▽ 夜の学校
「姉ちゃん!お願いだから一緒に来て!」
『えー…』
はい、皆様こんばんは。
リクオに頼まれて只今旧校舎前に来ております。ぶっちゃけ、超めんどくせぇ。
「皆を危険にさらす訳にはいかないでしょ!?厳重に査定しなきゃ!(コソッ)」
『そっすねー。ぁ、カナちゃん。』
「あ!お姉さん!それにリクオくんも!?」
「カナちゃん!?なんで!?怖いの苦手なんじゃ…」
「う、うるさいな〜いいでしょ!?リクオくんこそ何でよ〜」
痴話喧嘩をする二人を置いといて…辺りを見回す。あ、いたいた。
『やほ。雪女こと…氷麗ちゃん♪』
「はえっ!?ななな…何のことでしょうか!?私は及川氷麗で…ただの人間で…!」
「ん?何を騒いでるんだ?」
『やぁ、青田坊。…いや、今は倉田くんかな?』
「…!いつから気づいておられで?」
『んー…最初から?ガゴゼの騒ぎの後からずっといたでしょ?』
「そんなに前から!?知ってたなら言ってくだされば良かったのにー!」
『ごめんごめん。でもリクオは全く気付いてないから。あっ、今日もしもの時はよろしくね!』
「「はいっ/へいっ!」」
皆が揃ったところで、清継の説明が始まる。簡単に言えば、片道二車線の道路を渡っていくんだが…
『これはこれは…立派な悪行ですなぁ、リクオさん。』
「えっ、いや、僕らは皆を守るために仕方なくしているんだから!悪行ではないよ!」
いや、悪行だろ。どう足掻いても。
自動車道を通り過ぎ、ようやく旧校舎に着いたが…これは不気味だ。妖怪屋敷に住んでる今の私だから全く怖くないけど、前世の私だったらカナちゃん状態だったろうな。
カナちゃんを見ればリクオにピッたんこ状態だ。まぁ、さっき私が『何かあればリクオを盾にしなさいな(笑)』って言ったからだけど。
にしても流石ヒロイン。可愛い格好してくるねぇ。私?私はショーパン+ニーハイ+ロングブーツ+パーカーだ。…私も洒落てね?あっ、すみません、嘘です。ごめんなさい。
『おっ』
美術準備室に入ればリクオが部屋の隅の方に行く。そっち!そこに花子さん的な奴がいるぞ!リクオ!
「……………………」
おい、今そいつと目が合ってただろ。スルーか。
「あ、今私のこと見…
グシャアァァァァ
モ…モガ…モゲ〜〜〜」
『…ぷっ』
女の子…女の子を容赦なく潰した!お前、結局容赦ない所は昔っから変わんないな!
そんなこんなで、
次に給湯室に入ろうとする皆だが、リクオが急に叫びながら飛び出す。
「ダメーーー!」
「な、何すんだよ奴良〜驚かせやがって」
「ご、ごめん。いやーなんか喉渇いちゃって」
その言い訳は無理があるだろう。
だが確かにリクオが止めなかったら、清継と島は危なかったかもしれない。さっきから給湯室の中から
「チィ…喉渇いてたのに、血ぃ…飲みたいのにぃ」
って声が聞こえてくる。給湯室なんだから水かお湯飲めよ。
以後、リクオが先頭を突っ走り暴れまくる。
便器から出てきた妖怪を蹴りまくり、天井からぶら下がる妖怪には容赦ないAN☆PUNCH。
『ははっ流石極道の子だな。』
「わ…笑ってないで…ね…ちゃ手伝って」
『私も頑張ってるわよ。可愛い妖怪探し。』
ゼーハー息を切らしているリクオとは逆に、私はケロリとして答える。三の口とかさ、とにかく可愛い妖怪を増やしたい。そして愛でたい。ちなみに変態的な意味では決してないぞ。
『ん…次の食堂がラストだって。』
「ま、待って!」
食堂へ先に入ってく清継と島に、リクオは慌てて走る。だがもう手遅れだ。部屋の隅の方には犬の死骸を食べている妖怪がいた。
こちらに気付き、ゾンビのように襲いかかってくる妖怪。咄嗟に逃げる清継コンビ。リクオを見るが…覚醒する気配はない。
しょうがない…。
番傘を構えつつ雪女と青に目配せすれば、二人はリクオの元へ駆け出す。これぞ以心伝心ですな。
「リクオ様 だから言ったでしょ?」
「こーやって若ぇ妖怪が…奴良組のシマで好き勝手暴れてるわけですよ」
『つーか護身刀くらい持っとけよ。』
凍らされ、潰されて、斬られる妖怪たち。
残念、君達は全員不合格だ。みんな可愛くない、むしろ不細工だ。
「うせな
ここはてめーらのシマじゃねぇぞガキども」
そうカッコ良く決めた青と雪女に、ゾンビ妖怪たちは情けなくも逃げる。てか1人、美術準備室でリクオに潰された子じゃなかった?お前どんだけタフなんだ。
「若…しっかりして下せぇーあなた様も立派な三代目候補なんですぜ!」
『も、じゃないよ。私は継ぎませんから。』
「…え?な、何?どういうこと!?
だって今君ら学生で…うえ!?」
「だから護衛ですよ。
確か鴉天狗が言った筈ですけど…これからは必ずお供をつけるって!鯉菜様はもうずっと前から気づいてたようですよ!」
「聞いてないぞ!?
てか何で姉ちゃんは知ってるんだよ!?」
『何でお前は気づかないんだよ!?』
そこへひょっこりと鴉天狗が現れる。
あぁ…またうるさいのが来た。
「まったく…心配になって来てみればあんな現代妖怪。妖怪の主になるべきお方が情のうございますぞ」
『そうだぞ、リクオ。頑張りたまえ。』
「だから僕は人間なの!姉ちゃんの方が向いてるんだから、姉ちゃんが継いでよ!」
『断る。私は影でコソコソしたいの。』
「意味分かんないよ!
もう…ぼくは平和に暮らしたいんだー!」
こうして、此度の主催者が気絶しているため、旧校舎の探検はリクオの叫びともに幕を閉じた。
(「ね…まだ目ぇ開けちゃダメ!?まだ怖いー?」)
(「え?あ、うん、もうちょっとかな…」)
(「………」)
(『雪…氷麗ちゃん、落ち着こうか。』)
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