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▼ 蔵馬と座敷わらし(幽白)




座敷わらしと別の妖怪のハーフ。妖狐蔵馬がアジトとした建物にたまたま住み着いていた。それから行動を共にするようになり、人間界に逃げていった蔵馬を追って人間界へ。蔵馬の力が弱まっているのもあり、気配が中々追えずに困っていたところで桑原家に住み着き、桑原家を拠点に蔵馬探しを続けている。
座敷わらしなので五歳の女の子の姿をとっているが、半分他の妖怪の血が入っているので本当の姿は年相応。
見た目だけの幼女と手を繋いで歩く桑原くんと蔵馬が見たいというだけの願望です。
蔵馬は最後人間界に残るわけですがそのあとどうするんですかね?魔界に戻るならやっぱり妖怪が相手じゃないとどうにもならんな、と思って座敷わらしなんですけど妖狐蔵馬の肩に乗ってる幼女とかかわいくないですか?
たぶん黄泉とはめちゃめちゃ仲悪い。





▼さわりだけの1話



あの人を追いかけなきゃ。助けなきゃ。その一心で魔界からひとりで人間界へとやってきて、もう10年以上が経過している。あの人の気配は微かに感じるのに、近くにいることはわかるのに、まだ見つけられていない。座敷わらしというわたしの性質から、人間界に来てすぐ、家族全員霊力が高いとあるお宅に置いてもらってこれまであの人を探したり、一家の幸せを守ったりしていたのだが、最近一家の末の弟の様子がおかしい。いつも懲りずにライバルという同い年の男の子に挑んでは返り討ちにされていたというのに、最近はしらない妖気や霊気を纏って帰って来ることがある。うーん。長年お世話になっているこの家に大して並々ならぬ恩義があるし、なんだかんだ彼は真面目で優しい男の子なので、ちょっとやんちゃするくらいなら微笑ましく見守ろうと思っていたのだが、人間ではないものと関わって危険な目に遭っているというのであればさすがのわたしも黙ってはいられない。それに、今日はなんだか、嫌な気配が町のあちこちからするのだ。

「どこ行くの、和真」

「げ、なまえ……ガッコだよ、ガッコ」

「わたしも行く」

「いやおまえみたいなガキ連れていけねえよ」

「ガキじゃない!和真のおしめだって変えたことあるんだから!」

座敷わらしのわたしは、童という名の通り、人間で言う5歳程度の見た目をしている。妖怪なので当然実年齢は桑原家のパパよりもはるかに上であるのだが、この見た目から末の弟の和真は何かとわたしを子供扱いしていた。わたしからしたら和真の方がよっぽどクソガキなのだけど。嫌なこと言うなよ、と引き攣った顔をする和真の手をむんず、と掴んでいくよ、と引っ張る。座敷わらしであるわたしを乱雑に扱ってはいけないと昔から静流ちゃんにきつく言われているからだろう。諦めたように仕方ねえなあ、と言った和真がそのまま歩き出す。手を繋いで商店街を歩いていると、和真がライバル視している男の子。浦飯幽助に遭遇した。先日和真が腕を折って帰って来た件で、幻海師範の後継者になって厳しい修行を終えてきたらしい。

「どこでそのガキ拾ってきたんだよ」

「うるせーな!コイツはオレん家に居ついてる面倒なガキなんだよ!」

「あー!またガキって言った!」

にやにやと笑う浦飯くんに見られて恥ずかしくなってしまったのか、和真がわたしの手を乱暴に振り払う。わたしを乱暴に扱うと罰が当たるんだからね。和真の腕があんなに早く治ったのもわたしのおかげっていうのも含まれてるのに。

「はじめまして、わたしは桑原家の座敷わらしのなまえ。こう見えて君たちよりもうんとお姉さんなんだから!」

「座敷わらしィ…?」

「コイツにひでえことするとマジで悪いことが起きるから気ィつけろよ」

疑わしそうな浦飯くんに和真が釘を差す。いくらかわいい幼女に見えても、妖怪だからね!それに魔界にいた時のわたしのご主人さまは、とっても残酷で強い人だったから。一緒にいるためにわたしも頑張って強くなった。あの人は良い顔しなかったけど。浦飯くんの修行の話とかを聞きながら3人並んで歩いていると、後ろをつけてくる気配。町のあちこちからしている嫌な気配と同じようなそれに、警戒しながら振り向く。和真と浦飯くんは日ごろからこうして絡まれることが多いのだろう。嫌な気配には気付いた様子もなく、わたしに下がってろ、と声をかけてきた。嫌な気配はするものの、和真たちがどうこうされるようなレベルでもないか。きっと、操られているだけの雑魚だ。ふたりの言うことを聞いて大人しく一歩下がる。刃物を取り出してきた上に明らかに様子のおかしい相手に、ようやくふたりも何かがおかしいと気付き始めたようだ。彼らを軽くのして、浦飯くんの知り合いのぼたんちゃんという女の子と合流し、話を聞く。彼女は霊界の人間らしく、今、四聖獣というはた迷惑なやつらが人間界に魔回虫という迷惑極まりない気持ち悪いものを放っていると浦飯くんに説明する。ちょっと。霊界が解決しなきゃいけない事件なのはわかるけどわざわざ和真の前でそういう話をするのはやめてよ。和真はそんな話を聞いて黙っていられる性分じゃない。そしてその予想通り、二時間後には浦飯くんと和真とわたしは、敵の本拠地の目の前にいた。

「おい桑原、本当にそのガキ連れてきてよかったのかよ」

「着いてくるって言って聞かねーんだよ…」

「あのねえ!言っとくけどわたしはふたりよりも強いんだからね!!」

ハイハイ、と適当に流されて、浦飯くんは和真に目ぇ離すなよ、と忠告している。この野郎。和真がわたしをおんぶして、しっかり捕まってろよ、と言うから、溜め息を吐いて了承した。きっとこれ何言っても信じてもらえないやつだから、ふたりが危なくなったら手を貸してあっと驚かせてやろう。さっそく次から次へと湧いてくる大量の敵に苦戦するふたりに、もうわたしの出番か、とノリノリで和真の首にしがみついている手を離そうとすると、マントを被った大量の敵の中から、ふたりのマントが次々に他のマントたちを倒していく。

「ふたりじゃ大変だろう?」

バサリ、とマントを脱ぐと、中から黒くて小さい男の子と、赤毛に和真よりも品のいい制服を着こなした男の子が姿を現した。手伝おうか、と申し出た彼らは浦飯くんと知り合いらしく、浦飯くんが大げさなまでに驚いている。

「く、蔵馬と飛影じゃねーか!!なんでおめーら!?」

ぴくり。と聞き覚えのありすぎる名前に身体が反応した。

「蔵馬…?」

和真の背中から降りて、小走りで蔵馬と呼ばれた赤毛の男の子の前に躍り出る。

「……まさか、なまえか?」

見た目は全然違う。だけど、わかる。昔よりはるかに弱いけど、懐かしい妖気。わたしがずっと探していたあの人。魔界にいた頃のご主人さま。妖狐蔵馬が、目を見開いてそこにいた。






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