【佐々木 side】
バックミラー越しになまえをチラリと見て、佐々木は車を発進させた。
(みょうじなまえ……将来、真選組の弱みとなる可能性が高い……)
「……もう遅いかもしれませんがね」
ぽつりと呟き、先程までなまえが座っていた助手席をちらりと見る。
隣で楽しそうに真選組の話をしていた彼女を思い出すと、自然と頬が緩んだ。
質問すれば何でも答えるなまえ。
どうやら彼女は真選組の箱入り娘らしい。
「……従順な子犬は嫌いじゃないですよ」
――――
――
「異三郎……遅い。ドーナツ待ちくたびれた」
「すみません、信女さん。ちょっと真選組まで子犬を送り届けていました」
「子犬……?」
「ええ、子犬です。さしずめ、従順で可愛らしいポメラニアンといったところですかね。真選組の方々も夢中なようで」
「…………私も会ってみたい」
「おや、貴女が他人に興味を持つなんて珍しいですね」
「……そんなに楽しそうに話してる異三郎のほうが珍しい」
「それは、それは……」
(……では早速、明日にでも伺いましょうか)
獰猛な番犬に囲われた 哀れな子犬に会いに。
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