「わ、これ……佐々木さんに似合いそう」

「……本気で言ってますか?」

「すみません。冗談です」



可愛いうさぎが大きくプリントされた服を広げながら、声を潜めて小さな彼と話す。




此処は都内のショッピングモール。


沢山のお店が集まるこの場所なら買い物も一度で済むし、彼の好みの服も見付かるだろうと踏んだのだ。




「佐々木さんはどういう服が好きなんですか?」

「そうですねぇ、あまり派手やかではない物が好きですね……せっかくなのでなまえさん、貴女が選んで下さい」

「え?じゃあ、さっきのうさぎ……「私が今小さいからといって、あまり調子に乗らない方が身の為ですよ」……はい」



うーん……、
佐々木さんってスタイル良いから、何でも似合いそうなんだよねぇ……。



英国紳士なブリティッシュスタイル……

シンプルな服装も捨て難いし……

思い切って着物とかもありじゃない!?


うー!想像するだけで顔がにやけちゃ……



「………なまえさん、顔が物凄くだらしなく崩れていますよ。思わず肩から飛び降りて逃げ出したくなりました」

「……失礼しました」



もう良い、この際シンプルな物もスーツっぽいフォーマルな物も全部買ってやる!!

し、支払いはカードだから良いもん!

分割払い最高!

だって素敵な佐々木さんが見たいんだもん!



「よし!買う服は妄想バッチリなので、さっそく探しに行きましょう」

「……どんな妄想かは知りませんが、よろしくお願いします」







―――
――







「……なまえさん」

「何ですか?…あ、靴のサイズこれでしたよね?もう一足ぐらいあった方が良いだろうし……「なまえさん!!」ぅあ!?はい!!」

「時間が……」

「え!?嘘、もうそんな時間?!」



時計を見ればあと五分程で午後六時を回る所だった。
マズイ…夢中になり過ぎた……!

慌てて見ていた靴を戻すと、走って辺りを見回す。
……彼が変身してしまう前に、何処か人目に触れない場所を探さなくてはいけない。



………そうだ。障害者の方が使うトイレなら、彼が大きくなる所を誰にも見られない。
そこでとりあえず今日買った服に着替えてもらって……!



ちらりと見た時計はあと一分で午後六時。

迷惑極まり無いが、走ったお陰で探し求めていた場所はもう目の前。



「佐々木さん……ごめんなさい!」

「は?」



私は彼を鷲掴むと、持っていた洋服や靴の入った袋共々トイレへ投げ込んで扉を思い切り閉めた。

……その直後。ドア越しからポンッと破裂音が小さく響く。



……ま、間に合った………。



投げたことはしっかり謝ろう……じゃなきゃ今後が恐過ぎる。
……というか、思わず投げちゃったけど怪我とかしてないかな……大丈夫かな……。



悶々と考え込んでいるとスライド式の扉がからりと開き、長身の男性が姿を現す。


黒色ボートネックのシンプルな七分袖のトップス、黒色のジーンズに黒色のショートレザーブーツを見事なまでに着こなした佐々木さんだ。


ボートネックから見えてる鎖骨が…っ!!
鎖骨が色っぽいよ佐々木さん…!!

え?黒色ばっかりなのは何でかって?
そんなの…真選組カラーを佐々木さんに着てもらいたいっていう、ただの私の趣味です。



「なまえさん…貴女、結構無茶苦茶する方なんですね……。まさか投げ込まれるとは思いませんでした」

「や……あの……すみませんでした」

「まぁ、状況が状況でしたので仕方ないですね……それで?次は何を買われるんです?」

「……え?」

「ほら、行きますよ。……買い物、まだ終わっていないんでしょう?」





差し出された手を思わず凝視してしまう。
こ、これって……手を繋げってこと!?



そのまま動くことが出来ずにいた私に痺れを切らしたのか、佐々木さんは私の右手を取ると悠々と歩きはじめる。






「あ………あ………!」

「…?顔が真っ赤ですよ、大丈夫ですか?」







……大丈夫な訳ありません。

もう心臓飛び出て、爆発しそう………。












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