「今日は送っていただき、本当にありがとうございました」
「いえ、当然の事をしたまでです。それに……あんな重たそうな荷物を抱えた貴女をあの場に放置するなど、エリートの名が廃ります」
正直な話、送ってもらえたことは非常にありがたかった。あの調子で歩いて帰れば、きっと屯所に着く頃には夕方になっていただろうから。 帰りが遅くなれば、過保護な隊士達が黙っていない。 万が一夕方を過ぎてしまうなんてことになってしまえば……
(……パトカーが出動するなんて、誰も想像がつかないですよね……)
そう、一度だけ道に迷ってしまい、夕方を過ぎても帰れなかったことがあった。 あの時のことは忘れもしない。 サイレンをけたたましく鳴らしたパトカーが何台も自分を取り囲み、思わず腰を抜かしたほどだ。
「……本当に助かりました」
「お役に立てたならよかったです。では、私はこれで……ああ、そうです、土方さんにもよろしくお伝えください。近々また会うことになるでしょうと」
「は、はい!お伝えしておきます!……今日は本当にありがとうございました。お気を付けてお帰りください」
深々とお辞儀をしてから、車が見えなくなるまで見送る。
(……佐々木さん。何だか真選組にはいないタイプの方でした……)
しばらく門前で物思いに耽っていると、後ろからポスッと頭を撫でられた。 振り向けば、先程話題に上がった人物がこちらを見下ろしていた。
「!……土方さん!戻られていたんですね」
「おう。今日は悪かったな………随分と買ってきてくれたみてぇだが……重かったんじゃねぇか?」
なまえの手から袋を取り驚いた表情でこちらと袋を交互にを見る土方に、なまえは慌てて佐々木とのことを伝えた。
「…………で?佐々木の野郎に呑気に送ってもらったってわけだ」
話を進めるにつれ、みるみるうちに鬼の形相へと変わっていく土方に気付き、血の気が一気に引く。
「俺はお前に何て言った……?知らない奴に声をかけられても着いていくなって言ったはずだが……俺の勘違いだったか?」
「っ……す、す、すみませんでした!!土方さんのお知り合いのようでしたので、あの……「言い訳は聞かねぇ!罰として今日から一週間外出禁止だ!!」
「いっ……一週間!?」
「何だ……?文句あんのか……?」
「ひっ……ないです!!ないです!!」
「……よし。………いいか、今後も佐々木とは関わりを持つな。あいつはお前が想像してるような男じゃねぇ」
「…………」
「どんな扱いを受けたか知らねぇが、あいつは任務遂行の為なら何だってする男だ。お前をいつ利用するかわからねぇ」
「土方さん……」
真剣な面持ちでなまえを見る土方。 その表情だけでも自分がどれだけ大事にされているかがわかり、思わず涙ぐむ。
「……わかりました。土方さんの言うとおりにします。心配してくださって本当にありがとうございます」
涙を拭って微笑みかければ、恥ずかしそうにそっぽを向かれてしまった。 顔にそぐわない子供のようなその仕草に、なまえは耐え切れずプッと吹き出した。
「っ……笑ってんじゃねーよ!……ったく……中入るぞ……」
「ふふ……はい!」
ほっこりと暖かくなった心は夜になっても変わらず、なまえは今日の土方とのやり取りを思い返しては笑顔を浮かべるのであった。
((はっ!そういえば……佐々木さん、近々土方さんにお会いするっておっしゃってましたが……土方さんにご報告するの忘れてました!))
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