WT | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


▼ Wデートする

いつまでも進展しない私にみょうじが痺れを切らして来週の土曜日にとりまるとのデートに風間さんも誘え、と言ってきた。絶対に無理だと狼狽える私に、風間さんなら押せばなんとかなる、最悪頼み込めと、とにかく誘うまで隊室にも家にも入れない位の勢いで言われてしまえば誘うしかあるまい。私は覚悟を決めて本部内を探し始めた。

「風間さーん」

「ミョウジか」

思ったより風間さんは早く見つかって声をかける。

「来週の土曜日空いてますか?」

来週の土曜はりっちゃんがみかみかと遊びにいく!と言っていたので非番の筈だ。あとは予定がないことを祈る。

「特に予定はないな」

「みょうじととりまると水族館行きませんか?二人だと緊張しちゃうらしくて…」

みょうじがそんなキャラじゃないことも知っているだろうし、やっぱり厳しいだろうか。考え込む風間さんにお願いします!と頭を下げる。暫くしていいぞ、という返答にありがとうございます!と元気いっぱい返事をして、詳しくはまた連絡しますと伝えて隊室に戻った。よくやった!とみょうじに褒められたが、せっかくのデートに私たちがいたら邪魔ではないだろうか。そう思い聞いてみるが、そこはいいんだよ、とりまるもいいよって言ってくれたし。という返事が帰ってきて、後輩に気を遣わせる申し訳なさと嬉しさとで正直複雑な気持ちである。それから毎日がいつも通り過ぎ、いざ約束の日だ。数日前から二人で準備を始め、服装を決める時にスキニーにしようとすると、せっかくのデートなんだからもっとかわいい格好にしろという指摘を受けながら、散々悩んでなんとかいつもよりはかわいい系のマキシスカートに落ち着いた。 当日準備が終わっても、最後まで大丈夫?変じゃない?と心配する私をしっかりチェックして、大丈夫かわいい。と言ってくれたみょうじには頭が上がらない。


自分で誘ったものの一応ダブルデートということになっているので、めちゃくちゃ緊張する。私たちが待ち合わせ場所に着くと、二人はもう揃っていた。お待たせしました、と駆け寄るとごく自然にとりまるがみょうじの横に並び、今日の服かわいいです、と褒めていた。照れてツンツンしながらも、嬉しそうなみょうじを見てよかったなぁと思う。私の準備を優先していたけどみょうじだって今日の為に準備していたのを知っている。二人に行くよーと声をかけられて、私も風間さんの横に並んで歩き出した。

「今日は付き合わせちゃってすみません」

「いやいい。男同士ではこんなところ、なかなか来ないからな」

「確かにそうですね」

今日のデートは水族館だ。みょうじに行きたいところを聞かれて、思い付いたのが水族館だった。もはやこうして並んで歩いているだけで夢みたいなのだが。チケットは元々私たちで購入しておいたので、入り口で各自に配る。風間さんが財布を取り出して、いくらだと聞いて来るけど、今日は付き合ってもらってるんで大丈夫です!と丁重にお断りした。後ろではとりまるがみょうじに、自分の分は払います、と言っていたけど私たち二人で準備したことを伝えると仕方なさそうに財布を閉まった。とりまるはみょうじにお金出してもらうのとか嫌がりそうだなとは思っていたけど、本当にそうだったらしい。対等でいたいんだよねぇ、なんて思いながら受付のゲートをくぐる。休日ということもあって、中はそこそこ混み合っていたので、はぐれないように固まって前に進んでいく。少し歩くと大きな水槽のあるスペースに出た。

「おぉ、すごい!」

「水族館とか久しぶりに来たもんねぇ」

テンションの上がった私たちは水槽に近よって後ろの二人を呼ぶ。ふと視界に入ったとりまるが、驚く程優しい顔で歩いて来た。これはちょっと照れる。みょうじはいつものことだというように特に気に留める様子もないけれど、真面目に羨ましいと思う。

「ねぇアジフライ食べたい」

「おれもそう思います」

そんなことを考えていると、水槽で泳いでいるアジの大群を見たみょうじが呟いてそれに賛同するとりまる。ねぇ二人ともお腹空いてるの?

「おまえら情緒というものがないのか…」

「いやそれよりあっちの蟹の方が…」

「おまえもか」

私も突っ込もうと思ったけれど、隣の水槽に大きな蟹を見つけてしまい、私の脳内は全て蟹に支配されてしまった。今回はやらないようにと思っていたのだが。ごめんなさい風間さん、許してください。でもどうしても美味しそうに見えるのだ。頭が痛そうにため息をつく風間さんを横目に、今日の夜ごはんはお寿司だね、とみょうじととりまるは楽しそうである。とりあえず話題を変えようと、イルカショー見ません?結構時間ぴったりですよ、と風間さんを誘い、みんなでプールに移動する。思っていたよりも客席は混んでたけれど、後ろの方に四人並んで座れる席を見つけて確保する。水族館も久しぶりだけど、イルカショーなんてもっと久しぶりな気がする。少し待てばちょうど時間になって、ショーが始まった。昔から水族館もイルカショーもすごくすきだった。なんでこんなに引き込まれるんだろうか。気づけば夢中になっていて、技が成功したら歓声を上げて、拍手をして、完全に一人で楽しんでしまっていた。我に返ったのはショーが終わってからで、みんなで来たことをすっかり忘れていた私は、ものすごく恥ずかしい思いをした。とりあえず次に進もうと、歩き出した二人の後ろに私たちも続く。

「…なんか一人で騒いでてすみません…」

「気にするな、ミョウジの様子を見るのが、割りと楽しかった」

顔がカッとなってものすごく暑い。意外と意地悪ですね、とぼそりと言うと、そんなつもりはないと言われた。数分前の自分を呪いたいと思いながら一歩踏み出そうとすると、目の前に小さな女の子が立ちすくんでいることに気づく。危ないぶつかるところだった。しゃがんで目線を合わせてごめんね大丈夫?と一応声をかけると、上を向いた女の子は涙目でこちらを見上げている。

「あれ、ママとパパは?」

「いなくなっちゃったの…」

「よし、じゃあお姉ちゃんと一緒にママとパパ探してもらいにいこっか!」

「ほんと?」

今にも泣き出しそうなこの子を放っておけず、みんなに迷子センターまで連れて行ってくる、と断ると風間さんが俺も行こうと言ってくれた。確かにデート中の二人と一緒にいるのは気が引けるだろう。女の子を抱っこして迷子センターに向かった。話を聞くとみーちゃんというらしいその子はママとパパとお兄ちゃんと水族館にきて、しばらくあの水槽を見ていたらはぐれてしまったらしい。

「ミョウジは子どもの相手に慣れているな」

「年の離れた兄妹がいるので、子どもの相手は得意なんですよ」

まさか急に褒められるとは思っていなくて、驚いたけど、正直かなり嬉しい。明日は雨かな。

「ねぇ、そのお兄ちゃんはお姉ちゃんの彼氏?」

「!?」

緩んでいた頬がぴしりと固まってゆっくりとみーちゃんの顔を見る。今時の子どもってもう彼氏とかわかるの…狼狽えながらも違うよ〜と答えるが、一体なんの拷問なのだろうか。風間さんは相変わらず無表情で何考えてるのかわからない。

「じゃあお姉ちゃんのすきな人?」

子どもというのは残酷である。なおも質問されて私の答えをきらきらした目で待っている。どうせ本人も私の気持ちを知っているし、隠しても仕方ないかと思う。

「そうだね〜。このお兄ちゃんはね、お姉ちゃんのすきな人」

にへらっと笑ってみーちゃんに耳打ちすると、期待通りの答えが聞けて嬉しそうに笑っている。とにかく笑ってくれてよかった。そうこうしているうちに迷子センターに到着し、放送をかけてもらうと家族はすぐに迎えに来てくれた。沢山お礼を言われて、よかったねと言うと今度はみーちゃんに、頑張ってねお姉ちゃん!と耳打ちされた。がんばるよ、と笑ってみーちゃんたち家族と別れた。さて私たちもみょうじととりまると合流しようかと思うが、もう二人になってからしばらく時間も経っているし嘘をついて一緒にきてもらっているし、そろそろ邪魔者は帰ろうかと思う。

「風間さん、そろそろ私たちは帰りましょうか。二人っきりでももう大丈夫でしょうし。今日は付き合ってくれてありがとうございました」

「さっきの子どもの相手をしていて全然見て回っていないだろう。帰るなら見終わってからでもいい。別行動でもう一度回るぞ」

「え?」

「行かないのか?」

「い、行きます!」

まさかの申し出に舞い上がったのは言うまでもない。そんな私の様子を見て、風間さんがふっと笑う。風間さんの笑顔とかすごいレアである。顔に熱集まるのを感じて直視出来ずに下を向いていると、よし行くぞと言う声と頭をぽんぽんと撫でられた。びっくりして固まっている私に、どうした行かないのか?と聞いてくる辺り、こっちがどんだけときめいたかなんて全然気づいてないんだろうなぁと思う。今行きます!と返事して、風間さんの後を追った。その後も度々、夢中で水槽を見て風間さん、風間さん!と話す私のことを優しい目で見てくれている気がして、なんだか本当に夢のようだった。気のせいかもしれないけど、少しくらい夢を見たってばちは当たらないんじゃないだろうか。結局またみょうじととりまると合流した頃にはだいぶ時間も経っていて、二人も楽しめたようだ。そのままトイレ休憩を挟むとやっぱり先ほどまでの話題になる。

「で!結構な時間二人だったけどどうだったの!」

「どうって…なんかいつもより風間さんが優しい目でこっち見てる気がしたし、頭ぽんぽんってしてくれて…本当にデートしてるみたいだった…」

わぁっと言って顔を覆う私に、うんうん進歩したねぇとみょうじは笑ってくれた。みょうじととりまるも仲良く回れて、記念にお土産も買ったらしい。途中から二人のことはほとんど忘れていて、申し訳ないと思ったけれど、楽しめたなら本当によかった。そのまま水族館を出て夜ご飯はお寿司を食べた。さっきは情緒がなんとか言っていた風間さんだったけど、私たちよりも全然たくさんお寿司を食べていたのでなんとか今日のデートは成功したと思いたい。ちょっと進展できたと思ってもいいんじゃないかなぁと私的には大満足だった。


[ back to top ]