▽ 帰りマシょう
『前回までのあらすじ!
猩影がドンと登場し、リクオが夜の姿にへーんしん!!』
「…あなた、もしかして…奴良さん!?」
先ほど言った通り、猩影が来たことでリクオはもう戦える準備万端だ。
もう私の出る幕はないだろう。
よって…
『横谷先生、危ないですよー。こっちこっち』
私は先生の保護をすることにしよう!
「あなた達…その姿、いったい…??」
明らかに混乱状態に陥っている横谷先生。
まぁ、無理もない。知ってる生徒が急に変身したんだし…しかも戦ってるっていう…。
誰でも吃驚するわ。
『…奴良姉弟は実を言うと妖怪の血が4分の1混じってるんです。』
「そ、そうなの…? 全然雰囲気が違うわね…」
『まぁ、そこは妖怪クオリティなんで。』
この先生は天然なのかもしれない…。
普通はどういう事だってもっと食いつくと思うんだが…。「そうなの?」の一言で片付けられたぞ。
まっ、コチラ側としては楽で助かるけどね。
リクオと猩影から少し離れ、安全な場でボソボソと2人で話す。一方でリクオとヤツの戦いが始まるのかと思いきや…とおりゃんせは「一旦引く」と言い、女の子たちの元へ歩む。
そして…
「!!」
『先生…見た後に言うのもなんですが、
あまり見ない方がいいですよ?』
歌を歌いながら、マントの中にある顔を次々と潰していくとおりゃんせ。次々と潰されてゆく顔に、ほかの顔が恐怖に泣き叫ぶ。
「いやぁぁあ!!」
「やめてぇぇぇえええ!!」
そんな泣き叫ぶ声が響き渡る中…
「そうだ!!さけべ!!〈小生〉をおそれろ!!」
とおりゃんせは武器のハサミに畏をのせる。
「畏の再点火でありマス。
〈恐れ〉が我らを強くする、そうでありマシょう!?妖怪の強さ…それは恐れられ〈語られる〉こと…怪談のように、都市伝説のように、
〈百物語〉のように。」
最後のその言葉に、リクオが大きく目を開く。
「貴公らも〈小生〉の世界で永遠にさまよひ続けろ!!」
畏によって強くなったハサミ…
それを持って斬りかかってくるヤツに対して、
「てめぇもそうか…!?
………猩影、鬼纏うぞ。」
さっきまでの普通の刀が、
一気に大きな刀へと変貌する。
そしてー
「てめぇの畏はそれっぽっちか。
恐怖で得た〈恐れ〉なんざぁ〈畏〉の一面にしか過ぎねぇんだよ」
とおりゃんせを文字通り、一刀両断するリクオ。そんなリクオに、鬼纏を終えて出てきた猩影が口を開く。
「…いきなりすぎまさぁー。
昼は昼で、罠に人間のまま入るし…
勘弁してくださいよ!」
「ハハッ、あぁ…すまねぇ。
猩影。今日からここはお前のシマだぜ。大きな畏に変えてくれよ、親父さんのためにも。」
「…はいっ!!」
リクオを真っ直ぐ見て、何かを決意する猩影。
そして、リクオにお礼を言って成仏する女の子たち。どうやら横谷先生も…15年前に生き別れた友達とお別れを済ませたようだ。
次々と成仏する者を見送っていれば、虫の息でとおりゃんせが笑いながら言う。
「せいぜいシマを奪い返されないよう気を付けるんでありマス。」
「何?」
「〈畏の奪い合い〉は始まってる。お前らの知らないところで…深く蝕んでいるのでありマス。…お前らの中にも…闇はしみこんでいる…」
「どういう…ことだ?」
「恐怖ある限り、我ら〈百物語組〉は存在する。
〈小生〉が消えちまっても…語られ続けて欲しいねぇ…とおりゃんせの…怪……」
最期にそう言い残して消えるとおりゃんせ。途端、今までのが嘘だったかのように、景色が元通りになる。
「…百物語…か。」
『……2人ともお疲れ様。』
「お嬢…! 大丈夫でしたか?」
私の声にハッとする猩影。
お前…絶対私の存在を忘れてただろう。
リクオのことで頭がいっぱいだっただろう!
全く…妬けちゃうわぁ(棒)
『大丈夫だよ。余裕のよっちゃんです。』
「…余裕ってか、姉貴、本気出してなかっただろ。
何で早く倒さなかった?」
そう言って…こっちをジロリと見るリクオ。
やだなぁ…そんな目をして、
いったい何を探ろうとしてるんだぃ?
『…試してただけだよ。
リクオも猩影もどうするかなって。
別に深い意味はないわ。
それに、ちゃんとリクオのことは護るって約束したでしょう? 私は守れない約束はしない主義よ。』
ニコッとして言えば、リクオはチッと舌打ちをして言う。
「相変わらず食えねぇな…。」
『え、怒った? おこ? おこなの?』
「別に怒っちゃいねぇよ。
てか何で笑顔で聞くんだよ微妙に腹立つな。」
プチおこじゃん、うるせぇ、そんなしょうもない言い合いをしながら、帰路に着く。
切裂とおりゃんせが終わったということは…
次は鳥居さんがロッカーに閉じ込められる話だ。
『……これから忙しくなるなぁ。』
「あ?」
『何でもなーい。』
(「姉貴。」)
(『んー?』)
(「……来てくれてありがとな。」)
(『…ふふっ、どういたしまして』)
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