「はぁ〜ん……なるほどねぇ。出稼ぎに来ていきなり住む場所が無くなっちまったわけか」
「……はい」
「……へぇ〜……23歳ねぇ……」
「坂田さん…っ!」
「わりーわりー」
おどけたように謝る坂田さんを涙目になりながらも睨むと、頬をポリポリかきながら視線を泳がせた。
「あ〜……なんだ、その、」
「?」
「いんじゃねーの……小さい背だって、童顔だって、美少女に必須の設定だろーが」
「……もういいです。そんな微妙なフォローしなくても。いつものことですか…らっ…!?」
俯いた私の頭をわしゃわしゃと撫でているのは、紛れも無く私の前に座っている坂田さんで。 あまりにも唐突な出来事に、頬がカッと熱くなる。
「あっ、あの……坂田さ……」
「ま、ここは銀さんに任せときな」
「え?」
「なまえちゃんが住み込みで安心して働ける、とっておきの場所を教えてやるよ」
「で…………、
何でテメェがここにいんだ万事屋ぁっ…!!」
「ひっ……!」
「大きい声出さないでくれる多串くん。なまえちゃんが怯えてんだろーが」
「あぁ?……何だこのガキ、迷子か?」
「…!?ガキじゃな「あ?」っ……えと……私……っ」
とっておきの場所と言って坂田さんに連れて来られたのは、なんと真選組屯所。 坂田さんが言うには、ここなら上京したての私でも安全に暮らせて、働き口もあるだろうとのことだったのだけれど……
(この人、恐過ぎです…っ!!)
助け舟が欲しくて怯えたまま坂田さんを見ると、ニッと笑われた。……うん、言うしかない。
「っ……あの、私、みょうじなまえと申します!どうか……ここで働かせてください!」
「なっ…!」
言い終える前に勢いよく頭を下げる。
「……お願いします。雑用でも何でもします。どうか、お願いします……ここで働かせてください………」
「…………」
相手の表情が見えない分、沈黙が痛い。 不安は増すばかりだが、ひたすらに相手の返答を待った。
「はぁ……」
降ってきた溜息に思わず肩を揺らす。
(こんな急なお願い、やっぱりダメ……ですよね……)
「…………頭上げろよ」
「……はい………」
言われるまま怖ず怖ずと頭を上げれば、そこには坂田さんを怒鳴り付けていた恐ろしい形相はなく、呆れたような何とも言い難い表情が浮かんでいた。
「その必死さは何か理由があるんだろ。事情は中で聞く……………言っとくが、真選組の雑用はただの雑用じゃねぇ。体力的にも精神的にもガキには苦しいだろうが……弱音吐くようならすぐに追い出すからな」
「!……っはい!!よろしくお願いします!」
お父さん、お母さん、 江戸での働き口が無事見付かりました。 今日から江戸で、頑張ります!
(坂田さん、本当にありがとうございました) (おー、これから頑張れよー) (お給料が出たら何かご馳走しますね) (やったー!俺チョコレートパフェー!) (ふふ…承知しました) (14、5の小娘にたかってんじゃねーぞコラ) (あの……私23歳です…)
(………………………まじでか)
|