…ていう感じの良い両親だったな…。


「彼岸花…今年も綺麗に咲いたな」

『…うん…この間たくさん雨も降ったしね』


ふらっとやって来て、横に立つのは父・鯉伴。
実を言うと…坂本家に謝りに行ったり、土葬したり、彼岸花を植えたり…お父さんが全て手伝ってくれた。リクオやお母さん達ももちろん手伝ってくれたのだが、お父さんが殆ど一から十まで付き合ってくれたのだ。


「…ほら、お前の好きなガリガリ君コンポタージュだ。」

『…私これ嫌いなんだけど。』


ん? 何で彼岸花にしたのかって?
彼岸花の球根には毒があるんだよ…だから土葬した遺体を傷つけられないように、その毒で土の中の害虫を駆除するってわけだ。


『…やっぱこれ不味いわ』

「やっぱこれ美味いわ」

『捨てるのも勿体ないし、坂本先生にやろう』

「それがいい」


ちなみにこれはよくある日常だ。
毎日ではないものの…時々私がここでボーッとしていれば、お父さんも時々やってくる。しかも高頻度で饅頭やあんみつなど…私が苦手な食べ物を持ってくるのだ。そしてそれが嫌いな私は少しだけ齧り…後は先生のところに置く。
…お父さんなりのさり気ない気遣いなのか?
ちなみに、蟻が来ないように袋に入れてるからしばらくは大丈夫だ。

そんなこんなで、下らない話を2人で繰り広げていればー


「お嬢、お客人です」

『…私に?』


首無が困惑したような顔で言ってくる。
どうしたのだろうか…


「清十字団の子達かい?」

「いや、違うんです…。」

『…中学、高校、大学の同級生だった人?』

「それも違います…こ、子供なんです…」


首無の言葉に、一番大きなリアクションをとったのはお父さん。「…産んではねぇよな…じゃあ攫ったのか!?」とか驚いた顔で聞いてくるけど、そんな愚問を本気でしてくるアンタに私は吃驚だよ。

取り敢えず、
思いあたりがないので玄関の方へと向かえば…


『…前方に子供発見。』

「…あれ!? 勝手に上がってるー!?」

「…面白ぇガキだな…」


そこには、辺りをソワソワと見渡す5,6才の男の子がいた。




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