▽ ただいま(リクオside)
「ここは…」
目が覚めれば、知らないところにいた。
どこか幻想的な雰囲気で綺麗な場所…。不思議に思いながらも周囲を歩いていれば、小さな田舎町のようなところに着く。
「妖怪…それに人間も…」
そこには、妖怪と人間が一緒に生活している姿があり…ここが両親の言っていた半妖の里なのだと悟る。
「…おっ、怪我はもういいのかい」
「あなた…すごい怪我だったわよ」
「助かったのが不思議なくらいよ」
「お腹空いてないか?」
ボクの存在に気付き、皆が皆…話し掛けてくる。その皆の言葉に甘えて、家にあがらせてもらい…奴良組に三日後に帰ると連絡をした。
誰がこの空間を造ったのか…
ここにいて幸せか…
妖怪と人間の共存についてどう思うか…
帰るまでの3日間色々な話を聞かせてもらい、そしてあっという間に帰る時が来る。
「今までお世話になりました。」
「また遊びに来いよ」
「アンタならいつでも大歓迎だ。」
「はい! 今度は姉も一緒に、家族で来ます!!」
そうだー
姉ちゃんはどうなったのだろうか…。
半妖の里を去り、久しぶりに浮世絵町に辿り着く。
そして家の近くにようやく来て歩いていれば…
「……お、おかえりなさい! 若」
「あれっ わざわざ出迎えてくれたの?
ありがとう氷麗、ただいま」
氷麗が満面の笑みで迎えに来てくれた。
久しぶりだな…
数週間も寝てたんだから当たり前か。
「どう…? 何か変わったことあった?」
「ちょっと妖怪が増えましたね!
なんだか小妖怪たちがリクオ様の噂を聞きつけてきたみたいで、昔よりもっと妖怪屋敷です!」
「そっか…」
「あっ…
リクオ様は…嫌ですよね、妖怪屋敷って」
意気揚々と話していたのに、急に慌てたようにそう言う氷麗。そんなことないのに…何故そう思うのかと考えたが、原因は自分か。
昔は妖怪屋敷であることがコンプレックスで、皆のことは好きだけど…妖怪が嫌いだったからな。
でも今はー
「ううん、全然。
それでこそボクの家って感じだ。いつも賑やかで…ちょっと怖いやつらばかりだけど…
今日も帰って、また明日出かける場所だよ。」
「リクオ様…!」
話していれば、玄関に着く。
そこには妖怪がずらりと並び、出迎えてくれた。
「三代目!! おかえりなさい!!」
「ただいま」
そして家の中に入ると…
「…相変わらず自由だねー」
遠野妖怪や獺祭らのように、全国から晴明戦で共闘した妖怪があちらこちらにいた。
ボクの快気祝いと鵺討伐記念の宴らしいのだが…
奴良組だけの宴でも凄いのに、全国から集まると凄過ぎるな。
掃除している者もいるのに、たいていの者がもう飲み始めてるよ…。
おじいちゃんや牛鬼、氷麗のお母さん達に挨拶し…カナちゃんや清継君たちにもお礼を言った。清十字団で千羽鶴を作ってくれたのだ。
妖怪屋敷であることを隠していた時は、妖怪だとバレたらもう仲良くできないと思っていたから…正直嬉しい。
姉ちゃんが昔、
『妖怪だと知って友達やめるような奴はそれっぽっちの奴よ。逆に妖怪だと知って…それでも尚友達でいてくれる奴が本当の友達だと思うよ。』
って〈良い奴〉をやっていたボクによく言っていたけど…今ならその意味がよく分かる。当時は全くと言って分からなかったけど…。
あれ…そういえばー
「姉ちゃんが…いない?」
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