▽ 遠野勢とご対面
「おい!ちょっと待てよ鎌鼬!!」
『イタクっつったじゃん、さっき。
いい加減名前覚えなよ。』
NA〇UTOのように、木々を忍者の如く飛び移る私達。ちなみに行き先は知らない。イタクをリクオと共にストーキングしてるだけだから。
『!
ちょっ、急に止まんぶっ!!』
「うおっ!?
ば……オレを殺す気かよ!?」
急に止まったため制御が効かず、そのまま後ろからリクオに突撃する。痛い、鼻打った。
『木から落ちないで良かったね』
「誰のせいだよ」
パシンと頭を叩かれる。今はやめてよね! 鼻血が出たらどうすんの!! まだ鼻が痛いわ。
「…ここは遠野の数ある実戦場で一番広い所だ。
おっ、あっちで河童とあまのじゃくが戦ってるぜ。見てみろ」
『…! アイツはっ!! 何でここにっ』
「? 知り合いでもいんのか、姉貴」
深刻そうな顔をする私に、リクオとイタクも眉を寄せる。
『仮面ライダーっ、いや、もしかするとサワーズかめかめ!?』
「…なっ、まさか……アイツは、亀梨〇也は妖怪だってのか!?」
「……よく分かんねぇがアイツは沼河童で、仮面ライダーでも亀梨和〇でもねぇぞ。」
そうか…人違いか。前者なら興味無いけど、後者ならサイン貰ってたのに。残念だ。
「あれは普通に戦ってるだけ…いわば準備運動だ。ここからが本番。ほら、河童の雨造が〈畏れを発動〉する。」
『わっ』
「うお!?」
なんてこった…サワーズかめかめに畏れてしまった。鳥肌立ちまくりだよ、悔しい。
「気圧されすぎだバーカ。それが〈畏〉だ。妖怪ってのはそもそも人をおどかすために存在し始めたものだろ?」
そう言って〈畏〉の説明をし出すイタク。
まぁ…簡単に言うと、畏とは妖怪の持つ力だ。そして畏の発動とはその妖怪の力を使って「オレラ妖怪だぜ、ボハハハハハーー」ってやることだと…ふむ。そんな説明よりも私は皆と戯れたいです、イタク先生。
「でもこれは対人間用の話。
対妖用の戦い方が、次の段階だ。」
〈次の段階〉と言うのに、ワザワザ指を2本出して説明するイタクをこっそりスマホで撮る。
やったね、イタクのピースポーズをゲットだぜ!
「お? 新顔だな」
そう言って遠野キャラがぞろぞろと集まってくる。いえーい、遠野に来たかいあったー! 冷麗かっわいい!!
次々と自己紹介をしてくる皆に、こちらも自己紹介をする。
「こいつ畏のしくみも分かってねーんだよ」
ぬらりひょんの孫で奴良組の若頭ということに反応を示す皆だが、イタクの言葉になおさら場がどよめく。
「ありえないわ、妖怪なら」
「おぼっちゃんとお嬢さまなんだろ。」
『甘いわ。
見た目はお嬢さまでも中身はおじさんよ!』
「姉貴はどこで張り合ってんだ!
…〈畏れを発動〉くらいならできるぜ」
リクオの言葉に、ニヤッとしてやってみろというイタク。
「じゃ、寝巻きだと可哀想だから服貸してあげるわ。」
『あら、ありがとう。
弟を格好よくイメチェンしたげて!』
「任せて!!」
冷麗と紫に親指を立てて頼めば、向こうも親指を立てて返してくれた。嬉しい。
そして暫らくするとー
「じゃあかかって来な」
リクオin遠野服…! カッコええやん!!
そしてイタクの言葉もカッコ良くて、むしろ私が襲い掛かりたい。別の意味で。
「え……消えた?」
「これが〈ぬらりひょん〉の畏!?
バカな…ここにいる全員に恐れを発動させたのか!?」
見えなくなったリクオに構える冷麗と淡島。だがそれをイタクは牽制する。
「やめろ!! 今戦ってんのはこのイタク!
ヤツの畏を断ち切るのはこのオレだ。」
『っ!!』
イタクから空気が突き刺さる感じがする。畏れを発動したんだ。
「〈畏れの発動、鬼發〉…の移動〈鬼憑〉!!」
イタクの畏が鎌に集中する。
そして…
「妖怪忍法〈レラ・マキリ〉。オレの秘技だ」
秘技なのにあっさり見せていいんかい。
とゆうか何この技、危ないけどカッコイイ。
「あ」
「ヒェヒヒヒ……やりすぎだぁイタク」
「まーた実戦場を壊す気か?」
「見えた!! 畏が断ち切られたよ!!」
周りの大木が綺麗に切れ、リクオの姿も見え始める。
「畏を断ち切るには…自らの畏を具現化し技として消化させることだ。畏れを以て畏れをやぶる…これが対妖用の戦闘術。これをこの里では〈鬼憑〉と呼ぶ。」
イタクの言葉に、頼むからそれを教えてくれとお願いするリクオ。
「死んで本望ぐらいな気合じゃなきゃ、時間の合間に見てもやらねぇぜ」
「弱えままなら死んでんのと変わりゃしねぇ。死ぬ気で覚えてオレは京都に行く!」
「ふん、ここは戦闘好きの集まり。実戦あるのみだぜ!! それで、お前はどうするんだ?」
『へ……私?』
急に振られて思考が停止する。
どうするって言われてもねぇ……
『…多分だけど、私〈鬼憑〉できるし。』
「…………はぁっ!? 姉貴が!?」
『何それ。失礼な奴ね。…まぁ、だからあとは経験値高めて戦闘スキルを高めたいかなー』
「〈鬼憑〉ってどーやるんだ!?」
『こういうのは自分で見つけるもんよ。それに、リクオ…無意識のうちに一回やってるからね。できるっしょ。』
勿体ぶらねぇで教えろというリクオを無視して、リクオの傷口に手を添える。
「……!? なんだ、それは……」
「そういえば…関東に治癒の力を持つ女の子がいるって……」
「まさか奴良組のお嬢さまだったのか!?」
お嬢さまって…何だかなぁ。
にしても「すげー」だの「本当に治ってらー」だの野次馬してくる遠野勢、暑苦しいから散らばって欲しいです。
「よし! 治療も終わったことだし、次はこの淡島とやろう!! ぁ、勿論洗濯や風呂焚きも忘れんなよ!」
「な…え、連続かよ!! しかも雑用も!?」
「鯉菜、あなたはこっちの方を手伝ってくれる?掃除と料理を全員分しなくちゃいけないンだけど…」
『もちろん。お世話になるんだからそンぐらい手伝うよ』
……お父さん、何だか遠野での暮らしは楽しくなりそうです!
(「そういえば、あなたの指導係は私と紫よ。よろしくね?」)
(『あ、そうなんだ!女の子だとやっぱホッとするな。よろしくお願いします!』)
(「それじゃ、私達も料理が終わったら実践しましょ♪」)
(『・・・(お、悪寒が?)・・・そ、そだね!』)
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