▽ お断りします
「滅せよ…妖怪」
首無の紐を燃やし、再び私達に襲いかかる魔魅流。だが、青と黒によって取り押さえられる。
「やめろ、魔魅流。
これだけの妖怪を相手に勝てると思ってんのか?」
そう聞く竜二に、魔魅流はアッサリと勝てると答える。舐めやがって…草ポケモン召喚したろーか、こいつ。しかし竜二の言言を魔魅流がくらい、私が草ポケモンを呼ぶ手間もなくなる。
「ゆら、訃報だ。」
花開院の者が2人死んだと告げる竜二に、戸惑うゆら。
「やつらが動き出した。花開院家の宿敵、京都の妖を束ねる大妖怪…羽衣狐がな」
『………………』
そこでちらっと隣を見れば、目を見開いているお父さんが視界に入る。
…さて、これからどうしたものか。
「事態は…思ったより悪い方向に進んでいるぞ。
ゆら、京に戻ってこい…。
……それと、例の女はどうなった?」
ん? 例の女・・・?
そんな描写、漫画にあったっけ。
「……例の女?」
ゆらぁぁ!!? お前も知らんのかいいぃぃ!!
「はぁ…やっぱり忘れてやがったな。
治癒の力を持つ女だ。奴はきっと生肝として命を狙われる。人間を守るのが陰陽師の仕事だが…敵の手に治癒の力を持つ能力者が渡ると面倒だ。見つけ次第保護するぞ。」
…皆さん、こっちを見ないでください。バレるじゃありませんか。京都に行くとか…そんなもん鴨がネギしょって行くようなもんだろ!! 花開院家が平和ボケして弱くなってんの知ってんだからな!
「…あれ? それって鯉菜様のことだよね?」
コルァ!! 馬頭丸!!
おまっ、ちょ…後で女装の刑な!!
もちろんあの目付き悪い兄がそれを聞き逃すわけもなく……
「なに…? お前が、治癒の力を持つ者か?」
『いいえ、違います。人違いです。』
キッパリと言ったものの、その嘘は純粋なKYっ子にぶち壊される。
「え!? 鯉菜様、牛鬼様を治し…むが?」
「ばっ……! お前空気読めよ!!」
『あっはっは。
牛頭馬頭コンビは本当面白いなぁ……
後でお前ら覚えとけよ。』
はぁ!? 俺もかよ!! という牛頭だが、お前らは2人で1人だ。
ちなみに、馬頭のせいで私が治癒の力を使う者だと簡単にバレ……竜二は今微妙な顔をしている。
そっか。
人間だと思ってた奴が、まさかの灰色の存在だったからね…悩んでるのかも。
『……で? どうすんの? 陰陽師さん。アンタは灰色の存在も認めないんでしょ。グレーゾーンの私を保護する気?』
内心『断れ!!』という念を送りながら、ニヤニヤと聞く。絶対に皆今私のこと、うぜぇ…って思ってるよね。私も自分で思ってるもん。プクク!!
「…ちっ、オレはてめぇの言う通り灰色も黒も認めねぇ。だがな、今回は別だ。てめぇが向こう側の手にまわって、治療だのなんだのされたら面倒だからな…」
誰がんな事するかよ。
「だから、てめえを〈監視対象〉として保護することにする。」
『お断り願う。私は冗談でも妹を傷付ける奴が嫌いなんでね…。ゆらちゃんは除けといて、アンタらみたいな奴の世話になるなんざゴメンだ。
それに…保護される程私は弱くねぇ。』
今私の心拍数は200くらい行ってます。
え? 死んでるって? 死にそうなくらいヤバイってことだよ。これで竜二とバトル開始になったら私負ける自信100%! だって私純粋だからさ? すぐ人を信用しちゃうんだもん、てへぺろ。
「…灰色の存在で口答えしてんじゃねぇよ」
『!?』
「鯉菜!!」
言言と竜二が手を振れば、私とお父さん達との間に水の壁が現れる。よくよく見れば水の球体になっている。水に囲まれて逃げ場ナッシングです。
『おやまあ…水のハムスターボールですか。
洒落てんねぇ。』
「死にたくなかったら着いてこい。お前が人間だったら何としてでも保護していたが、お前が妖怪なら話は別だ。保護できねぇなら…面倒なことにならねぇよう今の内に滅する。」
…もしお父さんが今も生きていなかったら、ここで着いて行っても良かった。でもお父さんはここにいる。そしてきっと乙女さんと羽衣狐の件を暴きに京都へ行くだろう。
行くのはいい…けど、私はお父さんの行動が不安なのだ。乙女さんには悪いけど、私の母は若菜さんだ。要は、お父さんが乙女さんになびかないか不安なのである。
『それを防ぐ為にも…話し合わなくちゃならない。』
「あ?」
『こんなとこで邪魔されたくないっつってんのよ…
失せな。』
妖銃を構えて撃てば、それは水の壁を破り竜二に向かう。瞬時に護符で防ごうとする竜二だが、それは結界をも破った。
「竜二!」
『…ちっ、ピカチ〇ウめ…』
魔魅流が竜二を突き飛ばしたため、それは誰にも当たることなく消える。
一方、壁の1部が破けたからか、それとも竜二の集中がきれたからか…私を囲む水の壁は消えてなくなっていた。
「鯉菜! お前…それ使って大丈夫なのか?」
慌てて寄ってきて聞いてくるお父さんに、大丈夫と適当に返す。
「…ホントかよ。
お前の言う大丈夫ほど信用できねぇものはねぇぞ?」
『……逆に私の信用できる言葉は?』
「…あ〜…〈面倒〉〈ダルイ〉とかが1番信用できるな。」
『お父さんはさっきから私に喧嘩売ってんの?
また突き指する?』
「だが断る。」
何やってんだよお前ら、
そう言いながらハリセンで叩いてきたのはリクオ。
「お前な、それオレが作ってやったんだぞ?
鯉菜を叩くために。オレまで叩いてどうすんだよ。」
『はっ…自分で作ったハリセンで叩かれてやんのー! ざまぁ!!』
首無やカラス達が代表する真面目パーティが「何こんな時にふざけてるんですか」とか言ってくるが…知らん!! 私は無実、イノセントなり!!
「おい…お前その銃どこで手に入れた。」
『あ? ワカメ君に貰ったけど。
何、欲しいの? あげな〜い。』
こちらを睨みつけながら聞いてくる竜二にそう返す。恐ろしや…眼光がレベルアップしたわ。
「いるかよ。一々癇に障る奴だな。…まぁ、いい。せいぜいその銃に殺されねえようにな。」
『あり? 何、諦めてくれんの? 保護。』
「あいにく、花開院家は結界の保護に忙しいんでね。
足手まといがいねぇ方が動きやすいのに変わりはねぇ。」
『誰が足手まといだゴルァ。』
「おっ、今綺麗に巻き舌できたな!」
『えっ、本当!? やったね!』
何だこの親子…的な目を向けながら竜二は続ける。
「ただしお前が狐共に捕まっていた場合、生肝になる前に消さしてもらうからな。」
『そこは助けろよ』
「知るか。
……それと、ぬらりひょんに会ったらと伝言を頼まれた。〈二度とうちには来んじゃねぇ。来ても飯は食わさん!〉以上、その刀…大事にしろよ」
そう言いながら祢々切丸をリクオに投げ返し、去っていく竜二。
『普通に返せよ。
私の可愛いリクオに刺さったらどうするんだ。』
「姉貴。可愛いはやめてくれ」
『? じゃあ…愛しのリクオとか?』
「何も付けないっていう選択肢はねぇのか」
『ないよ。』
何言ってんの。あるわけないじゃん。
(『まっ、取り敢えず帰りますか』)
(「お疲れさん、二人共」)
(「姉貴は怪我ねぇか?」)
(『リクオへの愛で心臓が痛いかな。』)
(「本当だ・・・頭がイってんな。」)
(「鯉菜、オレへの愛は?」)
(『特にないかな。』)
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