私の名前はみょうじなまえ。 酷く貧乏な農家で育った私は、働いて働いて……両親と共に家計を支えてきました。
けれど……最近では不作が続き、村での畑仕事だけでは暮らしていくことが出来なくなってしまったのです。
「その為に出稼ぎに来たのに……住むはずだった借り家が火事で全焼だなんて……」
少ない荷物を持つ手が震える。 ここは自分が暮らしていた村ではなく、華やかな江戸。右も左もわからない状況で、拠点を失ってしまったのは痛手だ。
「帰るお金もないし……暫くは野宿しながら仕事探しかぁ……」
「……嬢ちゃん大丈夫か?酷ぇ顔してどうしたんだよ」
「えっ!」
突然かけられた声に驚いて振り向けば、眩いほどの銀髪が目に留まる。 そこにはなまえよりもずっと背の高い男の人が、死んだ魚のような目をして立っていた。
「あの、私……嬢ちゃんだなんて呼ばれる歳では……「見たところ14、5だろ?家出か?こんな所ウロウロしてっと、悪い輩に何されるかわかんねぇぞ」……あの……「まぁとりあえずこっち来い。話ぐらいは聞いてやるよ」
「………はい」
(うぅ、全然話を聞いてもらえないです……江戸って恐い!)
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人込みに流されないよう注意しながら銀髪のお兄さんに着いて行けば、万事屋の文字。
「うっし、到着。俺ぁここで万事屋やってる坂田銀時っつーんだ。まぁ入れよ」
「えと……お邪魔します……」
勧められるまま恐る恐る中に入れば、甘い匂いが鼻をくすぐる。 お菓子のような美味しそうな匂いに、ドキドキと早鐘のように脈を打っていた心臓も次第に落ち着いていった。
「そこ座れよ。まぁ緊張すんなって………で?嬢ちゃんは何で家出なんかしたんだよ」
家出の一言にまた心拍数があがる。 確かに私は身長も低く顔も幼い。しかし、そのせいで家出と間違われてしまうのは大問題だ。
「あ、あのっ………私、家出じゃなくて出稼ぎでっ……それに嬢ちゃんじゃないですっ……23歳のれっきとした大人です……!」
「………は?」
「まじでか」
お父さん、お母さん、 江戸の人は皆大人っぽくて困ります。
(……え、ホントに23歳……?) (………っ!そうですっ!!)
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