この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ ハッピ

「ただいまーふー明日っから夏休みかー」

『夏休みと言えば…ごろ寝だよね〜』

「姉ちゃん、遅寝遅起する気満々でしょ。駄目だよ〜夏休みもちゃんと早寝早起しなくちゃ!
……ん?」


終業式が終わり帰宅すれば…何やら庭で面白そうなイベントをやっているではありませんか。何してんの?


「さぁさぁ! リクオ様と鯉菜様も!!」

「え? え?」

『?』

「皆でせーの!!」


言われた通りに、渡された物を羽織ってポーズをとる。するとカシャっというシャッター音。


『…揃いの羽織?』

「何これ!? 恥ずかしいーーーーー!!」

『えっ、私カッコイイと思ったのに…
恥ずかしいのか……』

「えぇ!? いやっ…だってさ、そのっ」


ショックを受けた顔をすれば、慌てふためるリクオ。フォローしようと慌てているが…うん、もう遅いぜ!! オレのハートは微塵切りの如くバラバラだ!!


『にしてもこれ良く出来てるね…カラス天狗のところで花嫁修行でもしようかな、私。』

「駄目だ鯉菜。お前は10年…いや、20、30年はまだ花嫁修行なんかしなくていい!
むしろ一生するな!!」

『ちょっ……と、ゆ、れ、る、う、ぅ』

「父さん! 姉ちゃん死にかけてるから! 止めてあげて!!」


ガクガクと私の肩を掴んで揺らすお父さんに、リクオは落ち着けと宥める。冗談でこんなに死にそうになったの初めてだよ。
そして、たわいもない話をしていれば、鴉天狗が「ゲフンゲフン」とわざとらしい咳をする。どーやら真面目スイッチが入ったようです。演説が始まるぜ!?


「リクオ様…
妖怪で大事なのは〈畏〉を集めること。」


長いから親切な私がまとめてあげよう!!
鴉天狗曰く…現在の奴良組は昔の奴良組に全く及ばないようだ。しかも、浮世絵町内でさえ威光が届いておらず常時欠席者も多いとのこと。


「リクオ様…何とか奴良組を再興しましょう。もし関西が攻めてくれば我々はおそらくひとたまりも…」

「分かってるよ鴉天狗。ボクは必ず奴良組の百鬼夜行を再興する。でもこれから入る奴はボクがふさわしいか見極めるから!」


畏の紋章が入ったハッピを羽織り、そう決意するリクオ。


『…よっ! 流石私の弟だ!!
かっくいーこと言うねぇ!?』

「わっ、ちょ、姉ちゃん!?」


リクオの肩に腕を回し、頭をワシャワシャ撫でてやる。


「よっ! 流石オレの息子だ!!
かっくいーこと言うねぇ!? 俺にそっくりだ!!」


反対側からリクオの肩に回し、同じようにリクオの頭をワシャワシャするお父さん。2人でリクオの頭をワシャワシャしていれば、カシャっというシャッター音。


『あら、後で焼き増しして頂戴ね。』

「オレにも一枚くれ。」

「な、何撮ってんの!? 恥ずかしいから消してよ!!」


……平和だなぁ。あ、そうだ。


『そのカメラちょっと貸して〜』


鴉天狗にカメラを借りて、とある人物を探す。
おっ、いたいた。
羽織りを受け取り、それを広げようとしている人物の背後へコッソリと近づく。


「ブフォォォォオオオ」

『ナイスショット!!』


イエーイ。鴆が嬉し吐血している姿を写真におさめました。いやぁ…大変綺麗に面白おかしく撮れてますなぁ! ちなみに本人は撮られたことにまだ気付いていない。


『鴆の誕生日プレゼントはこの写真にしよう』

「…綺麗に撮れてんなぁ。」

「プレゼントがそれって…鴆君また吐血することになりそうだから止めときなよ。」


ちなみに後後これは誕プレとして鴆の手に渡ることとなるのだが…それはまた別の話で。




(「ん?」)
(『どした?』)
(「・・・清継くんから連絡が。」)
(『あぁ、呪いのトランシーバー人形か。』)
(【もしもし、奴良君かい?明日は皆で手分けして陰陽師のゆらくんを探すぞ!!いいね!?それと、お姉さんもこれは強制参加だからって伝えておいてくれ!じゃっ!】)
(「・・・だって。姉ちゃん。」)
(『うん・・・何かもう、いいや。了解。』)




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