この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 欲しいものはただ一つ

はい、おはようからこんばんは!
例の敵さんの鯉伴暗殺計画から五日が経ちました。ちなみに、鯉伴が目覚めてからは三日が経ちました。
えぇ、そうなんです!
実を言うとあの人二日も寝てたんですよ!もう皆心配してたんですよ、私も含めて!
なのに…


『何で怒られなきゃなんねんだよ…チッ』

「なんか言ったー? おねーちゃん」

『ううん! 何にも言ってないよ』


不愉快極まりない。
毎日夢で見てたんだよ? 殺されるシーン。
でも、黙って殺されるのを見ていた訳じゃない。色々夢の中でも善処したんだよ。ある時は乙女さんに体当たりしたり、ある時は鯉伴に体当たりしたり、飛び蹴りしたり、物を投げたり。色々試したけど、ほとんど私刺されたんだよね。いや、私が刺されて鯉伴が助かるならともかく…二人ともただ刺されてゲームオーバーなってたんだよ。それで試行錯誤した結果、木刀で下から叩けば刀の軌道がズレるんじゃね?になったんだよ。


『よくある夢小説みたいに、私が死にかけて心配させることもなかったのに…』

「夢…しょ? なに?」

『えー…夢は生涯持つべきだって話。』


何だそれ。意味分かんねぇよ。自分で言っといてなんだけど意味分かんねぇよ。


『しかも人の傷口を容赦なく抉るようなことを言いやがって…』

「傷口…? おねーちゃん怪我してるの!?」

『違うよ、リクオ。敵の傷口に塩を塗りたくったら、大ダメージを与えられるよって話。』


痛えよ。想像しただけで叫びたくなるよ。でも殺菌能力がありそう。

そう、アレから私は鯉伴との距離が掴めずにいる。つーか最近「お父さん」ってよりも「鯉伴」て感じがする。何でだろう。何かこう…漫画のキャラクター的な感じがするんだよね。生きてるのに失礼かもしれないけど。知ってる話(原作)が目の前で行われてから、どうも変な感じだ。…うーん…伝えづらい!あれだ。知ってる世界に異世界トリップしちゃった的な気分だよ!あれ、伝わんなかった?


「何じゃい、こんな所におったのか。」

「じーちゃん!」

『? 何か用事?』

「実は狒々からおいしいお茶菓子を貰っての〜、お主らを誘いに来たんじゃが。」

『無論、喜んで誘われましょう。』


即答して、所変わりおじいちゃんの部屋。
3人でのんびりと、たわいのない話をしながら茶菓子を食べる。


「そういや鯉菜…お前まだ鯉伴のこと怒っとんのか?」


うわーお、触れられたくないことに触れてきたー。


「おねーちゃん、お父さんと喧嘩中なの?」

『いや、喧嘩ってわけじゃないけど…』

「じゃあなに?」

『うーん…何か、こう、気まずい?』

「怒られたからか? アイツはもう怒ってねぇぞ?」

『いや、それは分かってるよ。いつも通りにしようとしてるの知ってるし。』

「…じゃあお前さんもいつも通りにしたらいいんじゃねえのか?」

『それが出来たら苦労しないよ。』

「僕よく分かんなーい!」

『そうねぇ…例えば、リクオが大事にしてるアンパン〇ンの人形があるよね?それをもし、A君が傷付けたらどうする?』

「やっつける!」


わーおバイオレンスな答えでたー。


『…じゃあ、もしそのA君が、アン〇ンマンの人形を持ったリクオの前にまた現れたらどーする?やっつける以外で答えて。』

「えー!じゃあ…守る!」

『そうそれ!おねーちゃん今その状態!』


おじいちゃんは頭にはてなマークを浮かべている。


「おねーちゃん、お父さんに何か壊されたの?」

『そうね…壊れてはないけど、お父さんのおかげ様でおねーちゃんの心は今崩壊寸前です。』

「じゃあおねーちゃんは今心を守ってるの?」

『そう。心を保つために警戒心マックスで距離を置いてるの。つーか置かざるを得ないの。今回復中なの。』


そっかー大変だね!と笑顔で言うリクオに今HP10回復しました、ありがとう。


「だとよ…鯉伴。」


…は?
おじいちゃんが私の後ろに向かって話すがそこには誰もいない。
ーと思っていたら、何もないところから急に鯉伴が現れた。明鏡止水で姿を見えなくしていたのだろう。


「…鯉菜」


部屋に鯉伴の声が静かに響く。


「…悪かった、まさか…お前がそんな傷付くとは思わなかったんだ。」


何か謝罪会見みたいなんですけど。


「確かにああゆうのは心臓に悪いからやめて欲しいが…」


あれ、結局謝っただけで何も変わりなし?


「だが、俺ァ気付いたんだ…。」


別に謝られても嬉しくないし困るだけなんだが。


「俺がすべきことは、お前を叱るんじゃねぇ。
お前に感謝することだ。
助けてくれて…ありがとうな。」


その言葉を聞いた途端、私の目からは大きな涙がぽろぽろと零れ出す。
そうだ。
私は「ありがとう」って言葉を聞きたかっただけなんだ。自分がどうしてこんなにも救われない気持ちになってるのか、ここしばらく謎だったがようやく分かった。

ここ数日間溜めてた分が一気に溢れだすかのように、私はたくさん声をあげて泣いた。赤ちゃんの頃を除き、こんなにも子供っぽく泣いたのはこっちに来て初めてである。鯉伴は…お父さんは、そんな私を「ありがとう、怒ってごめんな」ってただ抱きしめくれた。


(「う、うわぁああああああぁぁぁあん」←貰い泣き)
(「な、何じゃ!?どうしたリクオ!?」)
(『うああああぁぁぁあぁぁああん』)
(「(どうやって二人を泣きやませようかねぇ…。)」)




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