真選組で働かせてもらうようになり、一ヶ月が経ちました。





「おい、なまえ。暇だから踊れィ」

「うぇっ…!?踊りはちょっと……」

「なんでィ、踊れねぇのかよ。ま、なまえの下手な踊り見るくれぇなら、土方暗殺計画進めた方が暇潰しになるか」

「そ〜〜お〜〜ごぉ〜〜……っ!!」

「あれ、土方さんいたんですかィ」

「いい加減にしやがれっ!いつかまじで斬るからなっ!……ったく、さっさと巡回行くぞ」

「へ〜い」

「お二人共今日は巡回でしたか……気をつけて行ってきてくださいね」

「「おう」」





別れ際に頭を撫でられるのも、





「……と、買い出し行くならいつもの頼むな」

「はい!マヨネーズですね」

「ああ、いつも悪ぃな」

「いえいえ。お任せください!」





大量のマヨネーズを買うのも、





「それと、知らない奴に声掛けられても着いてくんじゃねぇぞ」

「……はい」





驚くくらい過保護に扱われるのも、

ようやく慣れてきました。





「いってらっしゃいませ!」

















「……土方さんはなまえにほんっと甘ぇや」

「……お前もだろうが」











――――――――――――







「ふ〜……少し買い過ぎましたね……」



両手を塞いでいるマヨネーズが何本も入った袋を見て、少し後悔。やっぱり最後の1本は止めておけばよかった。重た過ぎて手がプルプルする。



(後悔しててもしょうがない……休憩しながらゆっくり帰りましょう)



マヨネーズが飛び出してしまわないよう、袋を気にしながら歩き出すと同時に、何かにぶつかってしまった。



「いたっ……あ……す、すみません!!」

「おや、こちらこそすみませんでした。私としたことが、よそ見をしていたせいで気が付きませんでした。お怪我はありませんか」



ぶつかってしまったのは、なんだか紳士な雰囲気の背の高い男性。



「いえ、怪我はないです…」

「そうですか。それはよかった」



気を遣わせないよう男性に笑顔を向け、ふと気が付いた。



(あれ?この服、色は違うけど真選組の制服と同じじ……はっ!もしかしてまだお会いしていない隊の方……!)



「あ、ぁ、ぁ…あの!」

「はい?」

「私、一ヶ月程前から真選組で働かせていただいておりますみょうじなまえと申します!この度はご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません……今後ともご迷惑をおかけしてしまうかもしれませんが、どうぞよろしくお願い致します!」


「…………」














(……あれ?無反応……?)



チラリと男性を見ると、何やらポカンとした顔で固まっていた。



「……あの……大丈夫ですか………?」

「!……ああ、大丈夫ですよ。問題ありません。ただ少し驚いてしまっただけで……」

「驚く……?」

「ええ、貴女のような方が真選組で働いてると聞いて……少し、ね……」



怪訝そうな表情を浮かべた彼を見てピンときた。
ああ、まただ。
このパターン14、5歳に思われてる。
坂田さんの時のように、家出だと思われるのは避けたい。



「あの、私……これでも23歳なんです。なので、家出とかでは無いので大丈夫です……」

「(家出?)…………そうでしたか」






(ん?でも今の会話の流れだと、この方は真選組の人ではない……?)



「あの、失礼ですが……お名前をお伺いしてもよろしいですか……?」

「ああ、申し遅れました。私、見廻組局長、佐々木異三郎と申します。真選組の方々にはいつもお世話になっています」

「……そうなんですか?」

「ええ。それはそれは、大変お世話になっていますよ。特に土方さんには。………そうです、よろしければ真選組の屯所までお送りしますよ」

「え!?そんな……悪いです!」

「ぶつかってしまったお詫びには到底及びませんが……どうか送らせてはいただけませんか?」

「えと……(土方さんから知らない人に着いて行ってはダメと言われましたが、土方さんのお知り合いならいいですよ…ね……?)……では、お願いしてもいいですか?」

「ええ、是非そうさせてください」



自然な動作で重たい袋を私の手から外すと、近くに停まっていた車までエスコートされる。



「さあ、どうぞ」












何故だか胸がカッと熱くなった。
マヨネーズが重た過ぎて、体がのぼせていたのでしょうか。








(ところでみょうじさん、携帯電話はお持ちですか?)
(えと……お恥ずかしい話、今まで一度も持ったことがないんです)
(……そうですか。それは残念です……)
(……?)








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