時刻は午後5時53分。
自身を“いわくつき”だと言った…この小さな彼は、今私の部屋の中を探索している。
「佐々木さーん…ベッドから落ちないように気をつけて下さいねー…?」
「落ちません。エリートですから」
(……さっき落ちかけて、必死でシーツにしがみついてたのに…)
つい先程の出来事を思い出して笑いそうになるが、佐々木さんの視線に気付き目を逸らす。
そんな私を気にも留めず探索を再開させる彼に、ふと素朴な疑問が生まれる。
「あのー……佐々木さんって、ご飯とか食べるんですか?」
「人形の時は食べませんのでご心配なく」
「そうなんですかー…………ん?」
―――――――人形の時、は……?
時計の針がカチリと6時を指した、その時、 ポンッと何かが破裂したような音と同時に立ち込める白い煙。
「…えぇ!?何!?爆発!?ど、どうしよう…!!」
突然のことに狼狽えるが、腰を抜かしてしまってうまく動けない。
火は出ているのか…逃げるなら荷物を… …そうだ、小さな彼は無事なのか。
「さ、佐々木さーん!!何処ですかー!?佐々木さっ……!?」
震える足を引きずって佐々木さんを探していると、ぽすんと頭に何か温かいものが乗る。 一体何が……と、見えない恐怖に怯えていると、前方から探していた彼の声。
「なまえさん、大丈夫ですか?驚かせてしまってどうもすみません。 私は此処にいますよ、安心してください」
「佐々木さん!良かっ……えぇぇ!?」
煙が徐々に晴れていく。
そこへ姿を現したのは 小さな彼ではなく ……等身大の佐々木異三郎であった。
「私、午後6時以降から翌日の日の出まで、貴女と変わらぬ人の形になってしまうのです。 なので、晩御飯は用意していただけると非常に助かります」
「…え?……え?………嘘ぉ!?」
ぽんぽん頭を撫でてくる等身大の彼に、 私は再び腰を抜かした。
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