この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 10万ボルト

『……凄いね。魔法使いみたい。』

「まほっ…、もっと良い表現ないの?」


ゆらと竜二の戦いを見て感想を述べただけなのに…! 何その半目! お前何言ってんの的な目ぇ止めて! 辛いから!!


「黄泉送りゆらMAXーーー!!」

『…あ、分かった。』

「? 何が?」

『今の技、ロックマ〇に似てるよね。』

「…姉ちゃんのせいでもうロック〇ンにしか見えなくなったじゃん!」

『おや、人のせいにするのは良くないよ?』


うるさいとハリセンで叩かれる、が……


「!? 何それ。どっから出したの!?」

『企業秘密だ。』


安全第一のヘルメットで防ぐ。今思ったんだけど、帽子かぶったまんま妖怪に変化したらグロイことになりそうだよね。痛いよぅ〜。


『にしても容赦ないな…』

「! ……花開院さん!!」


私の言葉に、リクオは視線をゆら達の戦いに再び戻す。そこには…ゆらを騙し、狼の形をした水〈餓狼〉で何度も攻撃をする竜二がいた。挙げ句の果てに、ゆらの頭を竹筒で思い切り殴っている。


「だ、大丈夫や…。
私は餓狼なんかに喰われたりせんよ……」


安心させるようにそう言うゆらだが、その言葉に竜二が反応する。


「餓狼に喰われる…? 何を言ってる?
そんな芸当、こいつにできるわけねぇだろ。」


言い終わるやいなや、ゆらの口から水がどんどん溢れ出す。


「ゆら…お前は言葉そのものに振り回され過ぎだ。いいか、おれは〈餓狼〉〈喰らえ〉としか言っていない。本当は言うなれば〈餓狼を喰らえだ〉…」


説明している間にも、水は止まることなく口から溢れる。


「最初からその式神を体に忍び込ませるのが目的だ。ちなみにそれは正式には〈言言〉という。
〈言言〉走れ」

『……なっ』


途端、全身の穴という穴から水が出るゆら。漫画でも思ったけど…実際に目にすると酷い有り様だ。


「水の式神〈言言〉は体中の体液をを自在に暴れさせることができる。学べよ…ゆら、言葉を操る事も立派な陰陽術だ。」


そう言いながら、またもや〈言言〉でゆらを苦しめる竜二。敵の私やリクオにするならまだしも…味方、ましてや妹にする技なんかじゃない。


「お前は何も知らなさすぎる。
だからこんな男にも振り回される。言言は苦しいだろう? だがこれも〈愛〉なのだ。」


言言でピクピクと痙攣しているゆらの胸倉を掴む竜二を見て、フツフツと血が煮えたぎるのを感じる。
……限界だ。
リクオが夜の姿に変わるのを横で感じながら、自分自身も夜に変化する。


「今ならまだ許してやるぞ。そのまま死にたくなければ戻ってこい!!」

「花開院さん…悪い…我慢できない。」


竜二に胸倉を掴まれてるゆらを奪い、畏の代紋のあるハッピを翻す夜のリクオ。その顔は怒りに満ちている。


「陰陽師だが花開院だが知らねぇが、仲間に手を出す奴ぁ…許しちゃおけねぇ!!」

「はっ! それがお前の正体か? 妖怪!
滅してやる…妹を出していいのは兄だけなんだよ!!」

『ふざけた事ぬかしてんじゃねーよ。
てめぇのやってるこたァ…兄貴失格だよ!』


番傘から刀を抜き、竜二に斬りかかる。妖刀でもなんでもない普通の刀だから、斬ったら最悪死んでしまうだろう。
でもそんなこと知らない。
相手は竜二なのだ…本気で殺りに行かねば、逆に私が滅せられてしまう。


『姉貴や兄貴ってのはなぁ…
次に産まれてくる弟や妹を守る為に、先に産まれてくるんだよ!!』

「…ちっ、妖怪が2匹か。」

「! 姉貴!!」

『!! っくそ……』


リクオの叫び声に、背後に魔魅流が迫っている事に気づく。助かったよリクオ。


「魔魅流! オレはこいつをやる…てめぇはそこの女妖怪をやれ。」


ワオー、そう来たか。パターンBが来たか。
…別にAもCも何も準備してなかったけどね。全然魔魅流とやり合うこと想像してなかったよ。


「姉貴、あんま無理すんなよ。」


そう言って竜二と向き合うリクオに、『そっちこそ』と悪態をつく。そして夜リクオから魔魅流に視線を移せば、何やらブツブツと呟いている。


『……どぉした? ピカチ〇ウ。
何をさっきからブツブツ呟いてんだい?
サトシ君を探してんの?』

「妖怪は黒……自分は白……ブツブツ」

『…自分は白って言ってるけど、お前全身真っ黒じゃん。妖怪より黒い格好してんじゃん。ピ〇チュウが黒インクで染まったみたいな格好してんじゃん。』

「学べよ……魔魅流……ブツブツ」

『……もしかしてアンタさぁ、中国から来たピカ〇ュウだったりする?』

「……妖怪は、滅する!」

『おっとっと…アブねぇじゃねぇか、よっ!』


ピカピカ光る魔魅流の攻撃を避けて刀を振り下ろすも、相手も私の攻撃を避ける。


『…いつ十万ボルトを繰り出してくるか分からないのが怖いねぇ。』


お互いさっきから攻撃を繰り出すが、お互いそれを避ける。どちらの攻撃も互いになかなか当たらない状態だ。にしても…さっきから避けてるから大丈夫だけど、これ刀で防いだらどうなるのかな。電気だよ? 刀で防いだとしてもビリビリ〜ってそのまま伝わってくるよね。やっぱ銃で戦うべきかな。
……嫌な敵だな。
優男みたいな顔して〇カチュウのくせに。


「お……お兄ちゃん!?」


ゆらの声にハッとして振り返れば、リクオがちょうど竜二を切ったところだった。つっても、祢々切丸だから人間には無害だけれど。


『! しまっ……リクオ!!』


余所見した所をつかれ、魔魅流がリクオの元に行く。何でそっちに行くんだよ! お前の相手は私だろうが!!
言いたい事は山々だが、それらを全て呑み込み…ダッシュでリクオと魔魅流の間に入る。そして魔魅流の攻撃を刀で防ぐ…が、


「めつ」

『……っあぁぁ!!』

「……姉貴っ……ガッ!?」


10万ボルトキタ――――――――!!
やっぱ電気だから防いでも刀から伝わってきたよ。こいつ、攻撃しようがねえじゃん!!
って…リクオさぁん!?
しまった……私に来た電気がリクオにまで流れちゃったみたいだ。私、庇った意味ねぇ。むしろ足手まといになってる気がして…申し訳ない。


『………心臓、止まってる人、やったら…生き、返る……かも』

「……あ、ほか……」


この感じ、アレだ。足が痺れてぐわぁーってなるのが全身に広がった感じだ。
お父さんがいなくて良かった! 今ここにいたら絶対ツンツンされてたよ。
一方ゆら達は何やらお話をしているが、正直頭が回らなくて、何の話をしているのかさっぱりだ。


「やれ……魔魅流。さっさと始末しろ」


さっぱりだけど今のは理解できたぞ。
ヤバイね、私もリクオもまだ動けないのに…このままじゃゲームオーバーだ。
あと数センチで魔魅流の手が当たる…ところで奴の手は止まった。いや、止められたんだ。


「はい、そこまで。」


……首無の紐によって。


「その手を引っ込めるんだ。浮世の人よ。
でないと…ただじゃあ済まないよ。」

「何だ? もう一匹…妖怪か? ハッ!!」


そう言って式神を操ろうとする竜二だが……


「牛鬼様、あれは何です?」

「あれは陰陽師という妖怪から人間を守る役目を負った能力者だ。よぉく知っておけ。」

「強いんですかね?」

「……その爪をしまえ、牛頭」


いやん牛鬼様カッコ良すぎ……ドキがムネムネー!!


「ちっ…こっちもかよっ……、!?」

『…わぁ。お迎えがいっぱいだァ。』


首無や牛鬼達だけでなく、奴良組の妖怪が一気に集まる。……誰かの指図かな。


「……ハァーー!? 何だこのデタラメな数は」

「お兄ちゃん…これ、百鬼夜行や。」

「百鬼夜行!?
ふざけるなよ、だとすればこの中に…!?」


辺りを見回して、私とリクオで視線止める竜二。私たちを中心に百鬼夜行が集まっていることから、頭のキレのいい竜二はどうやら察したようである。


「お前ら…何者だ?」

『割れ物……(ボソッ)』

「お前は割れる程か弱くねぇだろ。」

『に"ゃっ!!』


そんな失礼な事を言って私の頭を叩くのはお父さん。
出た、今一番来て欲しくないやつが出た。
……ほらみろ。私が今痺れているのを知ってツンツンしてくる!! やめろバカ野郎!!


『に"ぎゃァああぁぁあ!!!??』

「オレは…関東大妖怪任侠一家 奴良組若頭 ぬらりひょんの孫 奴良リクオ」

『……その姉、奴良鯉菜。』

「ぐあっ!? 指がっ…!」


ありがとうお父さん。お父さんのツンツンのおかげでもう痺れが治ったよ。感謝の印として、ツンツンした指を突き指させとくね!



(「ぬらりひょんの孫・・・だと!?」)
(「そしてオレは二人のパパです☆」)
(『お父さん、安心して。誰も聞いてないから』)
(「・・・そしてオレぁぬらりひょんの子だ(キリッ」)
(『・・・私が紹介してあげようか?』)
(「いや、いい・・・やめてくれ。」)




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