▽ 本質
「さてと…これでレモンのハチミツ漬けが出来上がりよ」
『ふぉおお! 美味しそう、食べてもいい?』
皆さん、こんにちは。ただ今頑張っているリクオの為に、冷麗とレモンのハチミツ漬けを作っています。冷麗「と」って言うか、冷麗「が」だけどね。
「えぇ、味見してみて?」
お言葉に甘えて、1番小さいものを取って口に入れる。
『な、何だコレは!
あんなに酸っぱいレモンが、ハチミツに漬けたことで甘くなっている! しかも、ただ甘いんじゃなくてほど良い酸味も残っている…!! 食感も温度も最高だ…半凍りにしているからシャキシャキしているし、冷た過ぎなくて、ちょうど良く冷たいから頭もスッキリするぞ……!?』
「あ、ありがとう…まるで料理番組のようなコメントね…」
『後でレシピ教えて。帰ってもリクオにたまに作ってあげたい。』
「ふふ、勿論いいわよ。リクオもきっと喜ぶわね」
レモンのハチミツ漬けを持つ冷麗の後に続き、リクオがいるであろう実戦場に向かう。
実戦場に着けば、リクオ達が何やら〈ぬらりひょん〉について話していた。
「ぬらりひょんって何の妖怪なんだ?」
「…人の家に勝手に上がり込んで飯を食う妖怪。」
「ケホケホ……よく分かんない」
「抽象的過ぎんだよオメーは。」
ボロクソに言われてんじゃないか。
ドンマイ、リクオ。
「ぬらりひょんの本質を知ることから始めたら?
はい、これレモンのハチミツ漬けよ。」
『そもそも上がり込んで飯を食うってのは、畏を使ったぬらりひょんが取る行動を指しただけだもんね。ぬらりひょんの本質ではないよ』
お疲れ様と言いながら、怪我した所を治療する。これはもう当たり前の習慣でござる。
「じゃあ、ぬらりひょんってのは何の妖怪だ?」
身を乗り出して聞いてくるリクオに、昔おじいちゃんが言っていたことが頭に過ぎった。
『…おじいちゃんが云うには、〈鏡に映る華〉もしくは〈水面に映る月〉が私達、ぬらりひょんだよ。洒落たこと言うよね〜。』
ケラケラと笑いながら言えば、「カッコつけやがって…分かりにくいんだよ」とリクオは悪態をつく。
「なぁ、何かもっと分かり易い例えねーのか」
『うーん…分かり易い、かどうかは知らないけど、』
顎に手を添えて唸る私にリクオの目は期待に満ちる。
『クフフ…
僕が例えるにぬらりひょんとは霧…ですかね。
クハハハハ!!』
「…モノマネが上手すぎて気持ちわりィ」
復活漫画の某パイナポーヘアーを真似してみたら、予想外に上手すぎて自分でも引いた。
「つまり…幻覚を作るってことか?」
『あー…当たらずも遠からずって所かな』
あの南国果実さんみたいに幻覚ができたら最強やな。ぬらりひょんよりも強いんじゃね?
「…分かんねぇ。もったいぶらずに説明しろよ」
『ダーメ。こういうのは自分で見つけなさい。
…私はおじいちゃんみたいな粋な例えを思い付かないけど、でも自分なりに〈霧〉みたいなモンだと認識したわ。リクオがぬらりひょんをどう認識するかは知らないけど、でも〈鏡に映る華〉〈水面に映る月〉〈霧〉に共通点を探したら、ぬらりひょんの本質にも近づけるんじゃない?』
「……共通点……か」
『ま、私が現時点で出せるヒントはここまでかな。後は何とか頑張って〜姉ちゃんも頑張るから。』
そういえば姉貴は何してるんだと聞いてくるリクオに私の頬は引き攣る。
『冷麗様にイジメら……』
「鯉菜ちゃん?」
『冷麗様に私を鍛えてもらってます☆』
素晴らしい笑顔で答えた私を誰か褒めてくれ。そして遠野勢は私に哀れみの目を向けるんじゃない。
『取り敢えず、私まだ雑用の仕事があるから行くね。無理せず頑張りなよ。
……ってもう頑張ってるか。』
姉貴もな、と返すリクオに頷き、皿洗いをしに厨房へ向かう。
『……今日は鉄扇か』
昨日実践した時に言われたのだ。せっかく刀の他に鉄扇も持っているなら、どちらででも戦えるようにしろと。鉄扇なんてとっさの防御にしか使えないだろと思っていた。けどそれはあくまで人間が使う時の話とのこと。
『畏を上手く利用すれば…鉄扇も強い武器になる、か。』
昨日は刀で実践したから、今日は鉄扇、そして明日は刀…というように刀と鉄扇を交代でやることになった。
『……銃は独学かな〜』
そう…銃は知らねぇって見捨てられました。何でも近代的な武器の使い方は知らないとのこと。さらに言うと、「一発撃っただけでそんな体力消耗する武器なんか使うな」って言われました。「撃った後すぐ殺されるぞ」だって! イタク先生は手厳しいです、ご最もだけど。
『…誰かこの銃について知ってる人いないかな』
(「ふぅ・・・扇で戦った感想は?どう?」)
(『畏を使ったら案外、使える・・・』)
(「武器を生かすも殺すもアナタ次第よ」)
(『(新技考えよう・・・)永遠の厨二病の血が騒ぐわ〜。』)
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