この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ


▽ 技の披露大会

「吾輩は…12代目・御門院泰具。奴良鯉菜、貴様を地獄に堕としてやろう。」


突如現れたのは、黒装御門院家の者。
12代目は確か…漫画に出ていなかった気がしたんだが、気のせいだろうか。原作を見たのは大分前のことだから、正直ハッキリとは覚えてない。
でもー 


『ご指名とあっちゃぁ…相手しない訳にはいかないわね。敵なら消すまでよ。』


刀は先生が持っている。鉄扇と…あまり使いたくないが銃でなんとかするしかない。太股のホルダーに銃があるのを確認し、鉄扇を構える。


「吾輩は、水と木を操る者。貴様の炎は吾輩の水で消される。そして水は木を生かし…貴様は吾輩の木で…」 

『吾輩吾輩って…さっきからウッセェ野郎だな。木で私を殺すってんなら、その木を燃やせばいいだけのことよ!
明鏡止水〈桜〉!!』 


まずはお手並み拝見でもさせていただきましょうか。


「鯉菜、刀使うか?」


後ろから聞こえた声に振り向けば、お父さんが自分の護身刀を掲げて言う。 


『…いいよ。扇と銃があるし。
それにその刀はお父さんのでしょ?』

「あ? オレのぁ別にまたどっかから取ってくりゃあいいだけだ。扇じゃ戦い辛ぇだろ…とっさの防衛にしか使えねぇし。」


眉を寄せて、ズイっと刀をこちらに差し出すお父さん。まぁ、お父さんの言いたい事はとても良く分かる。
でもー


『確かに…扇は他のどの武器に比べても弱い。
けど、それは武器として使おうとするからよ。
〈技〉として使えば…扇だって刀に引けを取らないわ。』


口を動かしながらも、視線は轟々と燃える御門院泰具から目を逸らさない。


「…フン。
その技がいとも簡単に消されるようでは意味が無いがな…〈水禍奔流〉…」


燃え盛る炎の中から声が聴こえたと思いきや、何処からともなく現れた水流によって…あっという間に消化される。チクショー…


『…大人しく焼け死ねばいいものを。つぅか何で無傷なんだよ。焦げろよ。焦げて私みたいに臭くなれよ。』

「バカが…吾輩は華の如く麗しいのだ。貴様みたいに異臭を放つわけないだろう、下種め。」

『はいっ! お前死刑決定ー!!』


何だよこいつ。狒々よりも変な仮面つけてるくせに!! 何が華の如く麗しいだよ!! 女が言うならまだしも…お前どうせ仮面とったら不細工だろ!! つうか何だよお前のナルシストぶりは!!


『ナルシストはおじいちゃんとお父さん、先生だけで充分だっての!!』

「吾輩はナルシストではない。事実を述べただけだ!〈夜蓮桜蛾蟲〉!!」

『…あ、蓮だ。普通にきれいじゃん。』


目の前に現れたのは大量の綺麗な蓮。
しかし…へぇーと普通に蓮に見とれていた私に、突如、恐怖感が襲ってくる。


『…ぁ…ぁああ…!! い、いやぁぁあ!!?』

「鯉菜!?」

「奴良っ!!大丈夫かっ!?」

「先ぱっ…! ひぃぃい!?」

「なっ!何アレ…!!」


心配して私の名を呼ぶ者、そして目の前の光景に青ざめる者ー
皆の視線の先には、ナルシスト泰具が生み出した綺麗な蓮、…ではなく…、


『蓮の実キモいぃぃぃ!!
しかも穴の中でナニかが蠢いてるぅぅぅ!!!』


綺麗な蓮の花は消え、目の前にはたくさんの蓮の実が。見たことない人は決して、容易にクグッてはならない。覚悟ある者だけ見よ!!


「この美しさが分からぬとは…やはり下種。」

『これを美しいって言うテメェのが変だわ!!
…って……ええ!? めめめめめいめいっっ…』


え? 噛み過ぎだって?
仕方ないよ!! だって…蓮の実の穴から色んな蟲がウヨウヨ湧いて出て来てるんですものぉぉぉぉ!!


『め、明鏡止水〈火葬風円舞〉!!』


扇を構えて、風を巻き起こせば火の粉があがる。その火の粉からミニ火龍が生まれて、円を描くように空を飛び回り…
そして、


「…炎の…竜巻…!」


目を丸くしてボソッと呟くお父さんに、内心ドヤァとする。
だが、


「芋投げ入れたらあっという間に焼き芋になりそうだな…」


…先生…どこからその芋取り出したんですか。
やめてください。焼き芋苦手なんで。
緊張感が全くもってない先生に、テンションが下げられる。
ちなみに、先生やカナちゃん達は普通に観戦しているが、お父さんやおじいちゃんはちゃんと妖怪(式神?)を何気に何度も倒している。
…倒しても何度も復活してるけどね。 


「…ぐっ…危ない…
もう少しで焼けこげるところであった。」


声のした方をみれば、所々焦げている泰具。体が濡れていることから、またもや水で自身を守ったのだろう。


『…やっぱトドメ刺すには刀じゃないと駄目なのかな。』


ポツリと呟いた私の声に、泰具は嘲笑うかのように口を開く。


「…ふははっ…トドメ、か。
気の早い小娘だな…だが、吾輩はまだ死ぬ訳にはいかんのだ。まだ…吾輩の役割は終えていない…」 

『…役割?
あーハイハイ、私を地獄に堕とすんだっけ?』

「…そうだ。
本来の目的は…貴様と戦うことじゃない。
貴様に地獄を贈ることだ…
ー晴明様の命(メイ)によってな。」




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