静かな部屋の中、セットしてあった携帯電話のアラームが鳴り響く。 あぁ…もう起きなくちゃ……。
枕元に置いたであろう携帯電話を目を閉じたまま手探りで探せば、機械とは違った感触が指先をかすり思わず目を開いた。
恐る恐る顔を向ければ、そこにはスヤスヤと眠る小さな佐々木さん。
……あれ?何で床で寝てないの? いつの間にベッドに来ちゃったの? …あ、朝になると服は元の隊服に戻るんだ…
聞きたいことは沢山あるけれど、とりあえずこの喧しい音を止めなければ。 改めて携帯電話を探し見付けると、早々にアラームを止めた。
(さてと………)
彼はどうしようか。 見たところ、とても気持ち良さそうに眠っている。
……や、そんなことよりも……
(何この生き物…可愛すぎる……っ!!)
俯せの状態で四肢を投げ出して眠る佐々木さん。 その小さな体をぐりぐりと指先で撫でくりまわしたい衝動をどうにか抑え、傍にあったハンドタオルを彼に掛ける。
今日は買い物をするんだから…! …と、何度も自分に言い聞かせ、準備をする為重い体を起こした。
―――――――
「………佐々木さーん…そろそろ起きませんかー…?」
……私って、今日何時に起きたっけ……8時くらいには起きてたよね………。
チラリと時計を見れば、時刻はもうお昼を指していた。 このままでは買い物の最中に大きな彼になってしまう…!
…それは何としてでも避けたいと 未だ安らかな寝息を立てている小さな彼にそっと近付き、頭を優しくつついてみる。
「ん………?」
「佐々木さん、おはようございます。もうお昼です」
「!!……すみません、随分と寝てしまったようで…」
慌てて起き上がる佐々木さんが何だか可愛くて、思わず笑ってしまった。
不思議そうにこちらを見上げる彼を掌に乗せると、ストールを巻いている首元付近へそのまま降ろす。
「佐々木さんも疲れてたんですよ。気にしないで下さい」
「ありがとうございます……所で、これは一体どういう状況ですか?」
鏡を見れば、ストールを巻き付けている部分に上手く紛れている小さな彼と目が合う。
うん、可愛い。
「鞄だと佐々木さんも窮屈だろうし……何よりお喋りが出来ませんからね!」
「…………」
「そこなら佐々木さんも自分好みの服を選べるでしょ……って、くすぐった!え?何!?」
首筋に何かが当たり、そのくすぐったさに肩を竦めながら再び鏡を見ると……
私の首筋に頭を押し付け、まるで縋り付くようにして抱き着いている佐々木さんがいた。
「……っ……可愛すぎるよ…!!」
「煩い。大きな声を出さないで下さい」
「………ごめんなさい」
「さぁ、早く行きましょう。このままでは、隊服姿の私と並んで買い物することになりますよ」
「は、はい…すみません。すぐに出発します……」
……って、あれ? その台詞、佐々木さんが言っちゃう?
腑に落ちない点はいくつかあるけれど……鏡でこっそり盗み見た彼の顔が、ほんのり赤くなっていたのを私は見逃さなかった。
「さぁ、出発でーす!!」
「……だから煩いと言っているでしょう」
「すみませんでした」
それだけで、 私の心は十分過ぎる程浮上した。
|