この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 挑戦状

『…これは、昔の夢を利用するとして…』


お父さんと話した後、早速頭の整理に取り掛かっている鯉菜です。ただいま机に向かって一生懸命ノートに図式しています。
凄いよこの集中力!!
周りから見たら「お〜受験生かなあの子は」って思われる程のガリ勉ぶりだ。


『…この集中力が勉強に向かえばいいのに』


頭を使う作業はぶっちゃけ嫌いだ。だんだんイライラしてくるから。


『そうか、これが逆ギレか…』


いや違うと思う、と1人脳内ボケツッコミをしながらもアルフォートに手を伸ばす。ブラック味が一番好きだ。そしてホワイトチョコが一番嫌いだ。
…どうでもいいけど。


『いかん、集中力が切れてきたようだ…ん?』


アルフォートにまた手を伸ばそうとした時、庭からドボーンという音が聞こえてくる。


『もしや……今日でビンゴかな?』


開いていたノートを一応閉じて引き出しに直す。悪いことしてないのに何だろう…このデスノ〇トを隠すような心地は。リュークとか見えたらどうしよう。


「何すんだ……くそじじい」


部屋を出て2階の廊下から庭を見れば、リクオが池から出てきたところだった。一方、京都に行きたいなら刀を抜いてみろと言うおじいちゃん。


『……老体とは思えない動きだな。』


リクオの攻撃を軽々とした動きでおじいちゃんは躱す。普通のじいさんならジャンプとかできないよ。膝と腰が一気にポッキリ逝っちゃうよ。


「見様見真似でそこまでやるとはのう…
じゃが、古の妖怪は一つ先の段階を踏む。」


そして次の瞬間、リクオは倒れる。
それでもなお諦めずに立つリクオに、おじいちゃんは問いかける。


「何故そこまで京にこだわる?」

「親父のことだよ。
京都にいるんだろ…羽衣狐ってのは。」


その言葉に驚くおじいちゃんの隙をついて、リクオは刀を持って飛びかかる。


「ムゥ!!」


だがその刃は届く事なく、おじいちゃんによってリクオは池にぶっ飛ばされた。


『……あらあら』


しばらく待ってみるも浮き上がってくる気配がない。こりゃ意識飛んでんね。


『よっ…と。あ、お父さんも見てたんだ?』


庭に飛び降りれば、おじいちゃんとカラス天狗以外にお父さんもいた事に気づく。


「まぁな。…そういうお前も見てたのか。」

『もちろん。ほらほら、ボーっとしてないで早くリクオを引き上げなさないな。溺れ死ぬよ。』


そう言えば、分かってらぁと言いながら池に向かうお父さん。…あぁ、私の中でデビル鯉菜ちゃんが囁いてくる。


『あららのら。足が滑っちゃった☆』

「どわっ!!?」


お父さんの叫び声に続き、池が噴水のように水しぶきをあげる。
暫くして、リクオを先に池から出して、お父さん自らも池から出る。


「鯉菜ちゃんよ〜…
ちょいとこっちに来てくんねぇかい?」

『……私じゃないのよ?
私の足が勝手に動いたの。決して私の意思ではない。』


嘘つけと言いながらコッチに忍び寄るお父さん。対して私は後ずさる。
だがー


『……えっ』


後ずさっていれば、視界の右側に刀の切っ先があることに気づく。私の後ろにはおじいちゃん。
…そう、おじいちゃんが刀を私に向けているのだ。


「……。」


お父さんを見れば、さっきまでの雰囲気と違い真面目モードだ。でも口出しをしないことからおじいちゃんの考えに任せているのだろう。
私としてはぜひ助けて欲しいのだが。


『……なに? おじいちゃん。』

「鯉菜、お前はどうなんじゃ。」

『…リクオは京都に行くつもりだけど、私はどうなのかってこと?』

「話が早くて助かるのぅ。
…で? 答えは何だ」


これ、もし行くって言ったら強制的におじいちゃんと戦闘に入るパターン?


『……さぁ、お父さん次第かな。』


急に自分の事を言われ、キョトンとするお父さん。約400歳くらいのクセに可愛いなこんちくしょう。


『お父さんが京都に行くなら行く。行かないなら行かない。それを決めるためにも、明日か明後日、大事な話をしたい。』

「鯉菜……?」

「……なるほどの〜。大事な話、か…。」

『今はまだでき……』

「今から話せ。」


……今なんと?


『いや、だから今はまだ話せないって!』

「何でじゃ? 大事な話をするんなら早くしといた方がええじゃろう。」

『まだ頭の整理がついてない。分からない事だらけなの。』

「それでもいい。話がしっちゃかめっちゃかでもいい。分からない事があったら、皆で考えるだけじゃ。」

「親父、少しくらい時間をあげても…」

「お前は黙っておれ、鯉伴。
ここまで言っても断るってことは…何か他に理由があるんじゃねーのか?」


ニヤッとしてそう言うおじいちゃんだが、目は笑っていない。


『……例えば?』

「……例えば、何かを隠すために時間が欲しいとかかのぅ?」


……間違っちゃいないな。
実際、原作を知っている事を隠そうとしているんだし。


「そんで、どうなんじゃ?
〈今は〉、まだ話せないのか?」


これは…試してるんだ、私のことを。
おじいちゃんは多分私が何か知っていることに気付いている。そして、私がそれを隠そうとしていることにも…気づいてるんだ。気付いたうえで、こうやって私に〈挑戦状〉を出している。
…上等だ。受けてたってやろうじゃない。


『…分かった。今から話そう。』

「鯉菜……」

『取り敢えず、そうだな。
情報がたくさんあった方がいいから…』


誰が必要かまだ決まってなかったんだけど、仕方がない。


『…おじいちゃんもお父さんも信頼できる側近を2、3人呼んで。』


おじいちゃんはきっとカラス天狗と牛鬼を呼ぶだろう…ちょうど今牛鬼が本家にいるし。お父さんは首無と…青とか黒辺りだろう。知識が豊富な者と、百物語組をお父さんと一緒に倒した者がいれば大丈夫かな。…多分だけど。


「…分かった。」

「ふぅむ…誰を呼ぶかのう。」


私の脳は今フル活動中だ。一体どういう順序で話をしていくか試行錯誤しながら、リクオをチラリと見る。


『……ねぇ、リクオどーするの?』


池のそばで今もなおダウン中だ。


「…忘れとったわい。
カラス天狗、あいつらを呼べ。」

「…ええ!?」

「…遠野にやんのかい。
まぁ、いい機会かもしんねぇがな。」


はぃ〜リクオの遠野行き決定〜。


『…そして私は地獄行き決定〜(ボソ)』

「ん?何か言ったかい?」

『べっつにー』

「じゃあ、面子が揃い次第始めるぞ。」




(「その前に俺ァ着替えてくらぁ。どっかの誰かさんのせいでびしょ濡れだしなぁ・・・?」)
(『そうね、風邪ひいたら大変だわ。』)
(「なにシラっとしてんだよ。スキあり!!」)
(『痛ッタァア!!!!』)




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