▽ 朝っぱらから元気です。
浮世絵町ー奴良組本家にて
「で?
それのどこが僕らのせいだって言うんだよ?」
「こっちの週刊誌には都市伝説。こっちは河童。そしてインターネッツなるシロモノには〈現代妖怪〉の情報がずらーり!」
『〈現代妖怪〉ってさ…貞子とかいんのかな。』
「貞子か…井戸から出てくるやつだよな。」
『聞いといてなんだけど…お父さん、貞子のことちゃんと知ってたんだ。』
「見てはねぇが…流石に知ってらァ。」
ちょっと意外。
テレビ画面に段々近づいて…あれ最後どうなるんだろう。見てないから知らないんだよね。貞子3だっけ?あれは偶然テレビで見たけど、最早あれモンスターだったよ。ぴょんぴょん飛んでたよ。笑えたよ。
え?そんな話はいいから状況説明しろって?
そうですね、えー…朝から私とリクオが鴉に怒られております。リクオが庭の水遣りをしている一方、私は皆と一緒に朝ご飯を食べております。ちなみにリクオは先に早く起きているので、食べ終わっている。つまりは食後の水やりだ。
「鯉菜様にも関係あるのですよ!?ちゃんと聞いてください!」
何だよ人が貞子について考えていたのに!
鴉天狗のくせに!小さくて雛みたいになってるくせに!
「いいですか!?世は妖怪ブームになっているのです!どう責任を取るおつもりですか?」
「だから…世間の妖怪ブームが、何で僕らなの?」
『そうだよ。
何で私が関係あるの。リクオなら分かるけど。』
「ちょ!何ねーちゃんだけ抜け駆けしてんの!?ずるいよ!それなら僕だって関係ないよ!」
「いーえ!お二人とも、関係ございます!お二人がいつまでも奴良組を継がずにプラプラしてるから、雑魚妖怪や若い妖怪共になめられて、こーやってシマを荒らされているわけですよ!」
お前はアレか、母ちゃんか。
就活しない子供を叱る母ちゃんか!
「大体、若の…!かつてのあの快刀乱麻の大活劇、あれはなんだったのですか!!」
怪盗らんま?何それ。
水をかぶれば女になり、お湯をかぶれば男に戻るアノ乱馬君のことかい?怪盗になっちゃうの?…あの漫画また読みたいなー。
「だって…あの時は何が何だかわからなくなったんだもん!自分が何言ったかも覚えてないし」
「そんな無責任な!!拙者はハッキリと覚えていますよ!俺の後ろで群れとなれとかなんとか言っていたくせに!!」
ハッキリと覚えてねーじゃん。うろ覚えじゃん。
「おうリクオ、鯉菜。朝っぱらからなーんの話しとんじゃ。」
『いやいや、聞いてたくせに何とぼけて…あっ、ごめん。とぼけてるんじゃなくて、ボケたのか。』
「親父ももう…年だもんな。」
「うるさいわい!ワシはまだまだピチピチじゃいこの馬鹿息子と馬鹿孫め!」
「はぁ…じーちゃんが、放任主義だから代わりにボクらが怒られてんの」
「しかたなかろう?ご覧の老体…お前が早く妖怪の総大将を継がねば…わし死ぬな。あ、勿論鯉菜が継いでもいいんじゃぞ?」
「俺も左肩やられちまってるからね〜、イタタタタ。」
何でこういう時だけ無駄に息がピッタリなんだよ。
『冗談はその無駄に長い頭だけにしてよね、2人とも。』
「そうだよ!嘘つかないで!おじいちゃんなんか昨日も夕方元気に無銭飲食してたくせに!
いいかい?ボクも姉ちゃんも普通の人間として暮らすんだから!」
そう言いながらキュウリを河童にやるリクオ。可愛いな、河童。
「若…ではせめて護身刀に帯刀してください。世の中はアブのうございます。」
「いいよ、学校行くだけだし…」
「お嬢はちゃんと帯刀してるんですよ!?」
「…は!?そうなの姉ちゃん!!」
oh......
急に話を振られて良く分からない。目の前のご飯と河童に夢中で全く聞いてなかった。
「お嬢が持つ番傘…
あれは仕込み傘で、柄を抜けばちゃんと刀になるのですよ。」
そう説明する鴉天狗に何の話か察する。
『昔は木刀だったんだけどね。流石に学校に持っていけないでしょ?だから学校に持っていけるような隠し武器をお父さんにねだったんだよ。』
確か…羽衣狐のやつが終わってすぐだ。
リクオは今初めて知ったようでとてもびっくりしている。
「ほら!お嬢も帯刀してるのですから、若もぜひ!でないとまたイジメに合いますぞ!」
その言葉に反応するリクオと妖怪。
青や首無など、妖怪が出てきてその真偽を問い詰める。リクオに何かあれば許さないと怒っている青たちに対し、リクオは「出没」するなと彼らを落ちつかせるのに必死だ。
『朝から皆元気だなあ…ご馳走様。』
食器を片付けて学校に行く準備をする。今日はリクオと一緒に学校に行くから、ちょっとうきうきなぅ。
(「姉ちゃん、準備できた?」)
(『うん、もう出れるよ!行こっか。』)
(『「行ってきまーす!」』)
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